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スーパースポーツ好きがクルーザーに乗りたくなったときのモトグッツィV9ローマーという選択肢【試乗:MOTO GUZZI V9 ROAMER】


ハーレーダビッドソンに代表され、アメリカンとも呼ばれることの多い「クルーザー」というカテゴリー。屹立したハンドルと低いシート、そして足を前へ投げ出すようなライディングポジションが生み出すワイルドな佇まいには、バイク乗りなら誰もが憧れを抱いたことがあるに違いない。だが乗ってみると、いわゆるスポーツバイクとのあまりの違いに戸惑いを覚える人も多いわけで……。




REPORT&PHOTO●小泉建治(KOIZUMI Kenji)

ワイルドなのに繊細───絶妙なマカロニウエスタン

 一般的にはアメリカンとも呼ばれる、いわゆるクルーザー型のバイクには記者も憧れを持っている。とりわけハーレーダビッドソンの世界観には、子供の頃から憧憬の念を抱いていた。




 しかし実際に乗ってみると……バンク角が少なくてすぐにステップを擦ってしまうのはしかたないとしても、前方に投げ出した足、低いシート、高すぎるハンドルなど、あまりに一般的なスポーツバイクと異なり、心の底からライディングを楽しめない。




 ちなみに記者は普段は四輪を担当しているから、二輪ジャーナリストのように常日頃から様々なバイクに接しているわけではなく、自ずと試乗時のモノサシは自分が所有しているバイクになる。そういう意味では一般的な読者のみなさんに近い。で、私はどんな二輪を好んで乗っているかというと、スーパースポーツが中心だ。




 だったらおとなしくスポーツバイクに乗っていればいいのだが、だからといって興味の対象からクルーザーを切り捨てることができない。




「もう速くなくてもいい。ワイルドなクルーザーに乗り換えたい」




「スーパースポーツは所有しつつ、のんびり楽しめるクルーザーも欲しい」




 そう考えている人は実は少なくないはずだ。




 そんなみなさんにオススメしたいのがモトグッツィV9ローマーである。バンク角90度のVツインエンジンを縦に搭載するイタリア製アメリカン、いわゆるマカロニウエスタンだ。

エッジの効いたティアドロップ型タンクが美しい。小ぶりに見えるが15Lの容量を確保している。

メーターはごくシンプルなデザインで、タコメーターは備わらない。液晶にはシフトポジションやトリップメーター、燃費計などが表示される。

 マッチョなイメージの強いクルーザー型バイクだが、V9ローマーはイタリア車らしい繊細さも併せ持つ。とりわけ目を惹くのがエッジの効いたティアドロップ型タンクで、光の当たり方によっては陰影がくっきり浮かび上がる。とても小ぶりに見えるのに15Lとまずまずの容量が確保されているのはありがたい。




 シート高は785mmとクルーザー型にしては高めだが、前方が絞り込まれており、身長174cmの記者だと両足がべったりと地面について膝も曲がる。




 サイドスタンドを上げて車体を起こすと……軽い! V9ローマーの車重は199kgとクルーザー型にしては異例に軽く、前述の足つきもあって、小柄な女性でも取り回しに不安を覚えることはないだろう。

左右に張り出した縦置きのV型2気筒エンジンはモトグッツィのアイデンティティだ。

 スターターボタンを押すと、ドゥルルッという身震いとともに853ccのVツインは目覚めた。軽くアクセルグリップをひねると、縦型エンジンらしくクランクシャフトの反力で車体が右に傾く。記者は20世紀のモトグッツィに乗ったことがないが、諸先輩方によれば、一昔前と比べたらこの癖はだいぶ抑えられているらしい。




 いずれにせよ神経質になるほどではなく、ちょっとした「個性」としてむしろ楽しめる類のものだ。

V9ローマーの隠れた長所がこのシート。座り心地は抜群で、サポート性も高い。前方は絞り込まれ、足つきにも配慮されている。

 ステップは膝の真下にあるような感覚で、多くのクルーザー型モデルのように足を前に投げ出すタイプではない。好みや相性の問題だが、記者にはV9ローマーのポジションはしっくりきた。足を前方に投げ出すと、どうしても猫背気味になって腰に力が入らず、コーナリング時にしっかり荷重をかけられない。ステップワークにも難がある。「クルーザーはそうやって乗るバイクではない」と言われればそれまでだが、せっかくバイクに乗るのだからコーナリングもちゃんと楽しみたいと思うのはスーパーカブに乗っているときでさえ同じである。




