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信念に基づいたメカニズムの研鑽


内燃機の効率を徹底的に高めるSKYACTIVガソリン&ディーゼルエンジンや、オリジナリティ溢れる世界観と美意識を追求する魂動デザイン、人馬一体をさらに進化させるSKYACTIV-Vehicle Architecture。MAZDA3はマツダ独自の哲学に則って開発され、その信念はメカニズムにも貫かれ磨き上げられている。




REPORT●安藤 眞(ANDO Makoto)


図版解説●安藤 眞(ANDO Makoto)/編集部

骨盤の角度に注目し自然な姿勢で座れるシート

人間の骨格、特に骨盤の角度に着目し、自然な着座姿勢を取れる形状に設計されたフロントシート。さらに振動エネルギーの伝達もシート取付部から骨盤まで遅れなく滑らかに伝える構造とされている。

シート前部のチルト機構で快適性と操作性を改善

シートクッション前部にチルト機構を搭載。体格に合わせて大腿部のサポートを最適化することで、ペダル操作時の快適性と操作性を改善している。

色の差を感じやすい白色光の公差を抑え統一感を追求

室内のイルミネーションは、室内空間の全体でバランスを取りながら統一することに注力。マツダ3のイルミネーションはシンプルで美しい白色がセールスポイントのひとつだが、人間の目は「白」を見分ける感度が他の色より高いので、色を合わせることは極めて難しい。そこでLED照明の公差を従来の3分の1に設定し、照明の影響による色味の違いを感じないレベルに仕上げている。また、ルームランプやマップランプは光の質にこだわっている。波長の分布を太陽光に近付けることで、マツダ3のバーガンディの赤内装や服の色などが自然に美し

使いやすさが高められたセンターコンソール

カップホルダーを前方に配置することで自然な姿勢の所作を可能とした。また大型のアームレスト(コンソールリッド)も“カラクリ”構造で開閉が容易。

操作フィーリングにもこだわる

スイッチは操作する位置によって感じ方が変わるため、配置する場所ごとに操作荷重の特性を変え、あくまで「人の感じ方」が同じになるよう数多くの試作によるテクストを繰り返し、つくり込んでいる。

視覚的ノイズを徹底的に排除してデザインの完成度を高める



美しいデザインを構築する視覚的ノイズ低減のため、キーシリンダーの鍵穴もドアノブの裏側に巧妙に隠されている。

デザインの統一感と視認性を融合させる

“人馬一体のHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)”の旗印のもと、UI(ユーザーインターフェース)の規則性をつくり込むことが、マツダ3でのミッションとなった。ここでの成果が、ブランド表現としてこれからのマツダ車に織り込まれていく。狙いとしては、自然に情報を受け取ることができ、自然に操作できる軸感を仕立てること。3連のメーターパネルでは、エンジニアは視認性の観点からの遠方設置を希望し、デザイナーは象徴性の観点から近くへの設置を望むが、左右のメーターをドライバーに正対させ、幅を前モデルのアクセラから60㎜拡大することで遠方であっても見やすく象徴性を感じやすい設定とした。液晶のスピードメーターは左右の物理メーターとの違和感のなさに配慮しながら、メカ感を表現できるものとするつくり込みを実施。ワイド化されたセンタークラスター上部のモニターでは横方向に広がっていた選択肢を縦方向に統一。前進感のある操作としているが、単にスタティックな検討だけでなく、操作感、動き、インスタラクションの観点からも検討がなされた。階層が進む際にも選択時に奥から表示が出てくるようなイメージを実現。HMIで使われている文字・数字をすべて同じフォントに統一している。(REPORT●松永大演)

1310MPa級高張力鋼板を骨格部材として世界初採用

980MPa以上の超高張力鋼板の使用比率を先代モデルの約9%から約30%へと拡大。さらに1310MPa級超高張力鋼板の冷間プレス部品を自動車の骨格部材として世界で初めて採用。軽量かつ高強度なボディを実現した。

適材適所に施された振動エネルギーの低減策

ボディ剛性を向上させる構造用接着剤のほかに、パネル部の高歪エネルギー部位へ減衰接着剤を適用。骨格の高歪エネルギー部位には減衰節を設定することで、効率的に振動エネルギーを低減している。

入力の伝達経路の各部を環状骨格化

フロントダンパーと対角に位置するリヤダンパー間の力の伝わる経路の骨格を「多方向に環状構造」化して剛性を向上。

新たな発想で開発された減衰節

振動エネルギーを集めて吸収(減衰)するという新しい考え方を織り込んだ「減衰節」を採用。三面を溶接していた骨格補強部材の残る一面を減衰接着剤で接着することで振動を抑え、収束させる。

