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マツダCX-30のメカニズムをピンポイント解説! |SUVレビュー


「世界一のクルマをつくる」そのためには今までとはまったく違った発想が必要だ。そうした考えから生まれた「SKYACTIV TECHNOLOGY」は車両構造、エンジン、トランスミッション、ボディ、シャシーと、各部に独自思想に基づいた技術が投入され、個々のユニットを統合的に制御することで、「人馬一体」の走行性能を実現する。ここからは、CX-30に投入されたマツダのオリジナリティ溢れるメカニズムを紹介する。




図版解説●安藤 眞(ANDO Makoto)/編集部




※本稿は2019年11月発売の「マツダCX-30のすべて」に掲載されたものを転載したものです。

大き過ぎず小さ過ぎない、絶妙なサイズ感を実現

クロスオーバーSUVとして持て余すことのないコンパクトなボディサイズながら、実用性に妥協のない室内及び荷室空間を確保した。また、機動性をアピールする大径タイヤを採用しつつ、立体駐車場を利用できる全高とCX-3と同等の最小回転半径も実現している。

大型化されたアームレスト

CX-3に対して50㎜広い、ゆとりのある前席左右の空間でよりくつろげるよう、肘掛けを兼ねるセンターコンソールを大型化。同様にドアアームレストの幅も15㎜拡大。自然な姿勢で疲労を軽減しつつ、移動を楽しむことができる。

CX-5と同等の余裕あるカップルディスタンス

乗員の左右方向の距離をCX-5同等の740㎜に設定する一方、前後方向は、CX-3に対して26㎜拡大。身長180㎝級が前後に座っても窮屈にならない。平均的日本人4名には十分広いスペースだ。

スタイリッシュなデザインながら頭上空間も確保

後席空間はルーフ後方を高くしたデザインと内装寸法の切り詰めにより、頭上空間を確保。加えて、地上高を確保しながらもフロア高を低くすることで、CX-3に対し頭上空間は40㎜拡大された。

歩行姿勢に近いS字の姿勢

後席も前席同様、「人間の持つバランス保持能力を最大限に引き出す」コンセプトを採用。着座した際に、歩行姿勢に近い脊椎のS字が確保できるよう、しっかりしたランバーサポートが配置されている。

振動の伝達経路を的確に制御

サスペンションからの入力が乗員に伝わる際、遅れが生じたり方向が変わったりすると、不快感が増す。そこで、各部の剛性向上やガタを最小限にする設計を実施。マツダ3に対しては、写真中央の銀色に見えているブラケットを専用設計して着座高を調整している。

楽な姿勢を提供する工夫

コンパクトボディであるが故、後席は「広い!」と驚くレベルではないが、前席下に足がすっぽり入るため、膝を伸ばし気味にした楽な姿勢が取れる。フロア面は前上がりになっており、足首が不自然に伸ばされることもない。

自然な関節の角度で快適な着座姿勢を提供

後席の着座姿勢は、下肢の角関節がいずれも90度以上になるよう設計。90度を下回ると、「体育座り」的になったり、座骨に荷重が集中して尻が痛くなったりしがちだが、CX-30ならば、そうした心配は不要だ。

グローバルサイズのベビーカーにも対応

ライフスタイルにこだわるヤングファミリーを中心に、人気が出始めているグローバルサイズのベビーカー。国内製のものより大型なグローバルサイズの海外メーカー製ベビーカーも余裕を持って搭載できるように考えられている。

中型スーツケースふたつを余裕を持って搭載可能

一週間程度の荷物を収納できるサムソナイトの67ℓサイズの中型スーツケースふたつが余裕を持って搭載可能。また中型と大型の中間、ジャスト型と呼ばれるサイズのものであれば、平置きで搭載できる場合もある。

荷室トリムの工夫で より使いやすく

荷物を満載してもリフトゲートのトリムが荷物の角に当たって閉まらないことがないよう、デザイン部門と設計部門の協力により、搭載した荷物と干渉しにくいトリム形状が採用された。

筋力の負担を少なく重い荷物の乗せ降ろしができる高さ設定

バックドア開口部の高さは、CX-3やCX-5より低い731㎜に設定。身長174㎝の人が箱入りのペットボトル飲料を楽に積み下ろしできる高さが740㎜なので、成人男性の平均身長が172㎝の日本人ならドンピシャの寸法。

作動音にも配慮したパワーリフトゲート

ワンタッチでリヤゲートの開閉ができるパワーリフトゲートを「20S」を除く全車に採用。開閉用のダンパーのギヤとケースを従来の金属製から樹脂製に変更することで、高周波で不快な作動音も低減されている。

軽量・高剛性な安全ボディを構築

1310MPa級を含む980MP以上の超高張力鋼板を約30%採用し、軽量で高強度なボディを実現している。また、フロントやサイド等の各部には、しっかりと衝撃を受け止め、効率的にエネルギーを吸収する構造を採用。