 そしてステップに立って腰をシートから浮かせられるのもロングツーリング時にはありがたい。




 ちなみに2017年にV9ローマーが日本に導入された当初はステップの位置はもう少し前だったが、長身のライダーの膝がエンジンに当たる可能性があるとのことで年次改良の際に僅かに後ろに下げられている。




 そしてシートが秀逸だ。こちらも導入当初にはもっと細身の形状だったものが年次改良時に現行タイプに変更されているのだが、後方にいくに従ってワイドになり、その後端の辺りの収まりがとてもいい。コシがあって座り心地がいいうえにサポート性も高く、高速巡航でゆったり乗るときも、ワインディングで積極的に操りたいときも、いずれも後方に座ると具合がよかった。

カリカリのスポーツバイク派にこそ味わっていただきたい

 ともあれV9ローマーの白眉は、モトグッツィ伝統の縦置きVツインであることは間違いない。




 走り出しは腹に響くような鼓動を伴う。そして3速もしくは4速で40〜80km/hで流しているときのビート感が心地好く、それ以上飛ばそうという気にならない。一定の速度で走り続けてもまったく飽きない。




 だが、試しにそこからさらにアクセルを開けたり、ギヤを一段落としてみると、さらなる魅力に気づく。パンチの効いた鼓動が回転の上昇とともに見事に収束し、みずみずしく高回転まで吹け上がるのだ。

低回転域では鼓動感が強く、それでいて高回転域まで伸びやかに回るのは90度Vツインならでは。

エキゾーストは左右の各バンクから一本ずつ伸び、途中で集合されることなく左右2本出しとなる。ビートの効いたサウンドが楽しめる。

 たとえばV角45度のハーレーダビッドソンの場合、ダダッ、ダダッ、という鼓動感が強く、低い回転域を保って早めのシフトアップをしたくなるが、一次振動を抑えられるV角90度のモトグッツィはドコドコドコドコと鼓動のテンポが速く、上まで回してもストレスがない。そして排気量の近いハーレーダビッドソンのスポーツスター883系よりも中間加速が力強く感じられたのは意外だった。




 もちろん水冷DOHCの90度Vツインのように天井知らずに回るはずもない。なにしろモトグッツィは昔ながらの空冷OHVを守り続けているのだ。だからライダーを急き立てることもない。




 豊かな鼓動感が味わえるのに気持ちよく上まで回すことも許容し、かといって回せ回せと急かされるわけでもないモトグッツイ製Vツインに「ちょうど良さ」を感じる人は少なくないはずだ。

フロントブレーキにはブレンボ製キャリパーが奢られる。ディスク径はフロントが320mm、リヤが260mm。

 前述のライディングポジションも相まって、カリカリのスポーツモデルを所有するライダーでも違和感やストレスを覚えることなく存分にクルーザーらしさを味わうことができる。V9ローマーはそんなバイクだ。




 だからスーパースポーツやストリートファイターに乗り慣れたライダーがクルーザーの世界に飛び込むとき、このバイクは有力な選択肢になり得るだろう。




 ワイルドながら、どこか繊細さも持ち合わせている。そんなマカロニウエスタンの魅力を、スポーツ派のライダーにこそ味わっていただきたい。

モトグッツィV9ローマー


全長×全幅×全高:2240×865×1165mm


ホイールベース:1465mm


シート高:785mm


車両重量:199kg


エンジン形式:空冷4ストロークV型2気筒OHV 2バルブ


総排気量:853cc


内径×行程:84.0mm × 77.0mm


最高出力:55hp/6250rpm


最大トルク:62Nm/3000rpm


燃料タンク容量:15L


クラッチ形式:乾式単板


トランスミッション:常時噛合式6段リターン


フレーム形式:ダブルクレードル


タイヤサイズ:Ⓕ100/90R19Ⓡ150/80R16


車両価格:127万1111円
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