
ドゥカティのスクランブラーシリーズ最大排気量モデル。2018年12月に登場した。オーバー1LのOHC空冷エンジンを登載、同シリーズ最上級の仕上がりを誇っている。なお同バリエーションにはSpecalとSportがある。
REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田 俊輔(YAMADA Shunsuke)

◼️ドゥカティ・スクランブラー1100.......1,621,000円
'62 イエロー | シャイニングブラック |

スモークバイザー、タンクバッグ、グリップヒーター、ETCユニットはオプション品となります。



スクランブラーからイメージできるのは、ロードスポーツモデルをベースにするも、ダートを走る事も苦手としない万能性が売り。古い話をすれば、ツーリング最中に良く遭遇した工事中の砂利道等を、難なく走破して行ける機能性が頼もしい存在だったのである。
具体的には少しワイドなブリッジ付きアップハンドルを始め、ロードクリアランスを稼ぐアップマフラーの採用。クリアランスを空けたフェンダーデザイン。そして何より、ダートでもグリップの良いユニバーサルパターンのタイヤ選択が主な特徴だった。
そんなスクランブラーというカテゴリーに着目し往年(60年代)のモデルにならい3タイプのエンジン登載でシリーズ完結を果たしたのが、このドゥカティ・スクランブラー。その最終章としての投入が今回試乗した1100なのである。ちなみにバリエーションとしてはスペシャルと、オーリンズ製サスペンションを奢ったスポーツも揃えられた。
開発のキーワードは「Land of Joy」。道路(舗装路)以外でも楽しめる自由な使い勝手を象徴している。実際、前述の様なダートに遭遇しても、ロードスポーツ車のようにアクセルを緩める必要のない豪快で、かつ安心感のある走りを楽しめるのが大きな特徴だ。
もっともそんな機能性よりも、スクランブラーたる機能を備えたバイクを選択し所有する所に、他にはない違った自己表現手段となりえる格好良さも見逃せないのである。
フロントにはやや細めの120/80ZR-18インチ、リヤは180/55AR-17をマッチ。ピレリ製のMT60RSエンデューロタイヤを履く。このフロントタイヤはスクランブラー1100のために特別専用開発されたものだ。スクランブラー800よりもワイド化されたスチール製 トレリスフレームに登載されたパワーユニットは空冷のOHCデスモドローミック機構を持つ2バルブLツイン。
2本のベルトによってバルブ駆動されるデスモドュエ・エンジンは、φ55mmのフル・ライド・バイ・ワイヤ・スロットルボディとツイン・イグニッションの採用が特徴的。最高出力は欲張らずに86ps/7500rpmを発揮。特に最大トルクの88.4Nmは4750rpmで発生する中低速重視の出力特性が印象深い。
その他、トラクションコントロールを始めアクティブ、ジャーニー、シティ、3タイプのライディングモードが選べるエンジン・パワー制御、そして旋回中の急ブレーキでも賢く作用するボッシュ製コーナリングABSも標準装備されている。
またサイドビューで目線が集まる燃料タンクサイドには、着せ換え可能なアルミニウム製サイドパネルをマッチ。豊富なアクセサリー部品や用品も含めて、オーナーの個性を主張するカスタマイズに対応している点も見逃せない。
気の向くまま、オールマイティに使える良き相棒に!

