ハーレーダビッドソンがラインナップ拡大のために、電動モデルにも積極的な姿勢を示しています。今秋、全米で同社初の電動モーターサイクル「LiveWire」を2万9799USドル(約326万円)で発売するばかりか、ネバダ州ラスべガスにて2019年1月8~11日(米国時間)に開催された世界最大級の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(ConsumerElectronicsShow,CES)」では、新たに2つのコンセプトモデルを発表しました。
REPORT●青木タカオ(AOKI Takao)
これまでも電動モデルのスケッチを公開しており、同社のeモビリティへのあふれんばかりの意欲を感じずにはいられません。ジャンルレスで既存のセグメントにはこだわっていないことがわかります。
今後10年で100機種のニューモデルをリリース!
2018年7月に発表したハーレーダビッドソンの中期経営計画「More Roads to Harley-Davidson」では、これまでのような大排気量クルーザーやツアラーばかりではなく、総合的なラインナップを構築していく方針を明かしました。なんと今後10年間に、100機種ものニューモデルを投入するというから驚きです。
エレクトリック・ロードスポーツ「LiveWire」の他にも、新たな電動バイクが登場するのは想像に容易く、可能性は無限大と言えるでしょう。ドイツは2030年までに、イギリスやフランスも2040年にはガソリンエンジン車の販売を禁止する方針を打ち出し、モーターサイクルもまた四輪車同様の道を辿っていくはずですからバイクメーカーとしてはEVの開発は避けては通れません。
もちろん現状、EVへの急な転換はいろいろと課題が残り難しいでしょうし、ハーレーダビッドソンの主軸はなんと言ってもビッグクルーザーです。これまで通り大排気量Vツインエンジンを積むツーリングモデルやスポーツクルーザーがメインとなるのは、しばらく変わらないはずです。
500〜1250ccの中排気量クラスも充実していくと明かし、アドベンチャーモデルの「Pan America 1250」をはじめ、975ccのストリートファイターや1250ccのカスタムモデルを2020年以降に順次市場へ導入。成長著しいアジア市場に向けては、250〜500ccの小排気量モデルを開発していることも発表しました。販売網を拡大し、インドやアセアンにブランドを浸透させていく方針です。
ハーレー版「チョイノリ」!?
そして発売予定の「LiveWire」とはまた別に、電動コンセプトモデルを次々に発表しています。電動二輪ビークルが次世代のハーレーダビッドソンに欠かせないと言わんばかりに、プロトタイプが続々と出てくるから昔からのハーレーファンは戸惑っているかもしれません。
新たに公開されたのは「ENGINEERED FOR THE CITY」と呼ばれる都会派モデルと、日常のライディングを楽しむとともに、オフロード走行も想定した「ENGINEERED FOR ANYWHERE」です。クラッチやギヤ操作の要らない軽量モデルで、“二輪車免許なしでも乗りこなせる”と説明されていることからも、ペダルこそないものの電動自転車に近いものと考えられます。
ただし、モーターだけで走れれば原動機付き自転車(原付)として扱われ、e-bike(Electric Assisted Bicycle)が人気のヨーロッパでも免許が不要なのは最高速度25km/hまでのペダルアシスト電動自転車(eペデレック)までです。最高速45km/h未満のスロットル付き電動車は日本の原付と同様に、免許やナンバー登録、税金が必要となります。
しかし免許不要とはいかないものの、原付クラスのようなミニマムなセグメントにビッグバイクの代名詞ハーレーダビッドソンが着手しようとしていることを、今回の電動プロトタイプは意味していたから衝撃的です。
そもそもハーレーダビッドソンは自転車もつくっていたし、ペダル付きのe-bikeもあり得る!?
創業当時のハーレーダビッドソンは自転車も手がけていましたので、もしかしたらペダル付きのeペデレックのリリースもあり得るかもしれません。
ヤマハ発動機はハンドルにスロットルグリップを持ち、ペダルで漕ぐこともできるe-bike(electric bicycle)を免許なし、ナンバーなしで乗れるように法律を変えたいと意思表示しています。もしそうなれば、ヤマハやハーレーダビッドソンらモーターサイクル大手メーカーが、このセグメントに本腰を入れて競い合うのは明白です。
e-bikeは欧州など成熟した交通社会の国々でも急成長していますし、中国やアセアン、インド、アフリカ、南米でも右肩上がりが見込め、これを見逃す手はありません。
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。モトクロスレース活動や多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディア等で執筆中。バイク関連著書もある。