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マツダCX-30とトヨタC-HR、三菱エクリプスクロス、レクサスUXを徹底比較!〈ライバル車比較インプレッション〉|SUVレビュー


活況を呈するSUV市場の中でもさらに多様な車種がしのぎを削るコンパクトSUV数多いライバルの中にあって、埋もれてしまわぬように己の個性を主張し合う各モデルたち。果たしてマツダのCX-30にはどれほどの実力が与えられたのか!?




REPOTRT●岡本幸一郎(OKAMOTO Koichiro)


PHOTO●小林克好(KOBAYASHI Katsuyosi)




※本稿は2019年11月発売の「マツダCX-30のすべて」に掲載されたものを転載したものです。

自身の特徴を主張する四車四様のスタイリング

 グローバルではひとつ上のクラスが販売のメインだが、日本ではこのクラスのシェアが近年ますます高まっている。そこにマツダはすでにCX-3を送り込んでいたが、いささか小さ過ぎたせいか販売的には伸び悩んでいた。ところがサイズの拡大が図られたCX-30は、後席の居住性や荷室の広さの大幅な拡大が図られたことで、ここで取り上げるライバルたちとわたりあえるパッケージングを得た。




 ボディサイズは全長と全幅については4台とも近い数値だが、このクラスはここで取り上げていない車種を含めても車高を1550㎜以下にとどめたクルマが増えており、この中で全高が1550㎜を超えているのはエクリプスクロスのみ。もはや超えている方が珍しい感じになりつつある。ライバルの3モデルについてざっと述べたい。




 トヨタが放った意欲作であるC-HRは、それまで3年にわたり販売台数で首位の座にいたホンダのヴェゼルに代わって一躍ベストセラーに上りつめた。現在はさすがに一時の勢いこそないものの、2019年秋にGRモデルを追加するなど新しい動きも見せている。ハイブリッドとガソリンダウンサイジングターボが用意されており、販売比率はハイブリッドが圧倒的に高い。


 


 18年3月に登場したエクリプスクロスは、スタイリッシュなクーペフォルムをまといながらも実用性も十分に確保するとともに、三菱が誇る四輪制御技術により条件を問わず優れた走行性能を実現した実力派である。当初はガソリンダウンサイジングターボのみだったところ、19年6月に待望のクリーンディーゼルが追加されて以降はそちらが売れ筋だ。

 もう1台は18年10月にレクサスSUVの末っ子として加わったUX。末っ子といってもボディサイズこそ他の3モデルと近いものの、価格は今回の中でも突出して高いわけだが、優劣ではなくプレミアムブランドのエントリーモデルがどのようなものなのか、参考として持ち込んだ。エンジンはガソリンの2.0ℓ自然吸気と2.5ℓのハイブリッドという2本立ての設定になっている。




 スタイリングについて、近年では個々の車種がより自身の特徴を強調する傾向がますます高まる中で、今回の4台もそれぞれ個性をアピールしている。




 デザインの奇抜さにおいては、C-HRを超えるクルマは世界を見渡してもそうそうない。トヨタとしても、こうしたクルマが長く売れるはずもなく、好きになった人だけ買ってくれればよいというつもりでつくったクルマのようだが、これほど多くのユーザーが共感するとは予想をはるかに超えていたようだ。




 他メーカーだと企画の段階で躊躇しそうな、こうしたクルマを世に送り出せるのもトヨタの強さ。そしてそれが世に受け入れられて売れるという好循環を生んでいる。




 UXは各部を尖らせた新感覚のデザインが独特。一見するとあまりSUVっぽく見えないのは、このクラスはこれぐらいがベターと考えたからか、あるいは上にNXやRXというよりSUVらしいクルマが控えていることから、あえて差別化を図るべくこうしたのだろう。




 その点では、上にCX-5やCX-8が控えたCX-30も同様で、車高を抑えるとともに驚くほど幅広くクラッディングパネルを配してボディを薄く見えるようにし、スタイリッシュさを表現している。キャラクターラインをまったく入れていない滑らかなボディパネル独特の雰囲気を醸し出している。




 一方エクリプスクロスは反対に、キャラクターラインを多用してシャープさを強調しているのが特徴。キャッチーなフロントマスクや、クーペライクなフォルムながら車高を高めにしたのは、三菱のSUVとして期待されるものが何なのかを踏まえてのものだろう。ベースであるアウトランダーとRVRの間を埋めるだけでなく、ひと味違った個性が与えられている。

扱いやすいボディサイズを持つクロスオーバーSUV。搭載されるパワートレーンは1.8ℓディーゼルに2.0ℓガソリンと、遅れての登場となる「SKYACTIV-X」エンジン。これを6速AT&MTと組み合わせ、FFと4WDも設定する。