跨がって、思わず頬が緩むのは、オーバー1Lもの大排気量モデルであることを感じさせないフレンドリーな感触にある。さすがLツインエンジンは横置きの特徴が活かされ、クランクケースの幅は単気筒に迫る狭さ。
ワイドで高めなハンドルを握り、バイクに跨がると、足元までスッキリとした印象で、気軽に乗れてしまうのが好感触である。
決して小柄では無く、車両重量も200kgを超えるが、親しみやすい範疇にある。太く乾いた排気音は迫力があり、穏やかにして強力な出力特性が実用域でも遺憾なく発揮されて、とてもおおらかな乗り味に包まれる。
背筋が伸びて前方や周囲への見晴らしも良く、周辺の情報や素晴らしい景色等がどんどん目に飛び込んでくる。ひとり自由気ままにワクワクできる気分が心地よいのである。
ハンドル切れ角が少なく感じられたが、実用上小回りUターンに困る事も少ない。市街地から郊外までどこでも走る場所を選ばない感覚はスクランブラーならでは。左手スイッチのモード切り換えでジャーニーを選択しておけば、穏やかにして何不足無い出力特性が発揮され、とてもおおらかで気分の良い走りが堪能できる。日本の道路事情とも絶妙のマッチングだ。
ローギヤで5000rpm回した時のスピードは51㎞/h。トップギヤ100km/hクルージング時のエンジン回転数は3700rpm程度だった。
ちなみにアクティブモードを選択すれば、かなりヤンチャなハイポテンシャルを発揮。スロットルレスポンスが過激になり、アップライトな姿勢で乗っていると少々乱暴者的な挙動になるが、本領を発揮させれば、実は凄いんだぞ!という心の余裕にも貢献できる感じである。
実際、好んでダートを走ろうとは思わないが、砂利や砂地等の悪路に遭遇してもビクつくことなく走破できる安心感と軽快感に富む操縦フィーリングは快適である。日本で走るなら、同社のスクランブラー 800で十分であると思うのも本音だがちょっと贅沢な気分と余裕のある走りが楽しめると言う意味でスクランブラー 1100は価値ある選択になるだろう。
⚫️足つき性チェック(ライダー身長168cm)
 | 実は両足の踵は僅かに浮いた状態だが足つきに問題はない。シート高は810mm。適度なアップハンドルで上体がスラッと伸びた自然体で乗れる。 |
⚫️ディテール解説
クリアなガラスレンズを採用した丸形ヘッドライトやタンクのデザイン手法がオーソドックス。デイタイム・ランニングライトも光る。スモークバイザーはオプション品。
マルゾッキ製φ45mm・フルアジャスタブル式倒立フォークのボトムにはブレンボ製4ピストンのモノブロックキャリパーがラジアルマウントされている。ボッシュ製9.1MPコーナリングABSも登載。
かなり細かなピッチで冷却フィン(次の写真参照)を備える空冷エンジンを登載。もちろん横置き90度L型ツイン。スクランブラーに相応しいチューニングが施されたOHC2バルブエンジンだ。
スイングアームの前方左片にマウントされたモノショック・ユニットはKYB製。プリロードと伸び側のダンピング調節機構がついている。
エンジン後方、リヤタイヤ直前を排気管が立ち上がる。リヤブレーキはφ245mmのシングルディスクローターにブレンボ製1ピストン・ピンスライド式キャリパーを採用。
テーパードタイプのパイプアップバーハンドルを装備。ゆったりと自然体な乗り味の演出に大きく貢献している。グリップヒーターはオプション品。 ホーンボタンは咄嗟の時に押しやすいベストポジションにある。上はディマースイッチ。パッシングは人指し指で扱う。右にあるのはモード選択に使用。ウインカースイッチはエンターキーを兼ねている。 | 赤い上のスイッチはエンジンキルスイッチ及び始動用セルスターター。下は横スライド式のハザードスイッチだ。 |
斬新かつ美しいデザインのデジタル液晶メーター。円形&楕円形の組み合わせとクロームメッキ仕上げがとても綺麗。
前後で段差の少ないロングのダブルシート。後席の両脇にツインアップマフラーが左右へはみ出ている。 シートは一体式で脱着できる。トレリスフレームはスチール製だがリヤ(サブ)フレームはアルミニウム製。 | シート下にはバッテリー、ABSユニット等を登載。ETC機器(オプション品)の右脇には、USB電源ソケットも備わっている。 |
排気系は一度1本に集合された後、再び2本のアップマフラーへ分配排出される。熱さ避けにアルミ製カバーを装備。◼️主要諸元◼️
全長/全幅/全高:2,190mm/895mm/1,330mm
シート高:810mm
軸間距離 :1,514mm
操舵角(左/右):34°/34°
乾燥重量:189kg
車両重量:206kg
原動機型式:デスモドュエ
原動機種類:4ストローク・デスモドロミック2バルブ、空冷
気筒数配列:L型2気筒
排気量:1,079cc
内径×行程:98.0mm×71.0mm
圧縮比:11.0:1
最高出力 :63kW(86ps)/7500rpm
最大トルク:88Nm(9.0kgm)/4750rpm
始動方式 :セルフ式
燃料タンク容量:15.0L(無鉛プレミアムガソリン)
燃料供給:電子制御燃料噴射、55mm径スロットルボディ、フルライドバイワイヤ
エキゾースト:2-1-2システム、ステンレス製ツインマフラー
燃料消費率:20km/L
1次減速比/2次減速比:1.850/2.60
クラッチ形式:湿式多板 油圧セルフサーボ/スリッパー・クラッチ機構付
変速装置/変速方式:6速リターン式
変速比:
1速:2.467
2速:1.765
3速:1.400
4速:1.182
5速:1.043
6速:0.958
フレーム形式:スチールパイプトレリスフレーム+アルミニウム製リアサブフレーム
キャスター/トレール:24.5°/111mm
タイヤサイズ(前/後):
120/70 ZR18(チューブレス)/
180/55 ZR17(チューブレス)
制動装置形式(前/後):
油圧式ダブルディスクブレーキ(ブレンボ製4ピストンM4.32モノブロックキャリパー)/
油圧式シングルディスクブレーキ(ブレンボ製1ピストン、ピンスライド式キャリパー)
懸架方式(前/後):マルゾッキ製倒立フォーク/KYB製モノショック
乗車定員 :2名
◼️ライダープロフィール
元モト・ライダー誌の創刊スタッフ編集部員を経てフリーランスに。約36年の時を経てモーターファンJPのライターへ。ツーリングも含め、常にオーナー気分でじっくりと乗り込んだ上での記事作成に努めている。