NEXCO東日本は、高齢ドライバー(65歳以上男女104名)と65歳以上のドライバーを親に持つ子ども世代(30~50代男女312名)に対し、車の運転に関する意識調査を実施した。
NEXCO東日本は、高速道路での逆走の過半数(66%)が65歳以上のドライバーによるもの(※1)という事実を踏まえ、ドライバー本人のみだけでなく、その家族にも逆走防止のためのアクションを呼びかける「家族みんなで 無くそう逆走」プロジェクトを2018年10月より開始している。その一環として、高齢ドライバー(65歳以上男女104名)と65歳以上のドライバーを親に持つ子ども世代(30~50代男女312名)に対し、車の運転に関する意識調査を実施した。調査では「高齢ドライバーによる高速道路での逆走」や「免許返納」に関する、高齢ドライバーの意識や家族での話し合いの実態についても回答を得た。
さらに調査結果を踏まえ、メモリークリニックお茶の水院長で筑波大学名誉教授の朝田 隆氏から、車の運転、逆走防止、免許返納について、お勧めの話し合い方法やNGポイントのアドバイスを得ている。
高齢ドライバーは「運転はまだまだ現役だ」と思っている!?
65歳以上のドライバーに車の運転に対して聞いたところ、 76.0%が「自信がある」と回答。特に、高齢男性ドライバーの80.7%が「自信あり」 と回答した。
さらに、 年齢別で確認したところ、 66~69歳のドライバーは73.5%、70~74歳は75.0%、75歳以上は79.4%が「自信がある」 と約6ポイントも増加。男性ドライバーおよび年齢が高いドライバーが「運転に自信あり」と思う傾向が高いことがうかがえる。
また「免許を返納しても良いと思う年齢」を聞いたところ、平均は約80歳。車の運転には自信があり、80歳までは車の運転は現役でいたいと思っている高齢ドライバーが多い結果となった。
「高速道路の『逆走』は自分と関係ない・興味ない」!?
高齢ドライバーは、多く発生している高齢ドライバーの逆走について、どのように思っているのだろうか。「高速道路での逆走のうち66%が65歳以上のドライバーによるもの」であるというデータの感想を聞いたところ「自分も車を運転するので関係ある」という回答が58.7%、「自分は逆走を起こさないと思うので関係ない」という回答が35.6%、また「高速道路は利用しない」「わからない」などの回答を含む「その他」が5.8%という結果となった。
高速道路での高齢ドライバーの逆走を自分にも関係ある問題として考えているドライバーが多かったものの、約4割は「自分とは関係ない・興味ない」と考えていることがうかがえる結果となった。
子どもの注意喚起は親に届いていない!?
65歳以上のドライバーを親に持つ30~50代(子ども世代)に「親の車の運転が危ない」と本人に伝えたことがあるかを聞いたところ、8割以上が伝えたことがあるという結果となった。
一方、高齢ドライバーにご自身の車の運転について、子どもから「危ない」「気を付けた方がいい」など伝えられたことがあるかを聞いたところ、約76%の高齢ドライバーは伝えられたことがない と回答。子ども世代は高齢ドライバーに車の運転に対して注意喚起をしているが、高齢ドライバーは自身の運転に自信がある人が多いからか、子どもが親の運転を心配していることが伝わっていないのかもしれない。
「免許返納」について、 特に父親とは話しにくい!?
