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ボルボXC60 ドライビング・インプレッション②「T8 Twin Engine AWDは異次元の速さ!」|SUVレビュー


XC60の最上級モデル「T8 Twin Engine AWD」は、いま考えられるすべてのパワーを手に入れた。そう、このT8に搭載される2.0ガソリン・エンジンは、ターボ+スーパーチャージャー、電気モーターという3つの“加速装置”で武装しているのだ。その走りは、一体……。




TEXT●西川 淳(NISHIKAWA Jun)


PHOTO●宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)




※本稿は2017年10月発売の「ボルボXC60のすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様が現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。

とてもスリリングな速さには舌を巻く!

 17年9月。ボルボカーズは、国連が取り組む新時代のグローバリゼーション活動「グローバル・コンパクト」(UNGC)に、世界的な自動車メーカーとしては4番目となる認定を受け署名した。世界的な企業や団体が創造的なリーダーシップを各々発揮し、社会的良民として行動して、持続可能な成長を遂げるためのグローバルな枠組み作成に積極的に取り組むことが求められている。




 ボルボといえば、19年以降に発売される車両すべてに電動モーターを搭載し、25年までに100万台の電動ボルボ車を販売し、気候変動に影響を与えない生産事業を確立すると明言している。フル電動化の意味は、EV+プラグインハイブリッド+マイルドハイブリッドという広義の電動化であり、フルEV化であると混同されたフシもあったが、いずれにせよ純粋に“内燃機関のみで走る”クルマを全廃する、と宣言したわけだから、国連でなくともびっくり、なのだった。




 それは、安全性能に付け加えられたボルボの哲学であると言っていい。その端緒として現時点でわれわれが体験できる成果が、「Drive-Eパワートレイン」(2.0ℓ4気筒以下エンジンのみ)であり、高性能高効率のツイン・エンジンT8のプラグインハイブリッド(PHEV)モデルだ。




 新型XC 60T8に搭載された“ツイン・エンジン”は、基本的に兄貴分XC 90T8と同じシステム、である。318㎰+400Nmの2.0ℓ直噴直4DOHC+ターボ&スーパーチャージャーエンジンに、87㎰+240Nmの電動モーター(フロント用は含まず)を組み合わせた。その意味するところは明白で、想像にたやすい。オーバー400㎰というシステム最高出力を持つパワートレインを、200㎏近く軽い車体に積み込んでいるというのだから……。




 まず、いっそう高効率である。事実、カタログ燃費や充電電力使用時走行距離はXC90より一割ほど良好。ちょうど体重差のぶんだけ効率的だ。そして何より、アクセルひと踏みの加速が違う。パワーモードで0→100㎞/h加速5.3秒という公称スペックは、スポーツ性能を意識させないSUVとしては異例に速い。




 実際、その速さには舌を巻く。トルクの波に乗るとは正にこのことで、グイグイとまるで後から押し流されるかのように進んでいく。XC90よりも“小さい”という確かな実感が、その加速をいっそうスリリングなレベルへと引き上げた。




 実をいうと、効果的にエンジンとモーターを使うハイブリッドモードでも充分に速かったから、そういう意味では、XC60の最上級グレードとしての威厳が、このT8には大いに備わっているといえそうだ。

乗り味も最上級グレードに相応しい振る舞い

 そのことは、フツウに大人しく走っている際の乗り味にも、現れていた。ひとことで言うと、重厚感がある。街乗りはジェントルで、高速では超安定、エンジンモデルとはかなり違ったライドフィールだ。




 微速域で多少ごつごつとした乗り心地になるのはXC90のT8も同じだったが、そこから徐々に速度を上げていき、全体的に“まろやか”な乗り心地に変わるまで、90のときほどには時間を要しなかった。ハンドリングも、非ハイブリッドモデルほどにはきびきびと動かなかったけれども、逆にしっとりと落ち着いて動くという印象を抱く。上質である。




 惜しむらくは、ブレーキング時の回生介入にはまだ少し違和感があった。このあたりの微妙なチューニングと、充電電力を使い果たしたあとの燃費悪化は、今後の進化に期待したい。圧倒的な加速フィールに、上質なライド感、45㎞程度とはいえ電動走行が可能なこと、そして、クォリティの高い内外装のデザイン。プレミアムコンパクトSUVの真打ちに相応しい内容だったと言っていい。

Specifications


▶全長×全幅×全高=4690㎜×1900㎜×1660㎜


▶車両重量=2170㎏


▶エンジン=水冷直列4気筒DOHC 16バルブ2.0ℓターボ+電気モーター


▶エンジン最高出力=233kW(318㎰)/6000rpm


▶エンジン最大トルク=400Nm(40.8㎏m)/2200-5400rpm


▶モーター最高出力=34kW/2500rpm(前)/65kW/7000rpm(後)


▶モーター最大トルク=160Nm/0-2500rpm(前)/240Nm/0-3000rpm(後)


▶トランスミッション=8速AT


▶価格=884万円




世界的に広がるプレミアムSUVの世界に、“ハイパフォーマンス”という言語で新風を吹き込むXC60 T8 Twin Engine AWD。日本市場にも900万円を切る魅力的なブライスで、圧巻の走りを見せるプラグイン・ハイブリッドモデルを実現させた。エンジンルームには、PHEVであることを示す電装パーツが数多く並ぶ。それでも余裕のある空間に感じるのは、じつに効率的なレイアウトが実現できた証と言えるのだろう。室内に目を移せば、シフトノブにはOrrefors社製のクリスタルを採用するなど、他のグレードとの差別化を図っている。足元には、ガソリンエンジン318㎰+電気モーター87㎰というハイパワーを受け止めるため、255/45R20サイズのハイグリップタイヤを装着。8本スポークの美しいホイールも目を引く。

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