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なぜ我々はGクラスに心惹かれてしまうのか? 最新ディーゼル搭載モデルに試乗して、SUVにはない本物感を再認識する〈メルセデス・ベンツG350d〉


2018年に39年ぶりのフルモデルチェンジを受けたメルセデス・ベンツGクラスに、直列6気筒の新世代ディーゼルを搭載するエントリーモデルのG350dが追加された。Gクラスをはじめ、トヨタ・ランドクルーザー、ランドローバー・ディフェンダー、ジープ・ラングラー、スズキ・ジムニーといった筋金入りのクロカン四駆には、SUVでは得られない本物感が漂う。とりわけGクラスには、他を圧倒する存在感がある。より身近になったGクラスに乗り、なぜここまで人々の心を惹きつけるのかを再確認する。




REPORT●小泉建治(KOIZUMI Kenji)


PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)

率直に言って、パワーユニットとして上位グレードに劣る点はない

 39年ぶりの大幅刷新を受けて以来、初めてとなる新規グレードの追加である。これまで1623万円のG550、そして2114万円のG63というラインナップだったが、このほど導入されたG350dは1192万円と、大幅にお買い得感の価格に抑えられている。……まぁ、1000万円を越える高級車を「お買い得」と表現するのもどうかと思うが、Gクラスがターゲットとする富裕層の目には魅力的なエントリーモデルとして映るに違いない。




 エンジンはメルセデスの最新ディーゼルである直列6気筒3.0Lの「OM656」で、最高出力286psと最大トルク600Nmを発生する。公表されている主要スペックはまだ欧州参考値だが、WLTCモード燃費(コンバインド)は9.9km/Lとされている。G550は7.9km/L、G63は6.6km/Lだから、やはり大幅なアドバンテージを持っている。

 エクステリアは上位グレードとほぼ変わらない。角張ったシルエットはいかにもタフな道具といった風情で、Gクラス以外の何者でもない。




 試乗車はオプションのAMGラインを装着しており、ワイドなフェンダーによって全幅が1980mmとなっているが、標準ボディであれば1930mmとなる。同社のSUVと比べると、フルサイズのGLSは1980mm、ミドルクラスのGLEは2020mmもある。Gクラスも大柄であることに違いはないが、昨今のプレミアムSUVと比べたらほどほど“抑制的”なディメンションにとどまっていると言えるだろう。



 コクピットに乗り込む。見晴らしの良さは奥のSUV勢にも当てはまるだろうけれど、垂直に近いほど立っているAピラーのおかげでフロントウインドウ上端がドライバーの頭よりもかなり前方に位置するため、とても開放感がある。




 現行モデルにおいて、この圧迫感のなさはスズキ・ジムニーやジープ・ラングラーなど限られた車種───本物のクロカン四駆でしか体験できないものだ。

 走り出しは期待通りの力強さである。最大トルクはAMG G65の850Nm、G550の610Nmに対してG350dは600Nmと、G65はともかくG550とはほぼ同等で、その発生回転数はG65が2500-3500rpm、G550が2000-4750rpmなのに対してG350dは1200-3200rpmと群を抜いて低い。




 1200rpmといえば、アイドリングからタコメーターの針一本ぶんくらいでしかない。踏んだ瞬間に最大トルクを得られるという意味では、ほとんどEVである。




 記者を含め、多くのドライバーがGクラスに求めるエンジンパフォーマンスは、この「アクセルを踏んだ瞬間に湧き上がる強大なトルク」がすべてであろう。高回転域での咆哮や炸裂するパワーなど求めていない。




 となれば、パワートレインとしてはこの直列6気筒3.0Lディーゼルターボで十分であり、G500やG65のパフォーマンスは“超”高付加価値と捉えればいい。もちろんこのカテゴリーの顧客にとっては、その高付加価値にいかに“超”がつくかが大きな意味を持ってくるのだろうけれど。