新世代マツダ車に採用される環状骨格

新旧骨格構造の比較。図はMAZDA3のものだが、CX-30も基本は同じだ。違いは丸で囲んだ部分で、旧構造(アクセラ)では途切れていた部分を、新構造(MAZDA3)では隣接する骨格に接続。骨格同士が支え合い、より高い剛性を確保する。

各部に施される空力処理



ボディ各部には空力処理が施されている。フロントバンパー下部にはスパッツが装着されるほか、空気の取り入れ口があり、ホイールハウス内側の開口と貫通。レーシングカーに見られる乱流抑制と同じ手法だ。ボディ下面もほぼフラットな状態に仕上げられている。

独自発想の「減衰節」で静粛性を向上

金属で出来たボディは、振動して音を伝達しやすい。補強して剛性を高めただけでは、固有振動数を高めることはできても、振動のエネルギーそのものを減らすことはできない。そこで、骨格を補強するために入れている隔壁の未溶接面に、従来のものより減衰性の高い接着剤を塗布し、その内部損失を利用して振動エネルギーを熱エネルギーに変える「減衰節」を考案。静粛性を高めると同時に、工程上、スポット溶接できなかった部分を接着することで、剛性も向上させている。パネルを接合するフランジ面にも高減衰性接着剤を塗布し同様の効果を得ている。

高効率で走りと燃費を両立する

コンベンショナルなガソリンエンジンには、2.0ℓの主力を担ってきたPE-VPS 型を搭載。ピストンにボウル状の燃焼室を形成して低負荷時の着火性を高め、吸気弁側に電動VVTを使用して遅閉じミラーサイクルをコントロールする。

〈SKYACTIV-G 2.0〉


エンジン型式:PE-VPS


排気量(㏄):1997


種類・気筒数:直列4気筒直噴


弁機構:DOHC16バルブ


ボア×ストローク(㎜):83.5×91.2


圧縮比:13.0


最高出力(kW[㎰]/rpm):115[156]/6000


最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):199[20.3]/4000


使用燃料:レギュラー


WLTCモード燃費(㎞/ℓ):14.8~16.2

実用燃費と環境性能を追求しつつ力強さと静粛性を獲得

マツダの名声をひときわ高めたSKYACTIV-Dの1.8ℓ仕様。1.5ℓ仕様に対してボア径を3㎜、ストロークを7㎜拡大し、行程容積を258㏄増やしている。圧縮比の14. 8に変更はなく、採用技術もほぼ同じ。

〈SKYACTIV-D 1.8〉


エンジン型式:S8-DPTS


排気量(㏄):1756


種類・気筒数:直列4気筒ディーゼル直噴ターボ


弁機構:DOHC16バルブ


ボア×ストローク(㎜): 79.0×89.6


圧縮比14.8


最高出力(kW[㎰]/rpm):85[116]/4000


最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):270[27.5]/1600~2600


使用燃料:軽油


WLTCモード燃費(㎞/ℓ[2WD/4WD]):19.2/18.4

ダイレクトな走りを楽しむなら6速MT

スカイアクティブ-Xを含むガソリン車には、6速マニュアルミッションを設定。よりダイレクトな走りを楽しみたい、アクティブなドライバーにドライビングプレジャーを提供する。

ディーゼルを圧倒的に静かにする独自技術

ピストンピンの空洞部に内蔵したダイナミックダンパーを使用して、ピストン〜コンロッド系の構造共振音を相殺する「ナチュラル・サウンド・スムーザー」を装備。静粛性の高さは欧州製ディーゼルを凌駕する。

応答性とダイレクト感が魅力の6速ATミッション

基本構造は古くから使われている遊星歯車式ながら、トルクコンバーターを小容量化してロックアップ領域を広く取り、DCT並みの変速応答性とダイレクト感を実現したSKYACTIV DRIVE6速トランスミッションを採用する。

世界初の燃焼技術を投入したSKYACTIV-Xエンジン

量産ガソリンエンジンとしては世界で初めて、予混合圧縮着火燃焼(HCCI)を実現したSKYACTIV-X 。ディーゼルのような純粋な圧縮着火ではなく、火花点火による筒内圧の上昇を利用するため、マツダSPCCI(SParkControlledCompression Ignition)と称している。 日本向けにはレギュラーガソリンの使用もできるようにするため、圧縮比を16.3から15.0にまで下げている。燃料系配管の位置から、インジェクターはボアセンターにあるとことが分かる。手前に見えているのが、ルーツブロワー式の過給器。出力向上というより、吸気量とEGR量のバランス制御に使用しているのではないか。

