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グラマラスなフルカウルをまとい、前後に大径の17インチホイールを装備する。これで50ccの原付だというのだから、ホンダ「NS-1」が只者ではないことは容易に想像できる。しかもエンジンは2ストなのでバカっ速いし、ガソリンタンク部を24Lの荷物収用スペースとするなど、実用性も重視された“今までにない(今後もない!?)”貴重なレプリカモデルだ。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
17インチの足まわりが街に峠に頼もしい
「斬新」「個性的」という月並みなワードを超越したともいえるNS-1は、既存のレプリカモデルの概念を見事に打ち破った、まったく新しいカテゴリーのモデル。
NS-1、通称「エヌワン」が発売されたのは、1991年(平成3年)。カウル付きのレーサーレプリカブームが落ち着きを見せ、今度はカワサキゼファーなど、カウルを脱ぎ去ったネイキッドバイクに注目が集まっていた頃だった。
NS-1は、1990年に発売されたフルサイズのゼロハン、「ヤマハTZR50」のライバルとしてデビュー。外観は、当時爆発的な人気を誇っていたNSRシリーズのレーサーレプリカフォルムを採用。グラマラスで大胆なカウル類、前後17インチの大径ホイールなど、「本当にこれが50ccなの?」と思わせる、ビッグサイズのボディもセールスポイント。
フレームはスチール製のツインチューブダイヤモンド式。各部のスリム化を図り、大柄のボディながら、92kgという重量を実現している。
7.2PSを発揮するパワフルな水冷2ストエンジンと、250ccクラス並のビッグな車体に注目
250ccクラスに迫る、ビッグサイズのNS-1。前後12インチのNSR50に比べ、ゆとりのあるポジションを獲得。CDIを交換して速度リミッターを解除し、スポーツチャンバーを装着すれば、容易にリッター200PS(馬力)を実現するのも、潜在能力の高い、2ストエンジンならではの特徴だ。
バイク全般が4ストに移行されたことにより、1998年モデルをもって生産終了したが、絶版後も人気は衰えることなく、現在でも「貴重な2ストモデル」として高い人気を誇っている。
ガソリンタンク部には、24Lの大容量スペースを確保!
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NS-1は、ストリートからレースまで幅広い人気を誇っていたNSR50(1987年発売)とは決定的に異なる点がある。それは“通常の”ガソリンタンクの部分を、荷物収納スペースとしていること。
「センタートランク」と呼ばれるこのスペースは、“トランク”という名の通り、小物入れ程度のものではなく、標準的なフルフェイスヘルメットも収まる24Lという大容量。ミッション車ならではのスポーツ性と、ミッション車としては類稀なる利便性を両立させた、これまでにないコンセプトを確立している。
同クラスのスクーターにも、負けず劣らずの収納スペースを確保したNS-1。収納スペースを充分に確保しつつ、スリムでスポーティーなデザインも両立させているのがポイントだ。
なお、ガソリンタンクはシート下に配置し、給油口をリヤカウル上部に設置。マスの集中化を狙い、ノーマルもしくは社外のガソリンタンクをセンタートランクに移設(要加工)するハイエンドユーザーも存在する。
レーサーレプリカ然とした正統的な外観を持ちながら、どのカテゴリーのモデルとも異なる立ち位置に存在した稀有なマシン、それがNS-1だ。
前後ディスクブレーキ等、強靭な足周りを装備したNS-1
フロントフォークのインナー径は、NSR用の30φを超える31φという大径サイズを採用。前後ブレーキは、穴開きディスクローターを採用したディスク式。
17インチの前後ホイールは、軽量かつスポーティーなデザインのキャストタイプとし、タイヤは前90/80-17、後100/80-17のチューブレスタイプを組み合わせている。
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NS-1は大きく分けて、「前期型」と「後期型」に分類。両車の大きな違いは、下記の通り。
●前期型(1991-1994年)の特徴
・NSR250風の角型ヘッドライト
・電気系がアナログ(※注1)
●後期型(1995年-1998年)の特徴
・VFR400R風のデュアルヘッドライト
・電気系がデジタル(※注1)
・インテークチャンバーを新設
・リードバルブ形状の変更
※注1:後期型のデジタル式よりも、前期型のアナログ式のほうがチューニングの対応幅が広く、エンジンカスタムには向いていると指摘するユーザーやカスタマーが多数。
他の2ストマシンとNS-1、エンジンの仕様を比較!
