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プリマベーラS150ABS試乗|高速道路も意外とイケるくち。もちろん街での機動力も満点!


街が似合うコンパクトなベスパ……そんなプリマベーラに設定された特別仕様車がS150ABSだ。要所をダークブラッシンググレーで引き締めて、スポーティ感を増したルックスに仕立てられている。そこで気になるプリマベーラS150ABSを徹底紹介する!




REPORT●隅本辰哉(SUMIMOTO Tatsuya)


PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ベスパ・プリマベーラS150ABS……49万6800円

レッグシールドモール、ホーンカバー、フロントフェンダークレストを専用のダークブラッシンググレーカラーとし、スポーティな特別仕様らしさを醸すことに成功。

 ピアッジオの主力ブランドであるベスパにはボディサイズの違いによるスモールとラージという2つのレンジがあり、今回試乗したのはスモールと呼ばれるコンパクトクラスの人気モデルであるプリマベーラだ。このプリマベーラというネーミングの登場は1968年。当時の若者にとってエントリーモデル的な位置付けだったスモールだが、そのハイエンドバージョンとしてラインナップに加えられ、以来50年以上の長きにわたるロングセラーモデルへと成長した。




 現行プリマベーラの外観上におけるポイントは、ベスパのイメージリーダーとも言える946のデザインエッセンスがふんだんに盛り込まれていることに尽きる。たとえばレッグシールド前面の意匠やサイドパネルのプレスラインなどがそうで、優雅さと快適性を併せ持ったスタイルであることは誰の目にも明らかだ。




 そして150ccモデルに設定された特別仕様車がプリマベーラS150ABSとなり、専用のグレーステッチブラックシートに加え、ホイール、レッグシールドモール、ホーンカバー、フロントフェンダークレストをダークブラッシンググレーで統一。引き締まったスポーティなスタイリングを実現し、コミューターとしての軽快感をいっそう際立たせることに成功している。

 コンパクトなボディを右へ左へと切り返し、街を軽快に走り抜ける……それがベスパ・スモールレンジのイメージとして語られる定説だろう。じっさいプリマベーラの登場以前に人気を博したLXシリーズはクイックなハンドリングが際立ち、ともすればちょっぴりナーバスな印象を与えかねないほど切れ込みの強いハンドリングが特徴のひとつだった。




 しかしプリマベーラではハンドリングの軽快感はそのままに、クイックさだけを巧く抑え込むことで切れ込みが強いというイメージを払拭することに成功している。つまり、より万人に対して不安なくベスパ・スモールレンジを楽しんでもらえる味付けがなされているということだ。




 現行のプリマベーラには150cc/125cc/50ccという3種の排気量バリエーションが用意されていて、それぞれの排気量ごとに異なる印象だというのを覚えている。このあたりは「やるなピアッジオ!」という感もあるのだが、今回は改めて150ccバージョンに乗る機会を得た。しかも特別仕様車のプリマベーラS150ABSである。


 150ccエンジンを搭載する歴代ベスパの印象は、125ccほど回さなくても(高回転を多用しなくても)同等以上の加速感が得られるところがポイントだ。それにぶん回したからといって、最高速が大きく伸びたりするような味付けにはなっていない。ギヤ比などのセッティングもあるだろうが、あくまで開けなくても実用域で十分な加速感が得られというのが150ccバージョンに共通したキャラクターである。そこはプリマベーラS150ABSでも同様だと感じられた。




 まず走り出してすぐに前後12インチとなったホイールサイズによる安定感を感じることができ、ハンドリングもクイックさなど微塵も感じさせないほどに調教されていることがわかる。それでも行きたい方向に顔を向けてアクセルを戻せば、それをきっかけに旋回が始まるので、実にコントローラブルだと感じるだろう。




 例えば幹線道路などを一定の速度で走行中、ステップの踏み変えや、掌でグリップを軽く押し込んでやるようなモーションだけで、瞬時に車線変更が行えるほどの軽快感も健在だ。どのように旋回のきっかけを作るかは慣れた方法や好みの方法で構わない。きっかけさえ作れば向きを変えることも車線を移ることも自在。ベスパ・スモールレンジらしい軽快なハンドリングを楽しめる。