内装の吸音性能を向上し室内の反射音を効果的に吸収する

トップシーリング(天井)とフロアマットは吸音性能を向上。細い繊維を緻密化することで、音(=空気の振動)を繊維との摩擦や繊維そのものの内部損失として熱エネルギーに変換し、効率よく騒音を吸収する。

設置位置の変更でパワフルな音を実現

オーディオシステムはスピーカーの配置を一新。従来のスピーカーは振動しやすいフロントドア下部に付いていたが、共鳴の腹となるカウルサイドに低域再生専用となるウーファーを設置。低音の再生能力を向上すると同時に、外部への音漏れや、ドアの遮音性能も向上させている。

各部の開口部面積低減で音の透過を抑制

遮音性に大きく影響するドアパネルやボディパネルに開けられた穴を排除もしくは縮小することで音の透過を抑制。特にフロントドアについてはスピーカー穴の排除とインナーパネルとドアトリムの二重壁を構築して遮音性が高められた。

空気の流れを阻害せず音を低減させる構造

ドア開閉時などに車内の空気を抜くための穴である、エキストラクター前に吸音ダクトを新設定したほか、ダクトの形状と材質の工夫により、空気の流れやすさと音の侵入抑制を両立している。

より静かな空間の構築と鮮明に音を届ける工夫

各種の音響対策によりグラフ中の破線のアクセラに比べ実線のMAZDA3は、特に低周波領域でダイナミックレンジが拡大されている。また、中高音域を担当するツイーターとスコーカーは、インパネ上からフロントドアの付け根へと移動している。フロントガラスに音が反射しないようにするための措置で、直接音を耳に届けることで残響感をなくし、音の鮮明度を向上させている。

意のままに走れる操縦性を求めた足まわり

リヤ:トーションビーム式サスペンション
フロント: マクファーソンストラット式サスペンション


マツダが追求する「意のままのコントロール性」をより精密に、自然に楽しめる操縦安定性の実現のため、フロントのマクファーソンストラット式を継承・進化させつつ、リヤには新開発のトーションビーム式を採用した。

俊敏に的確に反応するサスペンション

入力に対して動かしたい方向にサスペンションが適切に動くよう球面形のブッシュ内部構造を採用。また、ロワアーム前側のブッシュとロワアームのボールジョイントの前後方向の距離を縮め、横方向の入力に対する剛性をアップ。遅れのない素早い伝達をサポートする。

新工法を採用した高性能トーションビー

リヤのトーションビームには、一般的な単純なO形状に成形されたパイプ(上)から、新工法(下)によって中央と外側でビーム径を変えた新構造を採用。操作に対する応答性向上に効果的な、タイヤ取付部の剛性が効率良く高められている。

応答性を高めるアーム角の拡大

上下方向の入力を遅れなく早期に増加させてサスペンションを作動させるため、アーム角を拡大。タイヤは上下方向の入力を吸収して滑らかな入力に変換しつつ、しっかりとしたトレッド面によって連続的で滑らかな応答性を実現した専用開発品を装着する。

ドライバーの感覚にマッチする制動

ブレーキのチューニングも「人間の持つバランス保持能力の発揮」をコンセプトに実施。ブレーキが効き始めるタイミングや効きの増え方がドライバーの期待値と合うように、ブースターのアシスト特性や各部品の特性をつくり込んでいる。

人間工学に基づいて操作性を向上

ペダルタッチは踏み応えをしっかり感じる特性になっている。人の脚は伸ばす方向に強い筋肉を持っているため、踏みごたえは多少、大きくても疲労はしにくい。そこでブレーキを緩める際にも、踏み込む力を弱めることで調整できるよう反力を設定。つま先を持ち上げる弱い筋肉にあまり仕事をさせないことで、操作感の向上と疲労の軽減を行なっている。

各部が時間軸で相互に連携し、路面入力を滑らかに伝達する

従来のサスペンションは乗り心地を良くするために、ボディ(ばね上)に伝わる入力の大きさ(ピーク値)を低減するというのが一般的な考え方。しかしMAZDA3では入力が伝わる時間軸に注目し、同じピークの入力でも、時間を長く使って振動を吸収することで滑らかな動きとする、新たな考え方のフットワークを採用。このためにボディやタイヤなどを単に柔らかくするのではなく一部を硬くし、すべての部分を協調させて動かすことでコンセプトを実現している。

