サプライヤーのショーワは、高度な自動運転に対応するステアリングシステムとして、ステア・バイ・ワイヤシステムを開発中だ。ステア・バイ・ワイヤーでもっとも重要なのは、安全性と信頼性だ。ショーワのSBWSは、それを4重の冗長性で担保するという。人とくるまのテクノロジー展2019横浜でショーワのエンジニアに訊いた。
自動運転時代のステアリングシステムとして開発が進むステア・バイ・ワイヤーとは、ステアリングホイールと転舵輪の間に機械的な結合を持たない方式を言う。現在でも、日産スカイラインの一部のグレードで、ステア・バイ・ワイヤシステムは実用化されている。しかし、スカイラインのシステムは、システムフェイル時には、ステアリングホイール(とステアリングラックを繋ぐインターミディエイトシャフト)と転舵輪(ステアリングラック)を、クラッチで機械的に結合するバックアップ機構を備えている。つまり、インターミディエイトシャフトは、ほぼ通常のステアリングシステムと同様に存在している。ステア・バイ・ワイヤシステムのひとつのメリットであるインターミディエイトシャフトなし、ではないのだ。
これに対して、ショーワが開発を進めるSBWSは、完全に”リンクレス”なシステムを想定している。過密なエンジンコンパートメント(エンジンを載せないEVだとしても)にステアリングのインターミディエイトシャフトを通すスペースを考えなくていいというのは、大きなメリットだが、前述したとおり、”いざというとき”の冗長性をどう確保するのかが重要だ。
ショーワのSBWSは、4重の冗長性を確保している。
反力アクチュエーター部
電源/舵角検出・出力は3重
反力演算・出力/モーター駆動/モーター回転角センサー/ステアリング接触演算は二重の冗長性を確保した。
操舵アクチュエーター
電源/ストローク検出・出力は3重
推力演算/出力/モーター駆動/モーター回転角センサーは3重以上
操舵電流値出力は1重の冗長性を確保したという。
フェイルセーフという最大の問題をクリアできたらSBWSにはメリットが数多くある。
たとえば、車速に応じてステアリングのギヤレシオを任意に変化させることが可能になる。低速時にはクイックに、高速時にはスローに、というように変えられる。これまでの機械式の可変ギヤレシオステアリングシステムの場合の可変域は20%程度だったが、SBWSでは200%以上の可変が実現できるという。また、可変レシオのマップも自由自在になるわけだから、よりきめ細かい制御が可能になる。
ギヤレシオの変更に合わせてハンドルのロックtoロックも変化する。この際にハンドルの空転違和感(操舵角はロックまで切れているのに、機械的に結合していないため、回そうと思えばステアリングホイールを回せてしまう)を打ち消す”エンドストッパー機能”も採用している。
SBWSは、路面からの情報をドライバーにとって不快な振動やノイズによりわけて、必要なインフォメーションだけを反力として伝えられる。とはいえ、なにが情報でなにがノイズなのかを見極めるのが難しい。
ショーワは、長年ステアリングのラック側(つまりステアリングホイールに反力を伝える側)の研究も行なってきた。それがSBWSの開発に役立ったという。
完全自動運転が実現すれば、ステアリングホイールからドライバーに伝えるフィールやインフォメーションは必要なくなるかもしれないが、それはだいぶ先のことになるだろう。レベル3/4では、ドライバーは自動運転とマニュアル運転を切替ながら運転することになる。SBWSへのニーズ、期待は大きい。
ショーワでは、2020年代中盤から終盤にかけてSBWSが実際に採用されていくと見ている。それを目指してショーワはSBWSの開発に注力していくという