2018年はハーレーダビッドソンが電動バイクを発表し、ホンダからはPCXエレクトリックが発売されるなど、バイクにもいよいよ本格的なEV時代の到来を予感させるトピックが目立った年だった。人々の環境意識の高まりから電動バイクに対する世間の関心も着実に高まってきているようだ。そこで最近の2輪業界を取り巻くEV事情について知り得ることを分かりやすくまとめてみた。
REPORT●ケニー佐川(SAGAWA Kentaro)
PCXが開いた新たな電動2輪の可能性
電動2輪の離陸には時間がかかった
| |
潮目が変わった2018年
メガスクーターでもAT普通二輪で乗れる
このようにムーブメントとしては盛り上がりを見せる電動バイクではあるが、いざユーザー目線に立ったときの現実的な使い勝手がどうなのか、とても気になる部分だ。
まず制度的なことだが、電動バイクの場合、道交法では定格出力0.6kWまでを原付(50cc以下)、0.6kW超1kW以下のものは小型自動二輪車(50cc超125cc以下)、1Kw超は普通自動二輪車(125cc超400cc以下)扱いとなり、それらに対応した運転免許が必要となる。また、道路運送車両法では0.6kW以下を原付一種(50cc以下)、1kW以下を原付二種(50cc超125cc以下)、1kWを超える車両については軽二輪(125cc超250cc以下)として扱われている。
静かでクリーンで加速が良く経済的
クルマだけでなくバイクの世界でも今後電動化が進んでいくことは間違いないだろう。ガソリン車も残るだろうが、奇跡の新技術が発明されない限りは徐々に電動化率が高まっていくのは必然と思われる。そして、コミューター領域からそれは始まるはずだ。
EVのメリットとは何だろう。よく言われるように、まずガソリン車と比べて静かでクリーンなことが挙げられる。電動モーターなので当然、排気音や排ガスが出ない。多くの人々がひしめく都市部では受け入れられやすいわけだ。それでいて、最近の電動2輪は走りもいい。例えば前述のPCXエレクトリックはガソリン車のPCXとスペックで見比べると最高出力こそ半分だが、一方で最大トルクは1.5倍もある。瞬間的に高トルクが出せる電動モーターの特性を生かした発進加速の良さが電動2輪の強みである。これもストップ&ゴーが多い都市部ではメリットになる。さらに大きなアドバンテージとなるのが経済性。同じ距離を走るために必要な電気代をガソリン車と比べると、大雑把に3分の1程度と言われている。原付スクーターは元々燃費がいいのでそれほど大きな負担にはならないが、毎日の通勤に何年も使い続けるとなるとその差も広がってくる。オイル交換なども含めたランニングコストとなるとなおさらだ。
EVの未来はバッテリー性能にかかっている
可及的速やかなインフラ整備が求められている
そしてもうひとつの大きな課題がインフラの整備だ。昨年、実際に電動2輪でツーリングした経験からすると、一番困ったのが充電。まずもって電動2輪用の充電設備がないのだ。4輪用の充電ステーションは最近急速に普及していて、ディーラーやコンビニ、ショッピングモールの駐車場など至るところに設置されているが、こと2輪用に関しては皆無に近い。さらに充電用ソケットを装備した輸入モデルの大型電動スクーターなどでも「前例がない」という理由で4輪用の充電施設を使わせてもらえなかったり、充電ソケットは接続できてもチャージャー側の機械に認識されず結局充電できない場合もあった。また、4輪では一般化している国際基準の急速充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)にも一部のブランドを除いて対応していないことも踏まえ、出先での“電欠”には事実上対応できないなど、現状における電動2輪はユーザーにとって便利で使いやすい乗り物には未だなっていない。
とするならば、電動2輪のさらなる普及のためにはバッテリーを含めた車両の開発とともに、充電ステーションなどのインフラ整備をスピード感を持って進めていくことが求められるだろう。