搭載エンジンは3タイプ4種

MAZDA3に搭載されるエンジンは合計4種類。1.5ℓと2.0ℓガソリンのSKYACTIV-G、ディーゼルは1.8ℓのSKYACTIV-D1.8。遅れて登場する、新たな燃焼方式を採用した新世代ガソリンエンジンであるSKYACTIV-Xに関しては4ページ〜の試乗記が最新情報となる。

SKYACTIV-D 1.8


■SKYACTIV-D 1.8


エンジン型式:S8-DPTS


排気量(㏄):1756


種類・気筒数:直列4気筒ディーゼルターボ


弁機構:DOHC16バルブ


ボア×ストローク(㎜):79.0×89.6


圧縮比:14.8


最高出力(kW[㎰]/rpm):85[116]/4000


最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):270[27.5]/1600-2600


使用燃料:軽油


燃料タンク容量(ℓ[2WD/4WD]):51/48
SKYACTIV-G 2.0


■SKYACTIV-G 2.0


エンジン型式:PE-VPS


排気量(㏄):1997


種類・気筒数:直列4気筒


弁機構:DOHC16バルブ


ボア×ストローク(㎜):83.5×91.2


圧縮比:13.0


最高出力(kW[㎰]/rpm):115[156]/6000


最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):199[20.3]/4000


使用燃料:レギュラー


燃料タンク容量(ℓ):51
SKYACTIV-G 1.5


■SKYACTIV-G 1.5


エンジン型式:P5-VPS


排気量(㏄):1496


種類・気筒数:直列4気筒


弁機構:DOHC16バルブ


ボア×ストローク(㎜):74.5×85.8


圧縮比:13.0


最高出力(kW[㎰]/rpm):82[111]/6000


最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):146[14.9]/3500


使用燃料:レギュラー


燃料タンク容量(ℓ[2WD/4WD]):51/48

急速多段燃焼で静音・低燃費に

SKYACTIV-D1.8は2.2に先行採用された超高速応答のマルチホールピエゾインジェクターを搭載。このインジェクターは、圧力センサーを内蔵することで従来よりも素早い燃料噴射を可能とした。これにより、急速多段燃焼が可能となり、騒音や排ガスの低減と低燃費を実現している。

①燃料噴射の「立ち」と「キレ」が改善
②連射性能が向上


黒:従来インジェクター 赤:超高応答インジェクター

独自のディーゼル静音技術を搭載

マツダ独自のディーゼルの静音技術を搭載。燃焼時のコンロッドの伸縮による周波数帯3.5Hz付近の振動をピストンピンに組み込まれたダンパーで減衰させ、ノッキング音を抑制する「ナチュラル・サウンド・スムーザー」と燃料噴射タイミングを緻密に制御し、燃焼加振力と構造系の共振を抑制する「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」でノック音の低減が図られる。

ドライバーの眠気や脇見を検知する「ドライバー・モニタリング」

センターディスプレイに搭載された赤外線カメラと赤外線LEDにより、ドライバーのまぶたの開き具合やまばたきの頻度、口や顔の動きなどを監視。眠気のレベルを5段階で推定し、居眠りを検知。また、顔の動きや視線の方向から検出した脇見運転においても警告を発して安全運転を支援する「ドライバー・モニタリング」をメーカーオプションとして設定する。

前側方接近車両検知(FCTA)

1.5ℓエンジン車を除く全モデルには、フロントバンパーコーナーに装備したミリ波レーダーで交叉通行車両を検出する「フロントクロストラフィックアラート」を新設定。出会い頭事故の抑制を行なっている。

クルージング&トラフィックサポート(CTS)

高速道路などの走行時に自動で車速を調整し、先行車との車間を保ちながら追従走行する。コーナーに差し掛かるとレーンに沿った走りがしやすいよう操舵トルクをアシストし、疲労の軽減に貢献する。

理想的な作動軌跡を実現

安全運転の根源とも言えるドライビングポジションを重視するマツダらしく、シート高の調整にも工夫がこらされる。シート高を上下させる際に座面も前後に移動。かかとからお尻までの距離を一定に保つ軌跡となり、スライド調整が不要となる。

さらに進化して安全になったG-ベクタリングコントロールプラス

車両運転制御技術は最新の「G-ベクタリングコントロール プラス」を搭載。従来のエンジン制御に加えて、新たにブレーキによる車両姿勢安定化制御(直接ヨーモーメント制御)が追加され、より高い操縦安定性が実現されている。

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