子ども世代に、免許返納について親と話したことがあるかを聞いたところ「父親と話したことがある」が31.8%、「母親と話したことがある」が38.0%となり、母親の方が話している傾向が高い。また、免許返納について話し合った際の年齢は、父親は「年齢80~84歳」が最も多く約5割。一方、母親は「年齢75~79歳」が多く約6割となり、父親より母親の方が年齢が若いうちに免許返納について話している傾向があった。
父親の方が運転に自信を持っており免許返納の話をしにくい傾向があるからか、年齢が上がってから話すようになるのかもかもしれない。
「70歳になったらご家族で話し合いをしてみましょう!」
高齢ドライバー本人が運転に自信を持っていても、周りから見ていて不安を感じ、注意を伝えたいこともあるだろう。家族として、車の運転、逆走防止、また免許返納についてどのような話し合いをすればいいだろうか。
朝田先生は、高齢ドライバーが70歳になったら家族で話し合いをするべきだと言う。お勧めの話し合い方法やNGポイントについて、朝田先生にアドバイスをいただいた。
■ Point 1:突然 「運転が危ない!」はNG。 喧嘩の元になるばかり!
車に同乗して、 実際に高齢ドライバーの運転をチェックすることからスタート!
高齢ドライバーに危ない運転をしていることを自覚してもらうためには、実際に、高齢ドライバーの運転する車に同乗し、どこが危ないか伝えてください。 「運転ここに注目リスト」を使えば、運転操作、車体や車幅などの感覚、刻々と変わる道路状況の変化の確認、注意力など運転能力を包括的にチェックできます。家族団らんの時に、いきなり言い出すのは喧嘩の元にしかなりません。
■ Point 2:身体同様、 運転能力も“年を取る”。 定期的なチェックが重要!
「体調どう?」と「車の運転どう?」はセットで日常的に聞くようにしましょう!
高齢者は 「耳が遠くなった」「目が見えづらくなった」など、自分の身体の変化は自覚できたり、口にしたりしますが、車の運転は切り離して考えがちです。親の体調を確認するときは、車の運転についても聞く ようにしましょう。
■ Point 3:プライドを傷つけるような話し方はNG
少人数でじっくり時間をかけて、 納得できる話し合いをもちましょう!
車や免許証を所有することは、頑張って働いたプライドの証です。特に、運転に自信がある高齢男性ドライバーにとっては、運転を心配されていることや免許返納を勧められること自体、プライドを傷つけられたと思い、素直に聞き入れにくいものです。運転や逆走に対して注意や、免許返納については、少人数でじっくり話し合いましょう。
■ Point 4:返納時期を押し付けるのはNG
納得しやすいのは「免許書き換え時」や「車検時」に返納
免許返納を勧めるときは、いつまでに返納しようという時期を決めてみましょう。次の「免許書き換え時」や「車検時」は、免許返納を納得しやすいタイミングといえます 。
■ Point 5:免許返納を決めたら、 思い出づくりをしましょう!
免許証を取得した時同様、 免許返納を楽しいイベントに!
免許返納を決めたら、高齢ドライバーと家族で思い出づくりをしましょう。免許証を初めて手にしたときが嬉しい思い出であるように、免許を手放す「免許返納」の際にもご家族で楽しい思い出を作りましょう 。
高速道路での逆走の現状:自分の家族にも起こりえることです
1. 逆走事故は高速道路で発生した事故全体と比較すると死亡事故となる割合が約40倍
2. 全国の高速道路では年間約200件の逆走が発生
3. 発生した逆走のうち66%が65歳以上のドライバーによる逆走
65歳以上のドライバーがいる家族にとっては特に、逆走は他人事ではなく、一人ひとりが「自分の親や祖父母にも起こりえる」と認識し、関係のある問題だという意識をもつことが、逆走を防ぐ第一歩だ。
NEXCO東日本では、ゲーム感覚で運転に必要な能力をチェックできる3つの方法:「スマヌ法」「時計の絵描画テスト」「ひらがな仲間探しゲーム」を紹介している。高齢ドライバーと家族が一緒にすることで、具体的に家族での話し合いを進めるきっかけとして、活用してほしい。
※1:平成23年~29年の高速道路(国土交通省及び高速道路会社管理)における事故または確保に至った逆走事案
※2:年齢が70~74歳までの方で免許更新を希望する方は、 更新手続前に高齢者講習等を受講する必要があるため