直列4気筒DOHCディーゼルターボ/1756㏄


最高出力:116㎰/4000rpm


最大トルク:27.5㎏m/1600-2600rpm


車両本体価格:306万9000円


WLTCモード燃費:19.2㎞/ℓ

走りも各モデルの違いが明白

 走りについても、近年パワートレーンの多様化がますます進んでおり、このクラスにもいろいろなタイプが揃うが、今回はディーゼルとハイブリッドが2台ずつ、すなわち純ガソリンではない方で比べることにした。




 実際の販売比率も日本ではハイブリッドやディーゼルがもてはやされる傾向で、CX-30がどうなるかはこれからわかるが、前身といえるCX-3が当初はディーゼルのみだったところ、ガソリンが加わってからは半分を超えており、CX-30でもガソリンが40%、ディーゼルが35%、遅れて追加されるスカイアクティブ-Xが25%と見込んでいるという。




 せっかく箱根に持ち込んだので、ワインディングでどれがいちばん気持ち良く走れるかという視点を主体で述べると、動力性能において好印象なのは、加速の力強さで他を凌ぐエクリプスクロスだ。




 8速ATとの組み合わせで、低速域からリニアなレスポンスと、湧き上がるトルク感がある。音や振動も抑えられているとはいえ、さすがにCX-30を前にするとディーゼルっぽさを感じるものの、エンジン特性にはディーゼルの良さが前面に出ていて、トルクフルで乗りやすい。

 対するCX-30もディーゼルとしてのトルクはあるが、アクセル開度が小さい領域で無反応な領域があり、そこを超えると一気にトルクが出る特性で、乗り方によっては車速のコントロールがしにくいのが気になる。ただし、音や振動が圧倒的に小さく、レッドゾーンが5500rpm〜と、ディーゼルらしからぬほど高く、ガソリンのように回して楽しめる味を持っているのは、スカイアクティブ-Dならではの美点に違いない。




 トヨタ系のハイブリッド車は、こうしたワインディングロードを走るには不向きというイメージがあるのだが、実は近年のモデルはそんなことはない。かつてに比べてアクセルレスポンスが大幅に改善されていて、こうした場所でもストレスなく走れる。とはいえアクセルを踏み込んで上まで回すと、いわゆるラバーバンドフィールが顔を出すのは否めないが、昔のようなことはない。




 また、これまたイメージとは逆なのだが、乗り比べるとスペックに勝るUXよりもC-HRの方が微妙にレスポンスが良く、走りも軽快に感じられた。これには意外と大きい車両重量差も影響していそうだ。




 フットワークの味付けもそれぞれ。奇抜なデザインに目が向きがちなC-HRだが、実は欧州市場でも認められるべく走りも本気で磨き上げているとのことで、こうして走らせてみてもそれは正確性に富むハンドリングにも表れている。今回ドライブしたのは3万㎞超を走った個体だったのだが、くしくもTNGAのポテンシャルの高さを垣間見た次第。しっかりとした土台に支えられて足まわりが的確に動く、新車で感じた良さを改めて感じ取ることができた。

個性的なルックスと、ニュルブルクリンク24Hレースなどで鍛え上げられたスポーティな走りが魅力の異色なSUV。その独特な個性はデビューから3年が経過した今でも色褪せず、販売台数でも高いレベルの人気を維持している。



直列4気筒DOHC/1797㏄


最高出力:98㎰/5200rpm[モーター:72㎰]


最大トルク:14.5㎏m/3600rpm[モーター:16.6㎏m]


車両本体価格:302万8000円


WLTCモード燃費;25.8㎞/ℓ

 UXも基本骨格として近縁関係にあるわけだが、こちらも仕上がりは上々だ。このクラスながら電子制御サスペンションが設定されているのは、やはりプレミアムブランドの一員らしい。フラット感があり、より高い快適性と俊敏かつ正確なハンドリングに加えて、静粛性も高く、他の3台よりもワンランク上質なドライブフィールを身に着けている。高価ではあるが、良いものは良いことには違いない。




 片やエクリプスクロスは、今回の3台の中では重心高が高いため、こうしたワイディングを走ると動きが大きく出やすいわけだが、独自の四輪制御技術が効いてか、俊敏性と優れた操縦安定性を併せ持っている。




 惜しむらくはボディだ。新世代のグローバルプラットフォームを得たライバル車に比べると全体的に振動感があり、もう少し剛性が欲しいところ。こちらもベースであるアウトランダーが各部に手当を施して見違えるような走りを手に入れることができているので、エクリプスクロスも期待したいところだ。




 CX-30はこの中で唯一、リヤが独立懸架でないわけだが、それによると思われるデメリットとメリットの両面が感じられた。




 まず、乗り心地は路面の凹凸に対する感度が高め。低速ではそれほどでもないが、車速が上がるにつれて硬さ感が増し、段差を通過した時の突き上げも強め。トーションビーム化だけでなく、縦方向が強過ぎる車体剛性のバランスなど、いろいろ要因はありそうだが、現状はやや気になるのは否めない。