NS-1用エンジンの基本設計は、NSR50(12インチホイール)やNS50F(17インチホイール)、MBX50(18インチホイール)などと同じ。AC08系エンジンの仕様など、各2ストマシンとの違いをチェックしてみよう。
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※1 パワーウエイトレシオ:車両重量÷最高出力=1馬力が負担する重さ
※2 AC08系ではないため参考値
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※2 AC08系ではないため参考値
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※3 89年型~
●NS-1の主要スペック
型式:A-AC 12/全長:1905mm/全幅:670mm/全高:1080mm/乾燥重量:92kg/燃料タンク容量:8.0L/エンジン型式:AC08E/形式:水冷2サイクル単気筒49cc/圧縮比:7.2/ボア×ストローク:39mm×41.4mm/最大出力:7.2PS/10,000rpm/最大トルク:0.65kgm/7,500rpm/変速機:6速リターン/点火方式:CDI/タイヤサイズ:前90/80-17 後100/80-17/当時の発売価格当時:27万9000円(初期型/最終型は29万9000円)
どこまでアグレッシブになる!? NS-1の「潜在能力」は?
センタートランクなどの特殊な設計により、レース車両としては普及しなかったNS-1。ただしエンジンは、NSR50やNS50F、また競技用のNSR MiniやNS50Rにも採用の、超パワフルなAC08系を搭載している。
頑丈かつ潜在能力の高いこのエンジンは、出荷時こそ自主規制の7.2PSに抑えられているものの、チャンバーやCDIを社外品に交換するだけで、いとも簡単に10PSを超えてしまうのが大きな特徴。
NS-1は50ccながら、車両代金+4万円から5万円程度のチューニングで10PSマシンに変身するという、極めてコストパフォーマンスに優れたマシンでもあるのだ。
4ストミニよりも格段に安く、手軽にハイパワーがゲットできるNS-1。チャンバーやCDIの他、エンジン用パーツも豊富だから、さらなるパワーアップを望む人はピストンとシリンダーを大径化するボアアップという手法もあり。
市販のキット(70cc前後が一般的)にビッグキャブ等を組み込めば、オーバー20PSが実現する(一般的にビッグキャブ装着時はクリアランス確保のため、センタートランクの底などを切削加工する必要あり)。
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NS-1の兄貴分といえば、スペインホンダが発売していた『NSR75』。同車はNS-1にNSR80用エンジンを積み、タンデムステップ&タンデムシートを装着。加えてセンタートランク部に、ガソリンタンクを設置しているのがポイントだ。
NS-1用フレームには、NSR80用エンジンがボルトオン装着可能(ただし要ハーネス交換)。NSR80用エンジンはノーマルでも12PS、チューニングシリンダー等を使えば、80ccのままでもオーバー20PSを絞り出す潜在能力の高さが自慢。
各パーツメーカーから発売のNSR80用ボアップキット(90ccから100cc程度)を使えば、2スト250をもカモる、怒涛のNS-1モンスターが誕生する。この場合、ブレーキや足周りの徹底強化をお忘れなく!
写真のシリンダーは、すべてNS-1用。写真左からノーマル、社外65ccボアアップ用、社外72ccボアアップ用。
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ロードレースでも活躍する「モリワキ」からは、かつて『MH80R』というNS-1ベースの市販レーサー(GP80クラス)が発売されていた。
MH80Rは、お金をかけずに、誰でもレースを楽しむことができるマシンを目指してプロデュース。NS-1のフレームや足周りを強化し、レース用カウル類、専用アルミガソリンタンク(センタートランク部に配置)等を装備しているのが特徴だ。
注目なのは、25馬力というパワフルなCR80R(モトクロス競技用)用エンジンを搭載している点。
CR80R用エンジンへの載せ替えは、マウント部の位置が異なるためワンオフのカラーや切削・溶接などかなり大掛かりな加工が必要。
珍しい例としては、MH80R用アルミガソリンタンクをあえてNS-1に装着し、マスの集中化を狙う走り重視のユーザーも存在する。
ホンダ NS-1 歴代モデルをチェック!
1991年モデル NSR250風の角型ヘッドライトを装備
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1992年モデル
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1993年モデル
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1994年モデル
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1995年-1996年モデル VFR400R風のデュアルヘッドライトに変更
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1997年モデル
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1998年(最終)モデル
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