2017年に中国でワールドプレミアされ、18年からは欧州をはじめとしたグローバル市場に順次投入されているシトロエンC5エアクロスが、ついに日本にも導入された。日本では末尾にSUVがつくネーミングとなっている。シトロエン伝統の「ハイドロニューマチック」の現代版解釈とも言える新しいサスペンションの採用もトピックだ。
満を持しての日本上陸! シトロエンらしさ全開!
シトロエン初のSUVがいよいよ日本に上陸を果たした。2017年に中国市場に投入され、18年からはワールドワイドに展開されているC5エアクロスが日本にも上陸を果たしたのだ。
日本仕様はネーミングの末尾に「SUV」が付き、「C5エアクロスSUV」となる。
中国仕様は中国の成都工場で生産されるが、日本を含むグローバル仕様はフランスのレンヌ工場で生産される。
2.0Lディーゼルと8速ATの組み合わせ
エンジンは直列4気筒2.0Lディーゼルで、8速ATと組み合わされる。2000barの高圧燃料噴射と可変ジオメトリーターボチャージャーの組み合わせで最高出力130kw(177ps)、最大トルク400Nmを発生。ディーゼルらしい低回転域からの豊かなトルクを味わえる一方、CO2排出量はクラス最小レベルで、WLTCモード燃費は16.3km/Lを実現している。
環境対策としては、酸化触媒、SCR(選択還元触媒)、DPF(微粒子フィルター)の3ステップで排出ガスに含まれる有害物質を除去。AdBlue(尿素水溶液)を使用することでNOxを最大90%除去するという。
電子制御8速ATは日本のアイシン・エィ・ダブリュと共同開発のもので、3つのドライブモードが選択可能だ。とくにエコモード時は新しく搭載されたフリーホイール機能(いわゆるコースティング)で、走行条件が合えば、アクセルオフ時にクラッチを切って燃費向上に貢献する。
電子制御によってFFながら十分な悪路走破性を確保
FFながらSUVとしての悪路走破性を確保するため、C5エアクロスSUVは「グリップコントロール」なる車輌制御システムを採用する。
これはシトロエンのラリーフィールドでのノウハウを活用したもので、センターコンソールのダイヤルで路面状況に応じたモードを選択できる。
マッド(泥)、スノー (雪)、サンド(砂)、そしてESCオフといったモードが用意され、標準装着のマッド&スノータイヤ (Michelin LATITUDE TOUR HP)の性能も相まってFFならではのフリクションロスの少なさによる燃費の良さと優れた走行性能を両立したという。
また、ヒルディセントコントロールは勾配が5%以上の急な下り坂でドライバーのブレーキ操作なしに自動的に車速を低速に保つ機能で、センターコンソールのスイッチでオンオフを選択する。
PHC(プログレッシブ・ハイドローリック・クッションズ)に注目
そして今回の大きな目玉が、PHC(プログレッシブ・ハイドローリック・クッションズ)だろう。
これは通常のダンパーにセカンダリーダンパーが追加された構造の純メカニカルなシステムだ。ダンパーシリンダー内に第二のダンパーシリンダーが配されており、サイドには複数の ポートが開けられている。このポート径はストロークエンドに行くに従い小さくなっている。
セカンダリーシリンダーにはその内径に合ったセカンダリーピストンが存在し、ストロークが進むとそのセカンダリーピストンがシリンダーに入り込みハイドロリックストップとして作用する。つまり位置依存型(ポジション・センシティブ)ダンパーというわけだ。
これにより、サスペンションが小さく細かく動く状況(車高が通常の高さから大きく外れない状況)や、サスペンションのストロークスピードが低い状況では、減衰力が小さく非常にソフトな、いわゆる「ふわり」とした乗り心地を提供する。
そしてサスペンションが大きく動く状況では前述のセカンダリーピストンとシリンダーが生み出す減衰力で衝撃をスムーズに吸収し、大きな凹凸でも快適なフィーリングが味わえるのだ。
このテクノロジーは1994年のパリ=ダカールラリーで優勝したシトロエンZXラリーレイドで投入され、その後2000年代から現在に至るシトロエンのWRC参戦車両に採用されている技術をベースにしているという。
ラリーカーの悪路を速く安全に走るためのポテンシャルをシトロエンならではのコンフォート性能───つまりロードカーとしての卓越した乗り心地を実現するために活用した技術といえそうだ。
シトロエンによれば、PHCのメリットは下記のものが挙げられるという。
●魔法の絨毯のような極めてソフトな乗り心地を実現する
●余計なサスペンショントラベルを減らし、快適性を向上させる
●純機械的なメカニズムのため、高い信頼性を維持できる
また一般論として、通常のダンパーの場合、圧側(縮み側)で大きくストロークした場合、ゴムやウレタン製のバンプラバーがその衝撃の吸収を担うが、ストローク時のエネルギーを減衰することができず反発力となってしまうために乗り心地や挙動の悪化を招くことがある。PHC の場合はセカンダリーダンパーが減衰力を発揮するためにこうした挙動が起こりにくくなるという。
なおC5エアクロスSUVのPHCは、フロントは圧側伸側の両方にセカンダリーダンパーのハイドローリックストップを、リヤは圧側のみに備えている。
シトロエンと言えば快適シートにも期待
シトロエンと言えばシートにも期待せずにはいられないが、C5エアクロスSUVでは、とりわけシートの快適性の向上にも注力したという。
身体をソフトに優しく包み込みつつも確実にサポートするシートを実現するために、シートクッション素材のポリウレタンフォームを徹底的に研究し、業界平均に対して非常に密度の高い独自の高密度フォームを採用したという。
また、シート表皮中央部にはさらに15mm分レイヤーを重ねることで、座った瞬間の当たりの柔らかさとなじみの良さを向上させている。
シトロエンは下記のメリットを主張している。
●座った瞬間に感じられるソフトで快適なフィーリング
●たっぷり採ったクッションの厚さによる運転時の快適性
●大きなシート座面および背面によるサポート性の向上、健全な姿勢の維持
●高い耐久性
さらに運転席にはマルチポイントランバーサポートも搭載。ドライバーの体形に合わせたシートの微調整ができるだけでなく、8つのエアバッグによる5パターンのマッサージ機能を備えている。
C5エアクロスSUV
全長×全幅×全高:4500×1850×1710mm
ホイールベース:2730mm
車両重量:1640kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:2981cc
最高出力:130kW(177ps)/3750rpm
最大トルク:400Nm/2000rpm
トランスミッション:8速AT
車両価格:424万円