 一方で、ハンドリングにはトーションビーム化の恩恵も感じられた。マルチリンクは一般的に横力が加わるとトーインとなり安定性が増す半面、操縦性にも少なからず影響する。その点、トーションビームなら動きが線形でアライメント変化が小さい。




 加えてマツダにはGVCがある。世に出た当初のGVCは切りはじめが過敏過ぎると感じていたところ徐々に改善され、ブレーキ制御を加えた最新の「プラス」は違和感も薄れ、ライントレース性も向上している。横Gはあまり強く立ち上がらないのにヨーがしっかり出るあたりも独特の操縦感覚である。




 そのGVCの効果もあって、ステアリングの切り始めには俊敏さを感じさせながら、ターンインは小舵角だが、切り増していった時の反応がゆるやかなところがCX-30ならでは。世の中の流れとは逆に、あえてステアリングレシオをスローにすることで、クルマに無駄な動きを出させず修正舵を要しないようにしているわけだ。これにより開発目標のとおりステアリングを切った分スッと曲がり、ドライバーの思いどおり自在に動かせるドライブフィールを実現している。この感覚は、今回のライバル車にはないものだ。

パジェロやランサーエボリューションで4WD技術とブームを牽引してきた“四駆の三菱”が放つクロスオーバー。スタイリッシュながらも、室内の実用性やS-AWCによる、路面を選ばない本格的な走りはマニアをも唸らせる実力を持つ。



直列4気筒DOHCディーゼルターボ/2267㏄


最高出力:145㎰/3500rpm


最大トルク:38.7㎏m/2000rpm


車両本体価格:346万6100円


WLTCモード燃費:14.2㎞/ℓ

デザインの個性化もますます加速

 インテリアやユーティリティについてもそれぞれ。このところどのメーカーも、質感の向上と装備の充実に力を注いでいている点では共通しているが、外見だけでなくインテリアデザインも年々、個性が増していることを感じる。C-HRはまさしくそうで、かなり攻めたデザインを見せている。すでに指摘されているとおり、後方視界がよろしくないわけだが、それでこのスタイリングが実現しているのだから良しとすべき。




 ちなみに、リヤサイドウインドウは見てのとおりで、フロントシートのサイズも大きいため後席は閉塞感があるのだが、平均的な成人男性の体格である筆者が座っても頭上に隙間があるし、乗り込んでしまえば居住空間は確保されていることを念のためお伝えしておこう。デザインに割り切ったように見えつつも、そのあたりのそつのなさはトヨタらしい。




 片やUXのレクサスの流儀に則った高いデザイン性とクオリティを感じさせるインテリアには、見るからにお金が掛かっている印象を受ける。明るい配色や和紙の質感を表現したという「バージョンL」のインテリアは新鮮で、やはり高価なクルマという雰囲気を伝えてくる。




 装備についても、シートベンチレーションが設定されているのは今回唯一。置くだけ充電も付いている。「Fスポーツ」では、可動式メーターが付くのも特徴だ。また、C-HRともどもAC100V 1500W の大容量電源が用意されるのも強みだ。




 インテリアの質感の高さはCX-30もなかなかのもので、立体的でありながら滑らかな曲面を描くインテリアのデザインは、レクサスと並べてもひけをとるものではない。




 クーペ的なフォルムながら後方視界も悪くなく、ウインドウグラフィックとルーフラインの関係を工夫することで、後席の居住性や荷室容量も十分に確保されているあたりもよくできている。

 エクリプスクロスも、ブラックとシルバーを組み合わせた水平基調のインテリアの質感はなかなか高い。地上高が高く、ヒップポイントも高いので、エクリプスクロスだけ目線がダントツで高い。リヤシートをリクライニングと前後スライドできるのはエクリプスクロスのみで、実用性においてはこの中では最も高いと言えそう。




 今回の中では最もSUV的なクルマであり、デザイン、走り、快適性、車内や荷室の使い勝手など、いろいろな要素の最大公約数を上手く見つけたクルマでもあると思う。




 この4モデルだけでも、これほど持ち味が異なるわけだが、だからこそ選び甲斐があるというもの。その中でもCX-30は、このクラスのSUVとして求められる機能を十分に満たし、ポテンシャルを感じさせる走りを身に着けるとともに、なによりもひときわスタイリッシュな内外装が印象的だった。世界中のメーカーがしのぎを削るこのカテゴリーにおいても際立つ存在になり得るように思える。

レクサスのクロスオーバーシリーズの末弟となるUX。最も小さなレクサスながら上級モデルに劣らない、ハイエンドブランドに相応しい上質さと優雅な走りが与えられている。2.0ℓガソリンと2.0ℓハイブリッドをラインナップ。



直列4気筒DOHC/1986㏄


最高出力:146㎰/6000rpm[モーター:109㎰]


最大トルク:19.2㎏m/4400rpm[モーター:20.6㎏m]


車両本体価格:518万4259円


WLTCモード燃費:22.8㎞/ℓ
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