starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

日産セレナe-POWERをホンダ・ステップワゴンスパーダ、トヨタ・ヴォクシーと徹底比較!【ライバル車比較インプレッション】


ハイブリッドをリードしてきたトヨタが、Mクラスミニバンにこの技術を初採用したのは2014年。それからわずか4年でホンダに続き日産も、より電動駆動を主体とするモデルをこのカテゴリーへと投入し、モード燃費ではTHSⅡを上回るまでに至っている。最新鋭のe-POWERとライバルたちのドライブフィールの違いを探っていこう。




REPORT●石井昌道(ISHII Masamichi)


PHOTO●神村 聖(KAMIMURA Satoshi)/平野 陽(HIRANO Akio)/中野幸次(NAKANO Koji)




※本稿は2018年3月発売の「日産セレナe-POWERのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。

セレナe-POWERのエンジンは発電に専念し、タイヤの駆動は100%モーターが行なう。ステップワゴンは走行の大部分でモーターがタイヤを駆動しエンジンは発電のために使われるが、高速巡航などではエンジン動力を直接タイヤに伝える。ヴォクシーはエンジンとモーターが遊星歯車による動力分割機構でシームレスに連携、エンジンとモーターの駆動力を条件に応じ配分する仕組みだ。

満を持して登場した日産のe-POWERミニバン

 日産自動車はゼロエミッション(環境汚染や気候変動への影響がゼロ)、ゼロフェイタリティ(事故や不幸がゼロ)といった将来の自動車のあるべき姿に向けて日産インテリジェントモビリティに取り組んでいる。その中でも2本の柱となるのが「電動化」と「知能化」。電動化に関しては純粋なEVのリーフがすでに二代目となっており、これに使う電気が再生可能エネルギー由来であれば完全なゼロエミッションが成立。知能化が進み、完全な自動運転が完成すればゼロフェイタリティがほぼ達成されるだろう。プロパイロットは自動運転へつながる技術群であり、進化しながら着々と普及しつつある。




 セレナe-POWERはその電動化と知能化を、いまの現実的な価格や利便性の中で最大限に盛り込んだモデルであり、それが日本のファミリーカーのボリュームゾーンに投入されたことは意義深い。




 Mクラスミニバンであるセレナのライバルはトヨタ・ヴォクシー/ノア及びエスクァイア、ホンダ・ステップワゴンで、これらの販売台数を合計すると年間30万台規模にも達する。それぞれが燃費改善効果の高いストロングハイブリッドを用意し、先進運転支援システムも充実しているのだから日本の自動車市場は極めて先進的なのだと改めて実感する。




 充電のいらない電気自動車とも表現されるe-POWERは分類的にはシリーズハイブリッド。エンジンは発電をするためのもので、その電力を使って電気モーターで駆動する。ステップワゴンが搭載するi-MMDと呼ばれるシステムもe-POWERに近似していて、ほとんどの走行場面がシリーズハイブリッドと同様の働きをするが、エンジン直結クラッチを持っていて高速クルージングの一部でエンジンが直接タイヤを駆動する。より効率を高めるための付加システムだ。ヴォクシー/ノア/エスクァイアはお馴染みのTHSⅡを搭載。1997年に発売した初代プリウスからの発展型で20年以上の歴史の中で大きな進化も遂げている。駆動はエンジンと電気モーターの両方を状況に応じてミックスしながら使っていく。それぞれの得意・不得意を高めたり補ったりしながら効率良く走らせる相乗効果を活かす考え方は、これぞハイブリッド。ただし、e-POWERやi-MMDがEVに非常に近いのに比べると、エンジン駆動の割合が主体だという点でずいぶんと異なる。




 今回は3台を比較試乗することになったが、気になる燃費性能はセレナe-POWERが26.2㎞ /ℓ、ステップワゴンハイブリッドが25.0㎞/ℓ、ヴォクシーハイブリッドが23.8㎞ /ℓ(ともにJC08モード)。後発のセレナが他を上回った格好だが、大差ないモード燃費をうんぬんしてもあまり意味がないのはご承知の通り。リアルなところは今後、公道でのロングドライブやさまざまな場面を走って計測したり、実際に購入したユーザーのデータがある程度のサンプル数に達したところで判明することになるだろう。だから今回はフィーリングを中心にお伝えするわけだが、ハイブリッドカーのユーザーの多くは運転に慣れていくうちにEV走行(バッテリー走行)がどれだけできるかに価値を感じるようになる。燃費改善効果が高いという理由以上に、エンジンが停止して静かにスムーズに走る電気モーター駆動に快感と新しさを感じるからだ。