 また今回は高速道路の試乗もでき、100km/hまでの速度上昇感も、追い越し加速もコンパクトで軽い車体には必要十分なパワーだと感じられた。とくに高速走行時のアクセルオフから再加速というシーンでは、力強い走りを堪能でき、もはや150ccクラスにありがちな「なんとか高速だって走れる排気量だから」なんて表現はまったく当てはまらない。むしろ積極的に高速走行も楽しめるコンパクト・ハイスピードランナーとして、ステージを選ばず走りを存分に楽しめるお勧めな一台だ。

新デザインのLEDヘッドランプは、初代プリマベーラ以来続く伝統のクロムメッキ仕上げとされたヘッドライトトリムリングと組み合わされる。
レッグシールド前面の意匠はホーンカバーデザインなどにより、946ゆずりのテイストに満ちている。車幅灯には左右とも、3連でLED球を採用。


デザイン的にはスタンダードなプリマベーラと共通の意匠だが、グッと引き締まった印象を与えるダークブラッシンググレーホイールを採用。
ベスパ伝統の片持ち式フロントサスは現行プリマベーラでも健在。フロントブレーキ操作中のフロントロック時のみに作動するABSを標準で装備。


140km/hまで目盛られた見やすく大きなスピードメーターをセンターに配し、手前には液晶とインジケーター類が並ぶインパネ。ブルーの照明が美しい。

クロムメッキ仕上げのトリムが施され、高級感あふれる仕様のスイッチまわり。上から液晶表示切り替え、スターターの各スイッチを備える。
左グリップ部には上からヘッドライトLo/Hi切り替え、ウインカー、ホーンの各スイッチを配置。グリップにはベスパのロゴ入りタイプを採用。


ヒューズ類が集約されたフロントグローブボックスは、ちょっとしたものの収納に便利で、スマートフォンなどの電子機器の充電が可能なUSB給電ポートも装備。

特別感を演出する専用のグレーステッチブラックシートを採用。腰高なポジションながら、巧みなシート形状によりまずまずな足つき性を発揮。
シート下の16.6L容量メットインスペースに加え、シート前端部に引き出し式の荷物フックも備える。フロントグローブボックスと合わせて収納力は十分。


通称バケツと呼ばれるメットインボックスは脱着式になっていて、外せばご覧のとおりエンジンに容易にアクセスできるので整備性は抜群だ。
シートを開けると前端のヒンジ付近にヘルメットフックを装備しているので、左右2箇所を利用することでシート下スペースを有効に活用することも可能。


高音域がよく抑えられ、歯切れのいい低音を奏でるマフラー。十分な消音性能なのはもちろんだが、パワー&トルクの面でも貢献しているのは間違いない。
パワーユニットには、最新の電子制御燃料噴射システム(PFI)を備えたi-GET/空冷単気筒4ストロークSOHC3バルブエンジンを搭載する。


アクティブセーフティ面で高い効果を発揮する高輝度LEDを採用し、台座部分にメッキをあしらったテールランプがリヤビューを印象付ける。

全長/全幅/全高:1,852mm/680mm/ーーmm


軸間距離/最低地上高:1,334mm/ーーmm


シート高:790mm


車両重量:130kg


エンジン:4ストローク・空冷単気筒/SOHC・3バルブ


総排気量:155㎤


最高出力:9.5kW〈12.9PS〉/7,750rpm


最大トルク:12.8N・m〈1.3kgf・m〉/6,500rpm


燃料供給装置:電子制御燃料噴射システム(PFI)


始動方式:セルフ式


燃料タンク容量:7L


トランスミッション:自動無段階減変速(CVT)


クラッチ形式:自動遠心クラッチ


フレーム形式:スチールモノコック


ブレーキ形式(前/後):油圧式200mmシングルディスクABS/機械式140mmドラム


タイヤサイズ(前/後):110/70 - 12"、120/70 - 12"


乗車定員:2名
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