ガソリンタンクをぐるりと取り囲む樹脂成形のFRP。近くにはタンク内部で支える柱構造の展示まである。ガソリンタンクにいま、何が起きているのか。
(S4301:八千代工業)
展示パネルのタイトルには「電動化対応した高圧密閉タンク構造」、しかし飾られているのはFRPで外周を巻いたガソリンタンク。いったいどういうことなのだろうか。技術者の方にうかがってみた。
ハイブリッド車が一般化し、エンジンが停止している時間が長くなっている。その間、ガソリンタンクの中では燃料蒸発で圧力が高まり、下手をするとタンクの破損にもつながってしまうこともある。それを防ぐために周りから補強部材で取り囲み、壊れないようにしているのだという。
これが基本スタンス。なぜ圧力が高まり続けてしまうのかというと、各国の規制強化が要因である。以前は蒸散分のうちCOなどの有害物質をキャニスターで濾してはいたものの、ブリーザーパイプで大気開放できていた。圧力が高まることはなかったのである。しかし、北米のエバポ規制の開始とともに各地で燃料揮発への対応が強く求められるようになった。タンク内で溜めておけるようにしなければならなくなったのである。
しかも、かつての燃料タンクは金属製であり、変形破損にはそもそも強かった。しかし軽量化ニーズが高まり、樹脂製タンクが一般化した今、その軽さと柔軟さがかえって仇となってしまっている格好だ。というわけで、現在の樹脂ガソリンタンクは金属製の補強材で押さえ込まれている。
長くなってしまったが、それを軽く作りたいというのがここに紹介する開発品である。補強材を樹脂(GFRP)で代替、軽量化を図る。FRP製品の剛性と重量はフィラー/バインダーの構成比でいかようにも変わるが、今回の開発品についてはそのバランスを探っている最中だという。
そこまで苦労しているなら、いっそのこと金属製タンクに戻るということは考えないのですかと、少々意地悪な質問をぶつけてみた。そのほうかもしかすると軽く作れるのではないかと思ったのである。しかし、近年の低床化コンセプトに沿って造られる燃料タンクの形状はいかにも複雑で、もはや樹脂の成形自由度をもってかからないとそもそも製品の形態に落とし込めない。やはり八千代工業のねらう樹脂製補強部材+燃料タンクというのは、さまざまなニーズを高度に満足させられる手段なのだと理解した次第だ。