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ボルボ・トラック 新型FHに搭載されたメカニズム


ボルボ・トラックの大型トラック、FHには、ボルボ・トラック独自のテクノロジーが搭載されている。ドライバー・ファーストの設計思想から生まれたメカニズムを見てみよう。




TEXT&PHOTO◉松井亜希彦(MFI)


FIGURE◉VOLVO TRUCKS

ドライバー・ファーストの設計思想から生まれたボルボ大型トラックのメカニズム

 商用車の分野で世界有数の規模を誇るボルボ・トラック。日本ではトラクターヘッドに属するモデル「FH」のみが販売されている。2018年11月、改良した新型を発表した。同社は従来から”長距離輸送に携わるドライバーへ、最高の職場環境を提供し安全に繋げる”設計思想で、すでに油圧アシストと電気モーターを組み合わせ操舵力を大幅に低減しつつ、路面からの振動を抑えるボルボ・ダイナミック・ステアリングを全車標準装備としている。今回は実際に体験することができた。路面に置かれたゴムブロックを踏んで前進してもステアリングから凹凸による振動はほとんど感じ取れない。また低速での操作は片手で楽々と行なうことができるため、高齢者や女性のドライバーに歓迎されているという。




 さらに今回は運転者の負担を減らす様々な装備が追加された。クラッチ操作を自動化したAMTであるI-シフトもすでに全車標準装備だが、新たにクローラー・ギヤを用意。クラッチハウジングの直下に用意された拡張ギヤにより、標準の2倍近い減速比が選択でき、超重量物を積んだ際の坂道や悪路での発進時などに威力を発揮する。




 またI-シフトに追加するデュアルクラッチもオプション設定。重量物を積み勾配のきついルートを登る際には、MT/AMT問わず変速時のトルク抜けがどうしても出る。これを嫌うプロドライバーはエンジン回転数を高めたりすることもあるが、このオプションを選択すればスムーズに登坂でき、運行時の疲労低減や燃費向上も期待できるという。

ボルボ・ダイナミック・ステアリング

油圧パワーステアリングユニットとロッドの間に電気モーターを追加し、車速や車両姿勢、路面変化などさまざまな要素をセンシングして、自動的にモーターが追加アシスト。トレーラーでは難しい後退での直進も簡単に行なえる。

キックバックを抑え込む制御

路面に障害物を置き凹凸を付けた試験路でステアリングへの振動がどれだけ遮断されるかを体験できた。モーターが瞬時に荒れた路面からの入力をキャンセルするトルクを発生させ、拍子抜けするほどスムーズに通過できる。

クローラー・ギヤ

超重量の荷物を積んだ際には、滑りやすい路面での発進が非常に難しくなる。それを補うのが大幅に変速比を変えられるこの機構。標準I-シフトへの追加モジュールとして提供されるが、重量増は48kgに抑えられている。

ダウンサイジングの流れに乗らない大排気量

「FH」のエンジンは1万2777ccの排気量を持つ直列6期等ディーゼルターボ。同社は長距離巡航が多い大型トラックは余裕のある排気量が疲労低減に繋がると考え、この大きな排気量を変更する予定はいまのところないという。

DCTによるスムーズなトルクの出方

超重量の大型トラックでは、登坂路でのシフトアップ時のクラッチ断続による失速幅が大きい。デュアルクラッチならこのトルク変動を極めて少なくできるので、乗用車以上に走行安定性やドライバーの疲労低減に大きく貢献する。

人手不足が続く運輸業界では高性能車両が求人に貢献!?

 ボルボ・トラックは国産車と比較するとやはり値段は高いが、ドライバーの人気は上々。運送会社によっては優秀な人材確保のためにボルボ・トラックを導入する動きも増加しており、2018年の「FH」国内販売台数は対前年比150%近くで推移している。

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