注目のCセグハッチ、マツダ3とこのクラスのベンチマーク、VWゴルフ。それぞれのディーゼル搭載の最上級グレードを比べてみた。燃費、乗り味、居住性、インテリアのクオリティなど、項目別に比較した。
マツダ3とVWゴルフ。Cセグハッチバックの新鋭とベンチマークである。それぞれ、ディーゼルエンジンをラインアップにもっている。それぞれのディーゼルエンジン搭載の最上級グレード、FFモデルに合計900km試乗した。ボディサイズ、デザイン、パワートレーン、インテリアなどの項目で比較してみることにする。見解は個人的な感想を含むことを最初にお断りしておく。
まずはボディサイズ比較 マツダ3は低く、長い
ボディ寸法に関しては、ゴルフがCセグ・ハッチバックのベンチマークたる王道サイズであるのに対して、マツダ3ファストバックは、スタイル重視、よりパーソナルな、ある意味クーペライクなデザインとなっている。したがって、マツダ3は明らかに長く、低い。とくに後席の居住性はゴルフの方が上回っていることは外から見てもわかる。
デザインについては、個人個人で好みが違うが、マツダ3の方がかっこいい、というのは衆目の一致するところではないか。
撮影したマツダ3のボディカラーはポリメタルグレーメタリック。この色やマシングレープレミアムメタリック、もはや定番になったソウルレッドクリスタルメタリックなど、ボディカラーの多彩さはマツダ3の方が上だろう。
SKYACTIV-D1.8 vs EA288 1.8ℓ vs 2.0ℓ
マツダ3 XDが搭載する1.8ℓ直4DOHCディーゼルターボ(SKYACTIV-D1.8)とゴルフTDIが搭載する2.0ℓ直4DOHCディーゼルターボ(EA288)のスペックを比べてみると、こうなる。
マツダ3:1.8ℓディーゼルターボ
最高出力:116ps(85kW)/4000pm
最大トルク:270Nm/1600-2600rpm
パワーウェイトレシオ:12.16
トルクウェイトレシオ:5.22
VWゴルフTDI(2.0ℓディーゼルターボ)
最高出力:150ps(110kW)/3500-4000pm
最大トルク:340Nm/1750-3000rpm
パワーウェイトレシオ:9.53
トルクウェイトレシオ:4.20
SKYACTIV-D1.8は、1.5ℓ直4DOHCディーゼルターボのSKYACTIV-D1.5の「ライトサイジング版」。したがって、純粋に2.0ℓ直4DOHCディーゼルターボのEA288と比べると、スペックの差は数字通り、ある。
ノイズ・バイブレーションを含めたフィーリングは、SKYACTIV-Dの方が上。排ガス浄化方式では、マツダは尿素SCRなしでNOx規制に対応するが、ゴルフTDIのEA288は尿素SCRシステムを積む。したがって、尿素水(AdBlue)の補給が必要だ。
燃費は
マツダ3 XD(6AT)
燃費:WLTCモード 19.8km/ℓ
市街地モード 16.4km/ℓ
郊外モード 19.7km/ℓ
高速道路モード 21.8km/ℓ
ゴルフTDI
燃費:WLTCモード 18.9km/ℓ
市街地モード 14.0km/ℓ
郊外モード 18.9km/ℓ
高速道路モード 22.2km/ℓ
である。
試乗の際の燃費は
マツダ3XDは17.1km/ℓ(600km走行)
ゴルフTDIは18.4km/ℓ(300km走行)
だった。ゴルフTDIの燃費の良さが際立つが、同じ条件で走れば、おそらくほぼ互角の数字がでるのでは、と思う。
トランスミッションは、マツダ3が自社製6速AT(SKYACTIV-Drive)、VWが7速湿式DCT(DSG)を使う。
それぞれ、レシオカバレッジは
マツダ3 XD:5.93
ゴルフTDI:6.39
で、7速のゴルフにアドバンテージがある。変速のキレ、スムーズさではゴルフに軍配が上がる。とはいえ、巷間言われるような「マツダ3は6速では足りない。もっと多段化すべきだ」という意見には同調できないと言っておく。
インテリアの質感は、圧倒的にマツダ3の方が上。現在、このクラスでマツダ3より上質なインテリアのクルマはないだろう。ゴルフは、良くも悪しくも「実用に」徹している。「機能は満たしているだから、文句ないでしょ?」というような感じがする。最新の運転支援やコネクティビティ技術を搭載しても、見た目は「少し前のクルマ」である。
