アナログ派自動車評論家・瀬在仁志(ヒトシ君)が助手の75(ナコ)とともに、話題のクルマに乗ってオイシイモノを食べに行くという食いしん坊企画の第5弾。道中、感じたことや気がついたことを言いたい放題しつつ、最終的にはオイシイモノにありつくという企画。今回は、走る歓び派・ヒトシ君、大排気量万歳派・75も期待を寄せる、日産・新型スカイライン 400Rに乗り込みます。さて、大満足! となるか、はたまた?
講師:瀨在仁志(Hitoshi SEZAI)
助手:生江凪子(Naco NAMAE)
アナログ派自動車評論家ヒトシ君と助手の75のドライブ記事も早5回目。さて、今回の待ち合わせ場所は、横浜の日産グローバル本社です。朝9時15分に待ち合わせ。広報車の手配は75がしたようで。車種も聞かされていないヒトシ君は、ちゃんと手配できてるのかと一抹の不安を持ちながら集合場所へ到着。だが、時間になっても75の姿は見えない……。
ヒトシ君:もしもしモシモシ〜? オレ、ちゃんと5分前に2階の受付にいるよ!
助手75:あ〜、あ〜、いま、手続き中! 下きてください! 下!
相変わらず乱暴である。下、下、としか言わないで電話は切れた。広報車をピックアップする地下のことを言っているのだろう。だが、広報車は無事に借りる手続きができたらしい。一安心。
助手75:今日のクルマはスカイラインですよ!
ヒトシ君:ってことは、話題のプロパイロット2.0だな。アナログ派でも興味あるぞ。
助手75:違うっ(キッパリ)。クルマは馬力ですよ! パワー至上主義! ってことでスカイラン400Rですよ! 400馬力ですよ! よんひゃく!!!!!
ヒトシ君:400、400うるさいよ……。わかった。400psね。それより、じゃんけんしようぜ。
助手75:イエッス! 本日の議題! おとうふソフトクリーーーーーム!
ヒトシ君:メシじゃない……。まぁ、行きますか。
ふたりを乗せたスカイライン400Rは首都高神奈川線から横浜新道、保土ヶ谷バイパスを経て東名へ。車内は「馬力」の話題で盛り上がる。
助手75:400psってやっぱり特別よね。
ヒトシ君:正確には405psね。
助手75:(聞いてない)ああ懐かしいな、280ps自主規制時代。あの頃ワタシの人生暗かった♫
ヒトシ君:いくつだよ。藤圭子かよ。280ps自主規制は1989年のフェアレディZと、R32スカイラインGT-Rの頃の話だぞ。そう、そうだよね。国内で280psの自主規制を解いたのは、2004年だからね。そうそう。そうだね。
助手75:ワタシ、こう見えて昭和のオンナなので、「クルマはパワーがあってナンボじゃ」という価値観、根強いんですよ。やっぱり正義はリッター3キロだしさ! 300psだと驚かないけど、やっぱり400馬力は特別ね〜。
ヒトシ君:いま国産でもっともパワフルなのは、いわずと知れたR35 GT-Rの600ps、次がホンダNSXの570ps、あ、NSXはモーターも載っているけどね。で、次がレクサスの5.0ℓV8の481ps(編集部註:RC Fとかに載っています)。で、レクサスLSの3.5ℓV6ツインターボの422ps。だから、このスカイライン400Rの405馬力は、第5位ってことね。こうして乗ってみると、このエンジン、いいわぁ。スムーズで軽く回る。マイナーチェンジ前のメルセデス・ベンツの2.0ℓ直4ターボなんて比べ物にならないほど、いい! 気に入った!
と、いきなりの高評価のヒトシ君の横で、やおらバッグからなにかを出す助手75。
ヒトシ君:よし、400psがどれほどのもんか、試してみよう。一応、オレ、アナログ派とはいえ、自動車評論家だから、今回の試乗のポイントは「シャシーはエンジンより速いか?」に置いてるってことを先に申し伝えておきます。
助手75:なんじゃそら? 突然口調が変わるし。
ヒトシ君:昔よくこういう言い方をしたんだよ。「パワフルなエンジンを載せるのは比較的簡単だけど、それにシャシーがついてくるか」ってこと。このスカイライン400Rのシャシーは日産のFR-Lプラットフォームっていう、長ーい歴史があるのを使っているわけ。つまりそんなに新しくないの。そのプラットフォームに400ps。しかも後輪2輪駆動なの。よし、じゃあやってみよう。
助手75:お、おうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅあれれナニこれ?
ターンパイクの上り。あたりにクルマは一台もいない。そこで一旦ストップしてアクセルを全開!すると、後輪は激しく空転したあと、クルマが左右に暴れようとする。そのままアクセルを踏み続けると強烈な加速が!