〈SKYACTIV-X(MAZDA3欧州仕様)〉


排気量(㏄):1998


圧縮比:16.3


最高出力(kW[㎰]/rpm):132[180]/6000


最大トルク(Nm/rpm):224/3000

思いのままの走りを支える新技術

操舵開始と同時にエンジントルクをわずかに落とし、前輪の接地圧を高めて旋回開始をスムーズにするG-ベクタリングコントロールは、立ち上がり時にブレーキ制御も行なうG-ベクタリングコントロールプラスに進化した。

路面状況に合わせて「i-ACTIV AWD」が駆動を最適制御

AWDといえども、対角輪の接地荷重が抜けてしまうと、前後デフの差動機構が働いて、グリップしているタイヤにも駆動力が掛からなくなる。そこで空転輪にブレーキを掛け、その反力を利用して、グリップしているタイヤに駆動力を発生させる。

フロント:マクファーソンストラット式サスペンション リヤ:トーションビーム式サスペンション

サスペンション形式はMAZDA3と同様だが、車高アップに対応するため、フロントはナックルとロワアーム、リヤはトーションビームアクスルのトレーリングアーム部を新設計している。

新たな乗り味を決定づけるタイヤ開発

操縦安定性や乗り心地を大きく左右するタイヤは、専用 の先行試作車を仕立て、早期から特性がつくり込まれた。 基本的なコンセプトは、しなやかなサイド部としっかりと したトレッド部を持つ、最近のマツダ車に共通するもの。

振動対策が凝らされたヒンジ構造

バックドア開閉部のヒンジ機構。単純な部品だが、振動性能面から見ると「バックドアという質量を支持するバネ」として機能するため、この剛性をチューニングするだけでも、ブルブル振動を低減することができる。

入力をピークでなく時間軸で制御する新世代の乗り心地

新世代マツダ車は、乗り心地を良くするためにボディに伝わる入力の大きさ(ピーク値)を低減するのではなく、入力の伝わる時間軸に着目。時間を長く取って振動を吸収することで、滑らかな動きで上質な乗り心地と操安を実現している。

クルマとつながるマツダコネクティッドサービス

人とクルマをつなぎ、「安心」「快適」「楽しさ」を提供するマツダコネクトは全車に標準装備。8.8インチディスプレイとコマンダーコントロールのほか、スマートフォン専用アプリ「MyMazda」によって、11に及ぶ機能が操れる。

万一の時に心強い緊急通報機能

他社を含め搭載事例の増えてきた「エマージェンシーコール」。エアバッグ作動時や追突時、もしくは写真のSOSボタンが押された場合に、車両通信機から緊急通報と位置情報を発信。オペレーターが救急や警察の手配を行なう。

運転手の状態を見守るドライバーモニタリング

センターディスプレイには赤外線カメラと赤外線LEDが組み込まれ、ドライバーのまぶたの開き具合やまばたきの頻度などを監視して居眠りを検知。また顔や視線の方向から脇見も検知し、それぞれ警告を行なう。

スマートフォンで遠隔操作と確認が可能

スマホの専用アプリ「MyMazda」を使用することで、遠隔地から燃料残量やドアの施錠ハザードランプの消し忘れなどクルマの状態が確認できるほか、施錠や消灯操作も可能。ナビの目的地設定なども行なえる。


■機能項目


コンディションモニター(クルマの健康状態を確認できる)/バーグラアラーム(クルマの状態を確認できる)/カーファインダー(クルマの異常を知らせてくれる)/リモートモニター(駐車位置を確認できる)/うっかり通知(ドアロックを教えてくれる)/リモートコントロール(離れた場所からクルマの機能を操作できる)/目的地送信(スマートフォン経由で簡単に行き先をナビ設定できる)

カメラとレーダーで高速道路の走行を支援

「クルージング&トラフィックサポート」追従走行機能とステアリングアシスト機能により、先行車との車間距離を一定に保ちつつ、車線を検知している場合は車線沿った走行をアシスト。車線検知できない場合は先行車の軌跡に沿ってアシストする。

「クルージング&トラフィックサポート」追従走行機能とステアリングアシスト機能により、先行車との車間距離を一定に保ちつつ、車線を検知している場合は車線沿った走行をアシスト。車線検知できない場合は先行車の軌跡に沿ってアシストする。

見えない方向からのクルマをお知らせ

「ブラインド・スポット・モニタリング」は走行中に自車の後方から接近する車両の存在を知らせ、車線変更の際の後方確認を支援する。「後側方接近車両検知」は駐車場などで後退する際に左右後方からの接近車両を検知し危険を知らせる。

対向&先行車を眩惑せずに視界を確保

安全運転に必要な視認性を確保する「アダプティブ・LED・ヘッドライト」は、夜間走行時にクルマが先行車や対向車の状況を判断し、ヘッドライトの照射範囲や明るさを自動的に調整変化させ、周りに迷惑を掛けずに視認性を高める。

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