米デュポンが2012年に売却した塗料部門を継承する米アクサルタコーティングシステムズは10月10日、「2019年自動車用カラー・トレンド・レポート:カラーコンボ」を発表。都内で記者説明会を開催した。
このために来日した本社グローバルカラーマーケティングマネージャーのナンシー・ロックハート氏はプレゼンテーションの中で、市場ごとに異なる人気色の傾向やカラーコンボ=色の組み合わせに加え、先行開発済の太陽光やLiDAR、レーダーを高い比率で反射できる塗料について、技術概要を説明した。
PHOTO&REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
ロックハート氏は「スマート・デュオ」と名付けた、白・黒・シルバー・グレーといったグローバルでシェアの高いボディカラーと、自動運転や燃費など自動車を取り巻く課題に対応する塗料技術との組み合わせの中で、これら高機能塗料について言及している。
まず、高日射反射率塗料については、北米では日射反射率(Total Solar Reflectance)が65%以上をクリアすると、室内の温度上昇を抑えることでエアコンへの負荷を減らせることから、環境に優しい技術として政府から補助金を受けられることを説明。
最も日射反射率が高い白については、通常の黒顔料をわずかに含む既存の塗料でも日射反射率が65.5%に達するものの、「IRブラック」と同社が呼ぶ赤外線を反射する黒顔料を使うことで、日射反射率が69.3%にアップするとした。
逆に、最も日射反射率が低い黒については、既存の塗料は日射反射率が5.4%に留まるものの、IRブラックを用いることで、日射反射率を約3倍の19.1%にまで高められるという。
とはいえ、補助金交付の対象となる日射反射率65%には遠く及ばない。それでもIRブラックを用いた黒のボディカラーを提案するのには、LiDARの反射率が大きく関係している。従来の黒ではLiDARをごく一部の角度でしか反射しないものの、IRブラックを用いることで、あらゆる角度でLiDARの反射率が10%を超えるようになるというのだ。
またミリ波レーダーのレーダー派は、金属に対し必ず反射するため、現状では塗装部のないフロントグリル開口部内に配置しなければならないなど、デザイン上の制約となっている。
それに対し、塗料内のアルミフレーク含有量を減らしつつパール顔料を組み合わせることで、特にアルミフレークを多く用いるシルバーメタリックにおいて、レーダー波の透過能力を改善。バンパー裏への装着を可能にし、美観やデザイン自由度、センサーの保護性能向上に寄与する、としている。
なお、これら高反射塗料の実用化時期についてロックハート氏に聞くと、「各国で法規制や規格がまだ決まっていないうえ、これら塗料のコストも高いため、実用化の目途は立っていない。だが技術的にはすでに出来上がっており、規格が決まれば微調整したうえで市場に投入できる」とのこと。
このほか、カラークリヤーや3コートの塗膜構成を用いて彩度を高めた赤のボディカラーが近年急速に採用例が増えているが、あらゆる角度から赤く見える「ハイクロマフレーク」と呼ばれる顔料を用いることで、通常の2コート塗膜で同等の効果を得られるボディカラーを提案。生産時においては工数および設備の削減、補修時においては調色・塗装作業の難易度低減に寄与することを訴求している。
自動運転技術の進化・普及やCO2排出量削減への要求が加速する中で、自動車のボディカラーは思わぬ所で制約を受けようとしている。アクサルタが今回発表した新技術は、自動車ユーザーが自由にボディカラーを選べる環境を維持するのに大いに役立つことだろう。