ヒトシ君:あそこで、びっくりしてアクセルを緩めると、クルマはどっかいっちゃうのよ。だから踏み続けるわけ。やっぱり400psはパワフルだね。で、やっぱりシャシーはちょっと古い。
助手75:ちょっとびっくりしましたわ、アタクシ(ドキドキ)
ヒトシ君:でさ、このクルマ、ステア・バイ・ワイヤーを採用しているの。つまり、このハンドルと前輪は機械的にはつながってないの(実際はフェイルセーフのためにステアリングからステアリングのラックバーへはシャフトが伸びている)。ステアリングの手応えは、モーターが作り出しているし、ほら、ハンドルの切角とクルマの曲がり方が同じじゃないでしょ?
助手75:ほんとだ。ステアリングの感覚はどうなの?
ヒトシ君:開発が進んだから、際立った違和感はないよ。でも、たとえば、すごく速いカンターステアを切ろうとすると、モーター制御がついてこないことがあるんだ。もちろん、サーキット走行とかの限界域だけどね。ステア・バイ・ワイヤーが自動運転にとって重要な技術であることは間違いないし、そこで日産が一日の長があるのもわかってるよ。でも、このある意味古典的な高出力FRセダンだったら、絶滅寸前の「油圧パワステ」の方が合ってたかもね。
助手75:でも、本当にエンジンは吹け上がりがいいし、気持ちいいわ〜。
ヒトシ君:そうなんだ。オレもいま、それ言おうと思ってたの。とにかく滑らか。ターボラグもほとんど感じない。これはターボがいいな。普通のターボチャージャーは、オーバーラン、回り過ぎを防ぐために、ほどほどのところでウェイストゲートを開けちゃうんだけど、このVR30DDTTのターボは、渦電流式の回転センサーをつけて回転数を監視してるんだ。だからギリギリのところまで回せるってわけ。レスポンスを重視するために、最近のエンジンでは常識になっているEGRも使わないっていうんだ。天晴れだな。
助手75:EGRッテナニ?訊くと長そうだから、やめとくね。あ、口に出しちゃった。
ヒトシ君:いやぁ、気持ちいい。本当にいいエンジンだ。
助手75:オナカスイタ。そろそろご飯食べようよ。ワタシは、ソフトクリームを確保したからお昼はラーメンでもいいよ。仕方ないから。ちなみに、ソフトクリーム反射炉の近くだから、遠くはダメよ。
ヒトシ君:お、いーねー。韮山か。韮山といえば、「一匹の鯨」だな。前から気になっていたんだ。
連れてこられたのは、伊豆は長岡の「拉麺屋 一匹の鯨」鯨なのに一匹。面白い。集合住宅1階に入るお店で、駐車場完備(重要)。伊豆長岡駅からも「猛ダッシュ」で40秒という好立地です(ショップカードに猛ダッシュって書いてある)。
相変わらず、無言でがっつき、ごちそうさま。ふたりとも大満足。「デザートの杏仁豆腐が食べたい」という75をソフトクリームがあるからと引きずり出したら、ブーブー言いながらお店の前でなにかを発見。まったく。全然先に進めやしない。
Facebook枠で満足したのか、杏仁豆腐は忘却の彼方(単純)で、次のおとうふソフトクリームへ向かうふたり。目的の「手作りとうふ みずぐち」さんは駅から2.5キロほどに位置するおとうふ屋さん。こちらももちろん駐車場完備。
助手75:さ、ラーメンも美味しかったし、おとうふソフトも最高だったから、もう帰りましょう。
ヒトシ君:ヲイヲイ。せっかく韮山に来たんだから、反射炉見ていこうよ。そもそも反射炉ってなんだか知ってる?
助手75:……長そうだ。反射炉って溶解炉でしょ。それくらい知ってるよ〜。あ、これ以上は聞かないでね。大丈夫、あとで調べるから!
(編集部註:反射炉とは、金属を溶かし大砲などを鋳造するための溶解炉です。韮山反射炉は、実際に稼働した反射炉として国内で唯一現存するもの。平成27年には、この韮山反射炉を含む「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に登録された)
助手75:それはそうと、ワタシも400ps、運転してみたい!
ヒトシ君:お、おう。使うのは405psのうちの30psくらいだからだから、まぁ、大丈夫だろ。
いそいそとドライビングシューズに履き替え、運転席に座る75。
助手75:うわっ。軽やかで、パワフル! ハンドルが軽すぎて怖いくらい。これは、じゃじゃ馬だわ〜。35(GT-R)のほうがよっぽど運転しやすいわよ。でも、最高に愉しい。運転が好きな人にはぜひこういうクルマに乗って欲しいな。セダンだから、お父さん騙したら、買えるよね。もしくは反対もしかり? 新型スカイライン 400R、かなり気に入りました。インテリアが、ナビも含めて失礼ながらちょっと古臭いけど、やっぱり馬力があるのはいいわ。エンジン音も心地よい。でもさ、いまやGT-Rがあるのに、400Rって、これいかに?
