PSAグループのプレミアムブランドたる「DS」。その最新作にして第二弾がDS3クロスバックだ。新しいCMPプラットフォームを採用した小さくてもプレミアムで個性的でスタイリッシュで……という期待の新星だ。このDS3クロスバックをジャーナリストの世良耕太が試乗した。
TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
DSと聞くと筆者などはすぐフォーミュラEを思い浮かべてしまうが、世間とは感覚がずれている自覚はある。シトロエンの上級ブランドとして誕生したDSは、個性を重視するカスタマーに向け、技術的な革新とラグジュアリーな見た目を身上とする。つまり、見た目だけで中身が薄っぺらであることを良しとしない。
DSが身上とする「革新」を象徴するのが電動化技術で、その技術を磨いているのがフォーミュラEというわけだ。DSはパワートレーンの独自開発が認められたシーズン2(2015-2016年)からフォーミュラEに参戦し、シーズン5(2018-2019年)にチームタイトルとドライバーズタイトルのダブルタイトルを獲得。電動化技術の技術力の高さを証明した。
そのDSブランドの最新モデルが、DS 3クロスバックだ。DSブランドの2本柱のうち、「美の追求」も大いに気になるが、技術的な革新の方を先に押さえておこう。
DS 3クロスバックは、グループPSA(プジョー、シトロエン、DSオートモビル、オペル、ヴォクソール)の次世代B、Cセグメントをカバーする新しいプラットフォーム、CMP(Common Modular Platform)を採用したモデルの第1弾である。プジョー308や3008に5008、シトロエンC4スペースツアラーやDS 7クロスバックなどのC、DセグメントはEMP2が担い、車両サイズで使い分けることになる。
CMPの特徴のひとつは、電動化を織り込んだ設計になっていることだ。現時点でのDS 3クロスバックのパワートレーンは内燃機関のみのラインアップだが、2020年に電気自動車のE-TENSEを追加することが発表されている。WLTPモードで300+αkmの航続距離を担保するだけのバッテリー容量を確保しながら、内燃機関仕様と同等の室内空間とトランクスペースを確保しているという。最初から電動化を考えた設計になっているがゆえの芸当だ。電動化に関しては、フォーミュラEで鍛えた技術が生かされることになる。
DS 3クロスバックの全長は4120mmで、典型的なBセグメントのディメンションである。サスペンションはフロントがストラット、リヤはトーションビームで、このクラスの標準的な構成だ。勝手にこのセグメントでは標準的ともいえる、ヒョコヒョコした落ち着きのない動きを覚悟していたが、まんまと裏切られた。動きはしなやかであり、ひとクラス上のセグメントを引き合いに出してもいい勝負をするだろう。見た目の印象どおり、乗り味もラグジュアリーでありエレガントだ。走行時の静粛性もひとセグメント上のレベルである。
さて、DS 3クロスバックのもうひとつの本題である「美」にテーマを移そう。エクステリアもインテリアもアバンギャルドな造形や仕掛けのオンパレードだ。まず、クルマに近づくとドアに隠れていたハンドルがひょこっと起き上がって出迎えてくれる。インテリアはダイヤをモチーフにした造形で満たされている。ダッシュボード中央の空調ルーバーとインフォテインメントシステムの操作パネルは、ダイヤを5つ組み合わせてWを形成している。その下にエンジンのスタート/ストップボタンがあるが、これもダイヤモンドシェイプだ。
押しつけがましいばかりのダイヤの反復なのに、嫌味は一切ないし、むしろ清々しいほどにラグジュアリーで、エレガントですらある。もう少しダイヤモンドシェイプを探すと、シートのステッチパターンがそう。運転席に座って天井を見上げると、ルームランプのスイッチまでもダイヤで統一されている。このダイヤ柄はパリにあるルーブル美術館のピラミッドがモチーフだそうだ。
エクステリアやインテリアが発散するラグジュアリーかつエレガントなムードが気に入る。取り回しの良さそうなサイズもいい。これが、DS 3クロスバックを購入する際の決め手になるだろうが、「なんだよ、格好だけかよ」と落胆することにはまずならない。技術がしっかり支えているおかげで、気持ち良く付き合うことができる。惚れ込むこと請け合いだ。
DS3 CROSSBACK Grand Chic
全長×全幅×全高:4120mm×1790mm×1550mm
ホイールベース:2560mm
車重:1280kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式
駆動方式:FF
エンジン
形式:1.2ℓ直列3気筒DOHCターボ
型式:EB2PureTec130
排気量:1199cc
ボア×ストローク:75.0×90.5mm
圧縮比:10.5
最高出力:130ps(96kW)/5500rpm
最大トルク:230Nm/1750rpm)
燃料タンク容量:44ℓ
燃料:無鉛プレミアム
トランスミッション:8速AT
JC08モード燃費:16.9km/ℓ
WLTCモード燃費:15.9km/ℓ
市街地モード:12.8km/ℓ
郊外モード:15.9km/ℓ
高速道路モード:17.8km/ℓ
車両本体価格:404万円