スカイラインに搭載されたプロパイロット2.0。ハンズオフ機能が注目を集めているなかで、筆者が賞賛を送りたいのはヘッドアップディスプレイの表示方法だった。
TEXT:安藤 眞(ANDO Makoto)
日産スカイラインがマイナーチェンジを行った。現行のV37型は、デビューした際にハイブリッド専用車となったり、途中でダイムラー製のメルセデス・ベンツ用2.0ℓダウンサイジングターボを搭載したりと、いささか迷走している感があったが、新型には単純明快なV6ターボが加わり、スカイラインらしいキャラクターが戻ってきたように思える。
V6ターボ以外のもうひとつの目玉は、先進運転支援技術の「プロパイロット2.0」。これまでの「プロパイロット」に対し、高速道路や自動車専用国道の同一車線でハンズフリー運転ができるようになったのが、大きな違いである。
メカの詳細については、8月30日刊行予定のモーターファン別冊ニューモデル速報『新型スカイラインのすべて』を参照いただくとして、ここでは少し違った角度から観察したいと思う。
プロパイロット2.0は自動運転ではないから、ハンズフリー運転中も、安全管理の責任はドライバーにある。となると、前方を注視すると同時に、システムの作動状態にも注意を払っておく必要がある。
そこで新型スカイラインには、日産の国内向けモデルとして初めて、ヘッドアップディスプレイを搭載。フロントガラス上にプロパイロット2.0の作動状態を知らせるグラフィックスが投影されるようになっており、前方から目をそらすことなく、システムの稼働状態が把握できるようになっている。
ハンズフリー走行が可能な場合、ディスプレイ上のクルマ型アイコンが青色に、不可の場合は緑色に変わる。形状ではなく色の違いにしたのは、ドライバーが直感的にわかるようにするためだという。
快哉を叫びたいのは、アイコンの色調が、カラーユニバーサルデザイン(CUD)に則ったものだということ。人の色覚には、RGB(Red/Green/Blue)の分光感度が均等な「C型(一般色覚)」のほかに、赤の感度が弱い「P型」、緑の感度が弱い「D型」、青の感度が弱い「T型」、色に対する感度がまったくない「A型」の5種類があり、一般にC型以外の特性を持った人を「色覚異常」と定義している(近年は『色覚多様性』との呼称が推奨されているが、本稿では便宜上『色覚異常』を使用する)。
色覚異常は日本人男性で特異に多く、発現率は約5%。すなわち、20人にひとりは、「特定の色が見分けられない人」ということになる。
ところがこれまでは、色覚異常者に配慮した色使いが行われることは、ほとんどなかった。かく言う僕も、P型色覚の知人から指摘されるまでは、まったく意識することはなかったのだが、あるとき「○社のカーナビ、設定ルートが水色とピンクで表示されるやろ? あれ、僕にはまったく見分けがつかんねん」と言われ、色覚異常が身近な問題であることに気付かされた。
しかも、よくよく話を聞いてみると、ほんの少し色使いを変えるだけで、対応できるというではないか。知ってしまった以上は行動あるのみで、以来僕は、取材で表示色の話が出るたびに、「それはCUDに準拠していますか?」と聞くようになった。
それが奏功したのかどうかは定かではないが、新型スカイラインの取材で「CUDの教科書を買って勉強し、『色のシミュレーター』を使って確認しました」という答えを聞いたときには、自分がやってきたことは無駄ではなかったと思えて嬉しくなった。
『色のシミュレーター』とは、C型色覚者向けに作られたスマートフォン用の無料アプリで、それぞれのタイプの色覚で、色がどう見えているのかをディスプレイ上で再現するもの。表示色を担当している設計者だけでなく、プレゼンテーションの資料を作る際にも役に立つので、ぜひみなさんに使っていただき、「誰でもわかりやすい色使い」の普及に役立てていただけたらと思う。