モダンなデザインと優れた走行性能で人気のV60にPHVモデルが追加された。今回試乗したのは2.0ℓターボに電気モーターを組み合わせたT6 Twin Engine AWDだ。
優れた燃費性能と加速性能を持つ本モデルの魅力に迫ってみよう。
REPORT◉吉田拓生(Takuo Yoshida)
PHOTO◉神村 聖(Satoshi Kamimura)
※本記事は『GENROQ』2019年9月号の記事を再編集・再構成したものです。
新世代ボルボという言葉が闊歩し、SUVモデルが幅を利かせる昨今のボルボ・シーンだが、イェーテボリの伝統に照らし合わせるならば、彼らが最も得意としているスタイルはエステートであるに違いない。
それを裏付けるように、昨年の秋にデビューしたボルボのミドルサイズ・エステートモデルであるV60T5の仕上がりは素晴らしく、日本市場における売れ行きも好調である。今年春にV60クロスカントリーもデビューし、厚みを増すV60ファミリーに、この度真打ともいえるPHVモデルであるV60T6ツインエンジンAWDが加わった。
先にデビューしているT5は254㎰を発揮する2.0ℓ直4ターボによるFWDモデルだったが、それと比べるとT6はかなり凝ったパワートレインとなる。253㎰のガソリン4気筒ターボにはスーパーチャージャーもプラスされ、ガソリンエンジンは前輪のみを駆動するが、フロントにスターター・ジェネレーター・モーター、そしてリヤに87㎰を発揮する駆動モーターを付け加えることでAWD化とPHV化を果たしているのである。
T6の機構はT8と基本的に同一だが、T8は4気筒エンジンの最高出力を318㎰まで引き上げることで差別化していることになる。
という説明を聞いてしまうと、ずいぶんと煩雑で頭の配線がショートしそうな人もいるかもしれないが、ともあれ新たにデビューしたV60T6をドライブしてみると、難しいはずの駆動システムは極めてスムーズに立ち回る。(T5比で)+75㎏になる重量差と賢いAWDシステムによって、T5との価格差(260万円)に見合ったしっとりとした走りの質感が込められているのである。
走りはじめは電気駆動のみで、どこでガソリンが介入するかは走行モードによって異なる。ひとつのメーターの中で電気とガソリンユニットの作動状況や残量を確認できるディスプレイも非常にわかりやすい。V60T6ツインエンジンAWDのバッテリー容量は30AhでEV走行できる距離も44.1㎞あるが、最近の仕様変更により34Ahに容量がアップされている。このため普段使いは自宅充電によるEV走行のみで、長距離のみハイブリッドとして力強く走る使い方が可能になっている。
つまり使い勝手としてはプリウスPHVのような捉え方をすればいいわけだが、そこに新世代ボルボのスタイリッシュな外観と同社ならではの盤石の安全装備、そしてたっぷりと確保された荷室があるのだから、容易にライバルすら思いつかない。
ボルボは2019年以降に発売するすべての新型車を電動化すると宣言していることも含めれば、V60シリーズの真打はこのT6ということで間違いないのである。
SPECIFICATIONS
ボルボV60 T6ツインエンジンAWDインスクリプション
■ボディサイズ:全長4760×全幅1850×全高1435㎜
ホイールベース:2870㎜
■車両重量:2050㎏
■エンジン:直列4気筒DOHCターボ+スーパーチャージャー
ボア×ストローク:82×93.2㎜
総排気量:1968㏄
エンジン最高出力:186kW(253㎰)/5500rpm
エンジン最大トルク:350Nm(35.7㎏m)/1700~5000rpm
■モーター:交流同期電動機
モーター最高出力:Ⓕ34kW(46.2㎰)/2500rpm Ⓡ65kW(88.4㎰)/7000rpm
モーター最大トルク:Ⓕ160Nm(16.3㎏m)/0~2500rpm Ⓡ240Nm(24.5㎏m)/0~3000rpm
■トランスミッション:8速AT
■駆動方式:AWD
■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチリンク
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
■タイヤサイズ:Ⓕ&Ⓡ235/45R18
■環境性能(WLTCモード) 燃料消費率:12.3㎞/ℓ
■車両本体価格:749万円