ヒトシ君:あのさ、これは「スカG」なんだよ。スカGといえば4ドアセダンにハイパワーなエンジンを積んだやつのことなの。だから4WDじゃだめ。4ドアの後輪駆動、でシャシーを上回るほどのパワー。一見普通の人が見ると、フツーのセダンなのに、鞭を入れると俄然速い。
助手75:「羊の皮をかぶった狼」ってやつね。
ヒトシ君:そうそう。だから、このスカイライン400R、これでいいんだと思う。エンジンよりシャシーが速いってことはないけど、これだけいいエンジンを日産が作れるってことにオレは感動したね。これだけいいエンジンが載っているなら、多少のことは許せるよ、うん。
助手75:そうそう。スカイラインは同じVR30DDTTだけど、304psの「GT」ってやつもあるんだけど、買うなら断然400Rね。まず、モード燃費もほらこのとおり。
助手75:ね、ほとんど変わりないのよ。もちろん、踏めば違いが出るんだろうけど。
ヒトシ君:お、なるほど。あぁ、最後もまた電卓だ。
助手75:いい? GTの価格は435万3800円。400Rが562万5400円。差額は127万1600円。127万1600円で101psが買えるわけよ!チーン!1ps=1万2590円ですよ、旦那! これを買わないでどうするって感じですよ!
ヒトシ君:またそれか。さ、クルマを返却する前に、給油給油。今日は305km走って9.9km/ℓだった。これだけ楽しく走って、ほぼモード燃費どおりってなかなか優秀だよね。それに高速道路は11.1km/ℓだったしね。
助手75:そうなの。新型スカイラインの初期受注でもハイブリッドよりもターボエンジンの方が多いんですって(52%)。しかもその半分が400R! しかも、40代以下のユーザーが3割近くってことで、オジサンたちだけじゃなくて若い層にも、やっぱりこの気持ち良さは理解されるのね。愉しいクルマをきちんと作ってくれるのを待っているユーザーは多いってことよね。クルマの未来は、まだ明るいな。
ふたりで:「スカG」最高〜っ!
ロートルのヒトシ君も、昭和女の75も大満足させてくれた400R試乗&韮山道中となった今回。走って愉しいクルマは、やはり正義です! ハイ。おあとがよろしいようで〜。
そして、広報車をお返しに横浜本社へ向かう道中、75が「あ、そこ停めて! ハイ、ハイ。チョットごめんなさいよ〜」とクルマを停めさせたかと思ったら、「じゃっ、お疲れさま〜」と電卓を片手に中華街へ消えて行った。
広報車と取り残されるヒトシ君とカメラ担当……。次回へ続く。
【本日のルート情報】
横浜の日産グローバル本社から首都高神奈川線~保土ヶ谷バイパス~東名高速~小田原厚木道路を経て、アネスト岩田箱根ターンパイクを上り、そのまま芦ノ湖畔へ。その後国道1号で三島、伊豆縦貫道を使って韮山へ。帰路は、伊豆スカイライン〜小田原厚木道路と来た道を戻って横浜へ。
【本日のオイシイモノ情報】
拉麺屋 一匹の鯨
静岡県伊豆の国市南條184-2 高野ハイツ1階
055-949-2202
平日)11:30~14:00/17:30~21:00
土日祝)11:30~14:30/17:00~21:00
水曜定休
手作りとうふ みずぐち
静岡県伊豆の国市長岡647-1
055-948-0779
9:00〜18:00
日曜定休
日産スカイライン400R
全長×全幅×全高:4810mm×1820mm×1440mm
ホイールベース:2850mm
車重:1760kg 前前軸重:1000kg 後後軸重:780kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式 Rマルチリンク式
駆動方式:後輪駆動
ステアリングギヤ形式:ラック&ピニオン式
ブレーキ:FRベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:245/40RF19
室内長×室内幅×室内高:2000mm×1480mm×1180(1160※)mm
※サンルーフ装着時
最低地上高:130mm
エンジン
形式:V型6気筒DOHC直噴ターボ
型式:VR30DDTT
種類:筒内直接燃料噴射V型6気筒(DOHC)
排気量:2997cc
ボア×ストローク:86.0×86.0mm
圧縮比:10.3
最高出力:405ps(298kW)/6400rpm
最大トルク:475Nm(48.4kgm)/1600-5200rpm
燃料:プレミアム
燃料タンク:80ℓ
燃費:WLTCモード平均燃費:10.0km /ℓ
最小半径:5.6m
変速比・最終減速比
トランスミッション:マニュアルモード付フルレンジ
電子制御7速オートマチックトランスミッション
変速比
前進:1速 4.783/2速 3.102/3速 1.984/4速 1.371/5速 1.000/6速 0.870/7速 0.775
後退:3.858
最終減速比:3.133
車両本体価格:562万5400円
試乗車両価格(オプション込):612万0082円
apparel(75)|jacket:BANANA REPUBLIC/tops:RALPH LAUREN/pants:DR DENIM/shoes:Manolo Blahnik/driving shoes:CHANEL/bag:State of Escape