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令和に伝えたい平成の名車〈国産車 二輪編〉ホンダ NR


令和への改元もいよいよ目前に迫ってきたということで、お約束ではあるが平成の名車を振り返ってみたい。国産車編を担当することになった筆者が四輪車に続いて選んだのは、平成4年に世界初の画期的なオーバル(楕円)ピストンで世界に衝撃を与えたホンダのNRである。520万円という当時としては(今でも?)破格のプライスも衝撃的だった。




TEXT●小泉建治(KOIZUMI Kenji)

世界をアッといわせたオーバルピストン! 価格は520万円!

 四輪編に続き、二輪編として筆者が選んだのは、世界初の楕円ピストンを採用した4ストロークV型4気筒750ccのハイエンドスポーツ、ホンダNRである。




 このテクノロジーの原点となったレーシングマシンのNR500は1979年、つまり昭和に生み出されたものだが、520万円というあまりに高価な市販車として発売されたのは92年、平成4年のことであり、やはりこのバイクも平成が生んだ名車と言って差し支えないだろう。

 レーシングマシンのNR500が楕円ピストンを採用した目的は、4気筒というWGPのレギュレーションを満たしつつ、8気筒と同じ8本の点火プラグと32本のバルブを備えることで、4ストロークながら2ストロークと同等の出力を得るというもの。驚くべき発想だが、まさかそれを実現してしまうとは、いかに当時の日本に勢いがあったかを思い知らされる。もちろん高い技術力も然りだ。




 レースでは主だった結果を残さなかったが、バブルを迎えた平成の時代に、画期的なエンジンを搭載したハイエンドスポーツという形で陽の目を見ることになった。

V型4気筒750cc“オーバルピストン”ユニット。最高出力は国内自主規制に合わせた77ps/11500rpmだったが、海外仕様は130ps/14000rpmを誇った。

 また、オーバルピストンばかりに目が行きがちだが、目の字型断面材を使用した極太アルミツインチューブを採用したフレームなど、車体側のつくりもかなりコストがかかったものだった。




 ヘッドパイプまわりやピボット部にはアルミニウム鍛造素材を採用し、フレームのねじり、たわみの均一化が図られている。

フレーム表面には念入りなバフ仕上げとアルマイト加工が施され、高光輝な素材の美しさを表現している。ハイエンドスポーツに相応しいつくり込みだ。

 残念ながら発売直前にバブルが崩壊し、セールス的には成功しなかったが、520万円という価格も含め、当時大学生になったばかりの筆者には衝撃的な一台だった。




 その20数年後、ホンダはMotoGPマシンに保安部品を付けただけという成り立ちの超弩級スーパースポーツ、RS213V-Sを発売する。




 幸運にもそのテストライドを許されたとき、跨がった瞬間に頭に思い浮かんだのはかつて憧憬の念を抱いていたNRの姿だった。




 試乗を終え、ホンダの青山本社にRC213V-Sを返却に行った際、驚くべきことに駐車スペースにNRが鎮座していた。たまたま訪れていたお客さんのものだったらしいが、それまで私はショールームやミュージアム以外で一度もNRを見たことはなかった。




 なんという邂逅だろう。

2015年に発売された、公道を走れるMotoGPマシン「RC213V-S」。価格は2190万円!

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