車両感覚の掴みやすさは世界一! 安心して悪路走破性能を引き出せる

 もちろんその気になれば相当に速い。だが、飛ばしたいという気持ちにならないところもGクラスの美点だ。トヨタ・ランドクルーザーやジープ・ラングラー、そしてクラスは違うがスズキ・ジムニーおよびジムニーシエラといったラダーフレームを持つ本格クロカン四駆は、当然ながらモノコックボディのSUVと比べると重量がかさむ。そして繊細な操作が必要とされる極悪路でのコントロール性を重視しており、ちょっとステアリングを切っただけでスパッと向きを変えるような俊敏性は追い求めていない。




 よって自ずとハイエンドモデルにふさわしいジェントルな運転ができるのだ。

 とはいえ、もちろんGクラスが本領を発揮するのは極悪路である。今回のテストドライブはメルセデス・ベンツの2019年にリリースされたニューモデルのオールラインナップ試乗会にて行われたものであり、オフロードコースを走る機会はなかったが、いつものクセで(記者は当サイトの『酷道を奔り、険道を往く』を担当)、ついつい狭隘で劣悪な道を見つけて入り込んでしまった。




 そして思わず膝を打った。「これぞGクラスだ」




 とにかく車両感覚が掴みやすいのだ。抑制的とはいえ、けっしてコンパクトとは言えないボディサイズを持つGクラスだが、アップライトな運転姿勢、直線基調で絞り込みの少ないボディ、直立したウインドウなどがもたらす見切りの良さは、昨今の「流麗でエモーショナルなデザイン」をウリとする多くのセダンやハッチバックを凌駕する。




 どんなに高い悪路走破性を持っていても、乗り手が自信を持って引き出せなければ意味はない。だがタイヤの位置が把握しやすいGクラスなら安心して歩を進めることができる。

 これは、長年に渡って守り続けたGクラスならではのデザインに、しっかりとした「理由」があったとも言える。




 とはいえ時代が変われば求められる安全基準や環境性能も変わる。伝統のデザインを守り続けるのは、外野が想像するよりも難しい。




 開発陣のすべての苦労を記者が知っているわけもないし、ここで知っていることをすべて述べても冗長になるので、例をひとつ挙げよう。




 Gクラスが車両感覚を掴みやすい要因のひとつに、フロントフェンダーの上に置かれたウインカーがある。前輪がどこにあるのかを把握するための大きな助けになるものだ。




 ただ、これはこれは現代においては歩行者保護のレギュレーションに引っかかる。エンジニアたちは取っ払うしかないと考えた。




 これに反対したのがデザイナーだ。車両感覚を掴むためだけでなく、Gクラスの重要なアイコンにもなっているこのウインカーを移設するわけにはいかない。




 そこで、衝突時にウインカーを支える樹脂が外れ、ウインカーユニットが下に沈むシステムを考案したというのだ。

 Gクラスは一事が万事この調子である。




 すべての形や装備には理由があり、理想の実現のためなら多大な手間暇をかけることを厭わない。




 だからGクラスは本物感に満ちている。こればかりは市井のSUVには真似できない。対抗できるのは、トヨタ・ランドクルーザー、ランドローバー・ディフェンダー、ジープ・ラングラー、そしてスズキ・ジムニーだけだろう。




 そこへメルセデス・ベンツの強烈なブランド力が加わるのだから、1000万円を越える高額車ながら衰え知らずの人気を誇るのも当然だ。




 そしてドイツのプレミアムブランドという、ある種の権威主義的な価値を避ける人でさえ「Gクラスは別」と自らに言い聞かせ、稀代の本格オフローダーに畏敬の念を抱いてしまうのである。

メルセデス・ベンツG350d


全長×全幅×全高:4606×1930×1969mm


※試乗車はAMGライン装着車で、全幅が1985mmとなる。


ホイールベース:2890mm


車両重量:2500kg


エンジン形式:直列6気筒DOHCディーゼルターボ


排気量:2924cc


ボア×ストローク:82.0×92.3mm


圧縮比:15.5


最高出力:286kw〈210ps〉/3400-4600rpm


最大トルク:600Nm/1200-3200rpm


燃料タンク容量:75L


トランスミッション:9速AT


駆動方式:F・AWD


乗車定員:5名


タイヤサイズ:265/60R18


WLTCモード燃費:9.9km/L


市街地モード燃費:───


郊外モード燃費:───


高速道路モード燃費:───


車両価格:1192万円
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