ただし、マツダ3の横長のディスプレイの使い勝手については、不満を持つ人もいるのではないか。かっこいいけれど。
ドライバーズシートに関しては、甲乙つけがたい。が、個人的には新しいマツダ3のシートの出来の良さに軍配を上げる。後席は、おそらく膝元の余裕には差はないあろうが、マツダ3の「穴蔵感」はやはりちょっと違和感を覚える。対するゴルフTDIの後席は、このクラスに期待する居住性をすべて高次元でクリアしている。
マツダ3 FASTBACK XD Burgundy Selection
全長×全幅×全高:4460mm×1795mm×1440mm
ホイールベース:2725mm
車重:1410kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式&トーションビームアクスル式
駆動方式:FF
エンジン
形式:1.8ℓ直列4気筒ディーゼルターボ
型式:S8DPTS(SKYACTIV-D1.8)
排気量:1756cc
ボア×ストローク:79.0×89.6mm
圧縮比:14.8
最高出力:116ps(85kW)/4000pm
最大トルク:270Nm/1600-2600rpm
燃料:軽油
燃料タンク:51ℓ
燃費:WLTCモード 19.8km/ℓ
市街地モード 16.4km/ℓ
郊外モード 19.7km/ℓ
高速道路モード 21.8km/ℓ
トランスミッション:6速AT
車両本体価格:304万4555円
VWゴルフTDI ハイライン マイスター
全長×全幅×全高:4265mm×1800mm×1480mm
ホイールベース:2635mm
車重:1430kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 R4リンク式
駆動方式:FF
エンジン
形式:2.0ℓ直列4気筒ディーゼルターボ
型式:DFG(EA288)
排気量:1968cc
ボア×ストローク:81.0×95.5mm
圧縮比:16.2
最高出力:150ps(110kW)/3500-4000pm
最大トルク:340Nm/1750-3000rpm
燃料:軽油
燃料タンク:53ℓ
燃費:WLTCモード 18.9km/ℓ
市街地モード 14.0km/ℓ
郊外モード 18.9km/ℓ
高速道路モード 22.2km/ℓ
トランスミッション:7速DCT
車両本体価格:391万円
試乗車はプレミアムサウンドシステムDYNAUDIO 7万7000円。フロアマット4万4000円
総合判定:価格を考えるとマツダ3の商品力の高さが際立つ
マツダ3ファストバックXDの最上級モデル「XD Burgundy Selection」を約600km、ゴルフTDIの最上級モデルHighline Meister(ハイライン ・マイスター)を約300kmドライブした。
どちらもディーゼルエンジン搭載の5ドアハッチバックして非常に高い性能を持つといえる。どちらもドライブが楽しい。ディーゼルのネガである音や振動も気ならないレベルに抑えられている。
ディーゼルエンジン搭載のライバル同士として、どちらを選ぶか。
エンジンはゴルフTDIがパワフルだが、フィーリングはマツダ3の方が洗練されている。シャシーの完成度、走りの質感(スポーツ走行の限界というわけでなく、普通に走る場合)は、マツダ3の新しい乗り味に魅力を感じる。ゴルフの身のこなしは、もちろんまったく不満などない。相変わらず、このクラスのベンチマークと言っていい。
居住性は、ゴルフに軍配を上げる。もともとマツダ3は、「パーソナルなスペシャルティな感じ」を前面に出したモデル(だと思う)。常時4名乗車をする人(少数だと思うが)は、ゴルフを選ぶべきだ。そうでないなら、マツダ3を選んで後悔することなないと思う。
では、どちらが総合的に上か。
マツダ3 FASTBACK XD Burgundy Selectionの車両本体価格は304万4555円。
VWゴルフTDI ハイライン マイスターの車両本体価格は391万円。
その価格差は約86.5万円。この差は大きい。
あくまでの個人的な見解だが、コストパフォーマンスで言えば、マツダ3の圧勝である。