有象無象のモデルが次々と乱発され、
モデルラインアップの把握が困難を極めたバブル期のマツダ。
そんな中から今回はユーノスプレッソGT-Aをピックアップ。
オートザムAZ-3を兄弟車として持つこのモデルはデビュー当時、
世界最小排気量のV6エンジンを搭載していたが、
たった3ヵ月でミツビシに“下をくぐられた”悲しい過去(!?)を持つのだ。
性能向上を果たした後期型K8-ZEを搭載 パワー感やサウンドが気分を盛り上げる
1989年のロードスター、翌90年のコスモに続き、ユーノチャンネルのスペシャリティスポーツ第三弾として91年にデビューしたプレッソ。兄弟車としてオートザムAZ-3があったけど、プレッソには新開発となる1.8ℓV6のK8-ZE型(140ps/16.0kgm)、AZ-3には1.5ℓ直4のB5-ZE型(115ps/13.5kgm)と、搭載エンジンを棲み分けていた。
93年にマイナーチェンジが行なわれ、プレッソに1.5ℓモデルが、AZ-3には1.8ℓモデルが追加されてエンジンを共通化。K8-ZE型にはパワー&トルクアップを果たし、新たに設定されたグレード、今回の取材車両であるGT-A(とGT-X)に搭載された。
Aピラーを大きく寝かせて全高を1310mmに抑え、そこにV6エンジンが収まっているとは思えないほど低くスランとしたノーズを持つスタイリングは、5ナンバー枠でのワイド&ローを巧みに演出。また、大きく回り込んだ複合曲面ガラスを採用するリヤゲートが個性的なサイドビューとリヤビューの要となっている。塊感と躍動感の共存。プレッソのエクステリアデザインを端的に表現すると、そうなる。
スペシャリティカーは、とかくスタイル優先になりがちだけど、走りでも唸らせてくれるのがプレッソのいいところ。パワーアップを果たした後期K8-ZE型は高回転志向を強めてることもあって、俊敏な吹き上がりとともにパワーを稼ぎ出していく。タコメーターの針を4500rpm以上にキープしておけば、レッドゾーンが始まる7500rpmまで右足の動きに直結したような快感レスポンスを満喫できる。それも、耳を心地よく刺激してくれるハイトーンなエキゾーストサウンドとともに。
それから、ハンドリングもクイック。ステアリング操作量に比例して、オン・ザ・レール感覚を伴いながらノーズをグイグイと内に向けていく。ロードスターを表現する"人馬一体"という言葉があるけど、それはプレッソにも当てはまると、走りながら思った。
というか、ハンドリングに関しては、特に中速以上のコーナーでステアリング操作に対する反応が過敏に思えるほど。攻め込んでいくとリヤの落ち着きのなさが顔を出し始めるけど、腕に覚えのあるひとなら積極的にタックインを使って向きを変えていく…そんな乗り方が合っているように思う。
試乗前はあまり期待してなかったけど、なにごとも食わず嫌いじゃダメなことを痛感。そう、プレッソGT-Aは正真正銘のFFスポーティカーだった!
車両型式:EC8S
全長×全幅×全高:4215×1695×1310mm
ホイールベース:2455mm
トレッド F/R :1460/1465mm
車両重量:1120kg
エンジン型式:K8-ZE
エンジン形式:V6DOHC
ボア×ストローク:φ75.0×69.6mm
排気量:1844cc
圧縮比:9.5:1
最高出力:145ps/7000rpm
最大トルク:16.2kgm/5500rpm
トランスミッション形式:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/ストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR205/55R15