NISSAN SERENA e-POWER Highway STAR V

高速道路での同一車線自動運転技術「プロパイロット」を初搭載し2016年に現行モデルがデビュー。今回追加されたe-POWER系グレードはパワートレーン以外にも、アームレストを備えた2列目キャプテンシートの採用や、防音/遮音性能をより高めるなどの変更が行なわれた。

モーター+直列3気筒DOHC/1198㏄


モーター最高出力:136㎰[エンジン:84㎰/6000rpm]


モーター最大トルク:32.6㎏m[エンジン:10.5㎏m/3200-5200rpm]


JC08モード燃費:26.2㎞/ℓ


車両本体価格:340万4160円

三車それぞれのモーターに宿る明確なパワーの個性

 セレナe-POWERはチャージモードとマナーモードを備え、EV走行を最大化するのがウリでもある。そこでまずはどれだけEV走行(バッテリー走行)ができるのか実力を試してみた。駆動に使われるリチウムイオンバッテリーの容量は1.8kWhでノートe-POWERの1.5kWhよりも大容量化されている。e-POWERにとってのバッテリーは、本来はバッファとして一時的に電気を貯める意味合いが強い。エンジンで発電して電気モーターを回すのに、バッテリーはなくても成立はするが、エンジンの余剰トルクで発電した分や減速時回生エネルギーを一時的に貯めて、駆動に回して効率アップするということだ。




 また、エンジンの最高出力は62kW(84㎰)で電気モーターは100kW(136㎰)。フル加速をするとき、エンジンの出力だけでは電力が足りないのでバッテリーからの持ち出しで電気モーターに100kWを発揮させる。エンジンの出力が低いのは、そのほうが全体的な高効率化(燃費改善)に有利だからで、エンジン/電気モーター/バッテリーの出力や容量のバランスをクルマの車両重量や使われ方に合わせて最適化するのが難しいところ。その擦り合わせこそがつくり手の腕の見せ所でもある。




 チャージモードはバッテリー残量が約90%になるまでエンジンオン。マナーモードはバッテリー残量が少なくなるまで基本的にEV走行となり、その走行可能スピードも大幅に高められる。




 バッテリー残量90%からマナーモードでEV走行できる距離は、日産の社内評価で2.7㎞とされているが、実際に試してみることにする。今回はクローズドコースでの試乗でリアルワールドではないが、街中の走行をイメージした加速を心掛け、直線は60㎞ /h程度まで伸ばし、適宜停止・発進を入れてみた。その結果は2.4㎞のEV走行が可能だった。停止は7回で掛かった時間は5分17秒なので平均車速は約27㎞ /hと、一般的な街中走行よりやや速めではあるが、信号があるわけではないから停止から発進までの時間がごく短いことを考えればまあまあリアルワールドに近いと思われる。EVやプラグインハイブリッドではないモデルでこれだけ走ってくれれば十分以上だろう。コストの兼ね合いがある中でバッテリー容量をなるべく大きくし、チャージモードやマナーモードを設けたアイデアに拍手したい。ちなみに停止・発進を入れず走ってみたら走行距離は4.0㎞まで伸びた。




 マナーモードやチャージモードを使わずに走ると、燃費効率とドライバーの望む加速などを考慮してエンジンが掛かったり止まったりする。停止時はエンジンがアイドリングなどするわけはなく、発進してしばらくしてからエンジン始動。バッテリー残量と加速要求などによってタイミングは違ってくる。残量たっぷりでの街中発進ぐらいなら40㎞ /hを超えてもなおエンジン始動しないこともあるが、通常は10㎞/h前後でブルンとくることが多い。EV走行可能距離テストをしたあとだと、エンジンが掛かると“惜しい”などと思ってしまうが、一般的なエンジン車に比べれば夢のように静かではある。スマートシンプルハイブリッドのセレナに比べても1クラスといわず、ふたつも3つもクラスが上がったように高級感がある。エンジンが掛かっている状態でも、ガソリン車に対して25アイテムもの遮音仕様アップを施した効果が発揮されている。




