「ストリート」と「カフェ」、2つのモデルを同時に新発売したカワサキW800。エンジン、シャシー、足まわり、いずれも刷新され、基本構成を共通としていますが、装備内容は異なり、それぞれで新しい精悍なスタイルを演出しているではありませんか。細部を比較しながら、じっくり見てみましょう。
REPORT●青木タカオ(AOKI Takao) PHOTO●カワサキモータースジャパン、川崎重工業
W800 STREET…993,600円
まずスタイリングです。ストリートは昔ながらのオーソドックスなフォルムとしつつも懐古主義ではなく、レトロとモダンが融合し新鮮さも感じます。車体色はメタリックフラットスパークブラック×メタリックマットグラファイトグレーです。
W800 CAFE…1,112,400円
車名が示すとおりのカフェレーサースタイルで、一気にスポーティなムードではありませんか。車体色はメタリックマグネシウムグレー×ギャラクシーシルバーです。「シンプルさ」「機能性」「エレガンス」をキーワードにデザイン開発され、最新のトレンドが反映されています。
大径170mmのヘッドライトは、明るい白色光のLED式。凸面レンズや上質なクロームメッキ仕上げのリングが組み合わされ、クオリティの高さを感じるフロントマスクです。
6室に内部は分かれて、そのうち4室がロービーム、2室がハイビームに割り当てられて
います。ポジションランプは電球式のライトのように全体が点灯し、レトロスタイルを再現したのでした。前後の大径丸形ウインカーを含め、灯火器類は両車で共通です。
ただしカフェでは、クラシックレーサーをイメージしたビキニカウルが備わり、フロントマスクの印象を一新しています。
キャスター角を27→26度に立てた正立式フロントフォークは、インナーチューブ径を39→41mmに太くし、さらにスプリングもハードセッティングに変更。アンダーブラケットの剛性も高めたのでした。ゴム製のフォークブーツは、インナーチューブやシールをガードするとともにビンテージルックを強調します。
19インチだったフロントホイールは、初代W1(1966年)と同じ18インチに。軽量で剛性の高いアルミ製リムは、ストリートではシルバーアルマイト、カフェではブラックアルマイト仕上げとしています。
サイズはJ19×2.15、J18×MT2.75だった先代に対し、18×MT2.50、18×MT3.00と太くなり、走りに安定感が増したのでした。
フロントブレーキはディスク径を300→320mmに拡大し、制動力とタッチを向上。左右37度ずつのステアリングアングルは先代と変わりません。
ライディングポジションが異なる2台
ストリート用のアップライトなハンドルバーは、乗り手の両腕が高い位置に上がり、堂々たる乗車姿勢となります。これはW1〜W3のライデイングポジションを彷彿させ、形状はW650のアップハンドル仕様と同一となっています。
カフェではクラブマンスタイルのM字形状ハンドルバーが採用され、上半身は前傾姿勢に。よりアグレシッブにスポーツライディングを楽しみたい人は、低く身構えるカフェが魅力となるでしょう。
速度計とエンジン回転計がそれぞれ独立したデュアルメーターを装備。シンプルな液晶パネルには、オド、トリップ、時計を切りかえ表示します。インジケータランプはFI警告灯、デュアルターンシグナル、燃料残量警告灯、ハイビーム、ニュートラル、油圧警告灯。カフェの文字盤はスポーティな白を中心部に大きく使っています。
なめらかな曲線を描く燃料タンクも新型W800の大きな特徴です。先代モデルより容量を1L増やし、15Lとすることで存在感を高めています。
タンクグラフィックはそれぞれで異なり、カフェではニーグリップしたヒザが当たるタンクパッドが備わり、ビンテージなムードを感じさせるのでした。
ブラックエンジンの仕上げもよく見ると違う!!
ベベルギヤ駆動のカムシャフトをはじめ、クラシカルな造形美を感じさせる空冷バーチカルツインは、先代より最高出力を4PSアップし52PSに。アシスト&スリッパークラッチも搭載され、よりスポーティなライドフィールを実現しています。
ブラックアウトされたエンジンもまた重要なデザイン要素であり、カフェではベベルギヤカバーをシルバー仕上げにし、アクセントとしているのが大きな特徴です。
ストリート用の前後に長いタックロールシートは、前部を絞ることで足つき性にも優れ、シート高も770mmとカフェより20mm低くなっています。座面もゆったりと広く、ライダーと後部座席に座るパッセンジャーの間に充分なスペースが確保されました。
一方でカフェ用は、スタイリッシュな段付きシートです。ダブルテクスチャーでステッチも美しく、カスタムが施されているかのよう。もちろん2人乗りも快適にでき、両車ともタンデムグリップが握りやすい位置に付いていて、ロープやツーリングネットのフックを掛けるのにも役立ちそうです。
サイドカバーはスチール製とし、金属ならではの質感が見る者の目を惹きつけます。塗装色も分けられ、差別化が図られているのが嬉しいかぎり。細部にまで妥協は一切ありません。
両車ともリヤサスペンションはコンベンショナルなツインショック式で、スプリングプリロード調整機構を備えています。剛性の上がったシャシーに合わせ、前後サスもコシのあるハード寄りにセッティングが最適化されていました。
Wのマフラーはこうでなければならないと主張するかのような、滑らかな曲線と長く伸びる直線で構成されたシンメトリーな2本出しマフラー。シンプルかつ美しいクラシカルな形状から、力強いサウンドを奏でます。排気系も両車共通です。
テールエンドもブレーキレンズの形状などからWだとすぐに分かる伝統的なスタイルです。シンプルでいながら、クラシカルなプロポーションにマッチし、リアビューもまた美しいのでした。
細部が分かると、それぞれの乗り味が気になってきます。さぁ、両モデルの試乗レポートはこちらへ!!