SUBARUレガシィアウトバックは、日本よりもアメリカで高い人気を誇るツーリングワゴンだ。少し背が高く、大柄。いかにもどこへでも行けそうなタフで頼りになるクルマ。そのレガシィアウトバックでロングドライブにでかけた。テーマは『500 miles a day』。アウトバックはどんなクルマだったか。
『500 miles a day』は、そもそもレガシィじゃなかった!
個人的に、スバル・レガシィといえば、ロッド・スチュワートである。ロッド・スチュワートの『Sailing』が流れるCMが記憶に残っている。そして、確かキャッチフレーズは、『500 miles a day』だったような気がしていた。
1日に500マイル(約800km)走れるグランドツアラーだ、と言っていたような気がしていた。今回、レガシィアウトバックを借り出すにあたって、調べてみたら、『500 miles a day』とCMで謳っていたのは、アルシオーネSVX(1991年~)だった。記憶とはいい加減なものである。
とはいえ、ロングドライブをするために、レガシィアウトバック(正式にはこういうが、以後「アウトバック」と表記する)を借り出してみたのは本当だ。11月8-10日に開催されたセントラル・ラリーを取材するために、東京〜愛知県長久手のモリコロパーク(愛・地球博記念公園)を往復しようと考えたのだ。セントラル・ラリーは来年復活するWRCラリー・ジャパンのテストイベント的な意味を持つイベントだ。「ラリーといえばスバル」という単純な発想もないではない。
もうひとつ、アウトバックを借りた理由は、このクルマがアメリカで大変に愛され人気の高いモデルであるからだ。
北米では、すでにSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)を採用した新型アウトバックが今秋から販売されている。新型に切り替わるまで、現行アウトバックの北米での売れ行きは鈍ることなく(というより、モデル末期が近くにしたがって伸びていった)売れ続けたのだ。なぜ、アメリカ人はアウトバックを選ぶのか? それも知りたくてロングドライブに出かけたわけだ。
現行モデルは5代目(BS系)と呼ばれる。現行アウトバックがデビューしたのは2014年のニューヨーク国際モーターショーだ。北米仕様には3.6ℓの水平対向6気筒エンジンモデルも当初は存在したが、国内仕様は2.5ℓ水平対向4気筒(FB25)自然吸気+リニアトロニックCVTのみ。借り出したスバル・レガシィ アウトバック X-BREAKも2.5ℓ水平対向4気筒を搭載している。
早朝5時。東名・川崎IC近くで同僚をふたり拾って、往路は男性3名で長久手を目指す。
ちょっと時間を戻して、前日の夕方、東京・恵比寿のスバル本社にアウトバック X-BREAKをお借りしにいった。エンジンをかけると、ひと昔ほどではないにしろ、直4エンジンではない、ボクサーらしい音と振動を味わうことができた。
ところが、ガソリン満タンなのに、メーター内の航続距離は「320km」となっていた。500マイルどころではない。こりゃ大変だ。編集部に戻るまでの都内をトロトロと走っていると燃費は8.2km/ℓ。うーむ。
編集部のパレット駐車場に入れると、全長×全幅×全高:4820mm×1840mm×1660mmという数字以上に大きく見える。分厚いのだ。最低地上高は200mmに上げられ、SUVらしいお化粧を施されたアウトバックは、多少無骨だが「頼りになる相棒、タフな道具感」がする。このあたりがアメリカ人に響くのか。
アイサイトver.3がつくので、速度を設定しておけば、あとはハンドルに軽く手を添えておけばOK。アクティブ・レーンキープもしてくれるが、正直言ってステア制御は、スカイラインのプロパイロット2.0を経験してしまうと、なんだかぎこちなくて、アクセル/ブレーキだけアウトバックに任せてステアリング操作は自分でしたほうがストレスが少なかった。
気になったのは、高速より街中
気になったのは、市街地での走り出しだ。レヴォーグでも気になったが、アクセルをちょっと踏んだだけで、クルマが期待よりもグッと前に出てしまう。アメリカ人のATの好みは、この出足の良い走り出しだとトランスミッションメーカーのエンジニアに聞いたことがあるが、日本の街中だと気を遣う。低速トルクが小さいのを、トルクコンバーターでトルク増幅をするのはATでもCVTでも同じ手法だが、ややストールトルク比を上げすぎているのはないか、と思った。「頼りになる相棒・タフな道具感」のあるルックスと、アクセル/ステアリングの軽さはやや違和感を覚えた。
とはいえ、ロングドライブは非常に楽。運転を代わってくれた同僚からも好評価を受けた。「これなら一気に福岡あたりまでいけるねぇ」は、アウトバックにとってなかなかの褒め言葉だろう。
復路はさらにもうひとり男性が乗って4人乗車で東京を目指す。日曜日の夕方恒例の酷い事故渋滞にも巻き込まれたが、燃費は13.3km/ℓだった。
一人乗車で高速道路メイン、100km/h前後の巡航がほとんどなら、正直言ってもう少しいい燃費を期待したいが、4人乗車(つまり一人乗車よりも200kg以上重い)で13.3km/ℓなら合格点だろう。
別の日に一人乗車で120kmほど走ったが、乗員の数で燃費が大きく上下しない印象を受けた。
結局1日で500マイルとはいかなかったが、返却するまでにほぼ500マイル(トータル797.6km)走った。燃費は13.1km/ℓだった。
燃料タンクは60ℓ。13.1km/ℓなら786km走れる計算だ。
”ほぼ”500 miles a dayをストレスなく走れるアウトバック。アメリカで高い人気を誇る理由が少しわかった気がする。
(あ、500 miles a dayは、アルシオーネSVXだったんだ)
スバル・レガシィ アウトバック X-BREAK
全長×全幅×全高:4820mm×1840mm×1660mm
ホイールベース:2745mm
車重:1600kg
サスペンション:Fストラット式Rダブルウィッシュボーン式
駆動方式:AWD
エンジン
形式:2.5ℓ水平対向4気筒DOHC
型式:FB25
排気量:2498cc
ボア×ストローク:94.0×90.0mm
圧縮比:10.3
最高出力:175ps(129kW)/5800pm
最大トルク:235Nm/4000rpm
燃料供給:PFI(ポート噴射)
燃料:無鉛レギュラー
燃料タンク:60ℓ
燃費:JC08モード燃費 14.8km/ℓ
トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
車両本体価格:329万4000円
試乗車はオプション込みで354万2400円