 もちろん走りの頼もしさも電気モーター駆動ならでは。ノート用に対して最高出力は25%アップの100kW(136㎰)、最大トルクは320Nm(32.6㎏m)とミニバンのボディに対しても余裕があるからだ。




 ステップワゴンハイブリッドはエンジンが最高出力107kW(145㎰)、最大トルク175Nm(17.8㎏m)、電気モーターが135kW、(184㎰)315Nm(32.1㎏m)、バッテリー容量は1.3kWhとなる。静かに走りたいときに使用するEVスイッチは、セレナのマナーモードに相応するが、チャージモードがないためEV走行可能距離はそのときのバッテリー残量に依存する。そもそもの容量もセレナより0.5kWh小さいので、狙ったところで長めのEV走行を楽しむという点ではセレナに軍配があがる。




 電気モーターはセレナに対して最大トルクはわずかに劣るものの最高出力は上回っている。そのため動力性能には余裕があり、アクセル全開で発進してみると明らかに速い! エンジンは主に発電しているだけだが、サウンドがスポーティなのはホンダらしいところだろう。




 街中や郊外路をイメージした一般的な走りでもステップワゴンは秀逸だった。電気モーターによる走りの美点はセレナと同様だが、エンジンのフィーリングが違う。セレナが直列3気筒の1.2ℓなのに対してステップワゴンは直列4気筒の2.0ℓ。発進時など、EV走行からエンジン始動するときに、3気筒はブルンとした振動があり、なおかつエンジン回転数が少し高めになってから落ち着くのが伝わってくるのに対して、4気筒はシュルシュルっとスムーズに、回転もオーバーシュートしないで始動。そこに高級感がある。




 また、セレナはエンジン回転数があまり変動しないのだが、ステップワゴンはアクセルの踏み加減、トルク要求によって変動が多い。セレナは少し高めの発電効率の高いエンジン回転数を使うことで、エンジンが掛かっている時間を短くしてトータルでの静粛性を上げようとしているのに対して、ステップワゴンはドライバーの気持ちとエンジン回転数の変動がシンクロすることで走りのリニア感がある。これはどちらがいいとか悪いとかいう話ではなく、快適性重視か運転の楽しさに寄せるかという志向の違いだが、ステップワゴンのエンジンには贅沢さがあり、運転好きのお父さんの満足度が高いだろうという予測はつく。ただその分、車両価格が若干、高くつく。




 ハンドリングにも似た傾向が表れていた。クローズドコースなので、公道では非現実的なコーナリングも試してみたが、ステップワゴンはミニバンらしからぬスポーティな姿勢で駆け抜けていく。ステアリングから伝わってくる路面とタイヤのグリップ状況もクリアで楽しい。セレナは全体的にソフトタッチで快適志向。それでも、バッテリーが低い位置に搭載されていることもあってか、低重心感があるので操縦安定性は満足いくレベルで安心感がある。




 総じてステップワゴンはドライバーズカー的な要素が多くて楽しいのだが、それはクルマとして普遍的な面での話。セレナには例のe-POWERドライブがあり、電気モーター駆動ならではの新しい楽しさがある。アクセルペダルだけで最大0.15G程度までの減速を司れるe-POWERドライブはノートでも好評。運転にまったく興味がないお母さんもハマってしまうという。停止時のスムーズさはプロドライバー並みで快適性が向上するのも特徴だ。

HONDA STEP WGN SPADA G・EX Honda SENSING

アコードなどの大型車に使われているi-MMDパワートレーンを収めるために、従来モデルからフロントマスクを大きく変更して2017年にデビューした新生スパーダ。優しい印象のステップワゴン標準車との違いがさらに際立った、カスタム系らしいアグレッシブなルックスも好評を博している。

モーター+直列4気筒DOHC/1993㏄


モーター最高出力:184㎰/5000-6000rpm[エンジン:145㎰/6200rpm]


モーター最大トルク:32.1㎏m/0-2000rpm[エンジン:17.8㎏m/4000rpm]


JC08モード燃費:25.0㎞/ℓ


車両本体価格:355万9680円

急速に進展していく電動への大きな流れ

 2014年1月に発売のヴォクシー/ノアハイブリッドは、昨年9月にステップワゴンハイブリッドが発売されるまでの3年8ヵ月、Mクラスミニバンでは唯一のストロングハイブリッドとして人気を誇ってきた。それまでは他のガソリン車やセレナS-ハイブリッドに対し圧倒的な燃費性能と静粛性の高さ、システム合計出力100kW(136㎰)のそこそこに頼もしい走りが魅力だったが、相次いで登場した電気モーター駆動のセレナe-POWERとステップワゴンハイブリッドにひっくり返された格好になった。




 ゼロ発進から約80㎞ /hまでの全開加速を試すとステップワゴンが最速で、セレナは1〜2割程度時間が多く掛かり、ヴォクシーは4〜5割程度多く掛かる(あくまで参考)。電気モーター駆動勢の速さはファミリーカーにとって過剰ともいえ、ヴォクシーでも必要十分以上ではあるが、普通に走るときでも余裕があればドライバーの負担は小さくなる。




 ヴォクシーも通常発進時は電気モーターで走りだし、10㎞ /h前後でエンジンが掛かる。電気モーターは最高出力60kW(82㎰)、最大トルク207Nm(21.1㎏m)で従来型ハイブリッドとしては大きめだが、セレナやステップワゴンに比べると小さい。だから走行におけるエンジンの役割は大きく、その分エンジン音が聞こえている時間も量も増えることになる。スタンダードなガソリン車に比べれば格段に静かだが、電気モーター駆動に比べるとかなわない。




 一般的な走りでの動力性能が必要十分以上なのは前述の通りだが、アクセル操作に対するレスポンスもまずまずだ。ドライバーの要求に対して、エンジンと発電機を司る動力分割機構が最適解を探して対応してくるのだが、その複雑な機構でよくぞここまでドライバビリティを高めているともいえる。




 もちろん、電気モーター駆動の超絶レスポンスにはかなわないが、さすがは熟成されきったTHSⅡだと言える。それも発売から4年が経ったモデルであり、エンジンは先代プリウスから使われている1.8ℓ。ゆくゆくは、吸気ポートに革命を起こした新世代のダイナミックフォース・エンジンになるだろうが、カムリの例から想像するに、レスポンスやドライバビリティ、そして燃費性能でも大きく進化するはず。いまはセレナとステップワゴンが抜きん出たが、またいつひっくり返されるかわからない。




 ヴォクシーのハンドリングや乗り心地はバランス志向だ。イヤな硬さがまったくない快適な乗り心地だが、どっしりと落ち着いた雰囲気で安心感がある。コーナーをちょっと速めに走ってみても、安心感を伴った上でそこそこに機敏。セレナとステップワゴンはキャラクターが分かれていたが、ヴォクシーは万人受けする懐の深いタイプだ。




 THSⅡのさらなる熟成と進化にも期待したいが、e-POWERとi-MMDの電気モーター駆動がもたらした衝撃はあまりにも大きい。もしかしたら近い将来の日本の乗用車のパワートレーンを根こそぎ変えていってしまうのではないかと思えるほどだ。根源的なスポーティさで勝負するi-MMDに対して、e-POWERは電気モーター駆動ならではのモード設定やドライブ感覚を磨くことに余念がなく、より幅広いファンを獲得する可能性が大きい。セレナe-POWERは将来のEVユーザーを育成する役割を担うことにもなりそう。完全なるゼロエミッションへの架け橋でもあるのだ。

TOYOTA VOXY HYBRID ZS

ノア、エスクァイアを加えた3兄弟車の合計では、Mクラスミニバンカテゴリーでトップの販売台数を誇っている。現行型デビューは2014年となるが、昨年のマイナーチェンジでエクステリアデザインを大幅に変更。車内の収納やUSB電源など装備もより充実させ、商品力を高めた。

直列4気筒DOHC+モーター/1797㏄


最高出力:99㎰/5200rpm[モーター:82㎰]


最大トルク:14.5㎏m/4000rpm[モーター:21.1㎏m]


JC08モード燃費:23.8㎞/ℓ


車両本体価格:326万9160円
    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.