日立金属は、金属積層造形(金属3Dプリンター)用に高耐食ニッケル基合金MAT21を金属粉末化するとともに、それを用いた金属積層造形のプロセス条件を見出し、造形に成功した。半導体製造装置や化学プラントなど高い耐食性が要求される部材において、積層造形によるニアネットシェイプで提供が可能となり、信頼性向上や長寿命化、低コスト化が期待できる。
積層造形(3Dプリンター)は、モノづくり技術を変革する技術として注目が高まっている。近年では、金属材料を用いた積層造形の研究開発も活発化しており、造形品質の向上に伴い航空機エンジン部品やガスタービン部品、自動車部品などへの適用が進んでいる。また、ステンレスやニッケル基合金、アルミニウム合金などの既存材料だけでなく、積層造形の特徴を活かした新しい材料の開発も進んでいる。
日立金属は、2017年4月に持続的成長と社会貢献に資する中長期の先端材料研究開発テーマを推進することを目的として、新しいコーポレート研究所「グローバル技術革新センター Global Research & Innovative Technology Center(略称:GRIT(グリット))」を設立した。GRITでは、材料技術・製品における脅威と機会の両面を視野に入れた中長期研究テーマに注力し、同社の次世代を担う新事業の創生を推進している。その一例として金属積層造形用の金属粉末の開発に取り組んでおり、このたび高耐食ニッケル基合金MAT21®の金属粉末化とその造形に成功した。
MAT21は、日立金属桶川工場が開発した高耐食ニッケル基合金。クロム、モリブデン、タンタルを添加することで耐食性を高めており、半導体製造工場や化学プラントなどの耐食性が重要視される分野では、高特性を持つ合金として注目を集めている。一方で加工難度が高いため切削加工では生産性に課題があることや、また、鋳造では複雑な形状が得られる一方で、合金成分を均質化することが困難だった。
今回、日立金属安来工場で真空ガスアトマイズ法を用いてMAT21を金属粉末化。その粉末をGRITで金属積層造形し評価した結果、MAT21鍛圧材と同等の耐食性を持ち、かつ強度と硬度に優れることが確認できた(表1)。
高い耐食性を維持したまま金属積層造形ならではの自由な設計や周辺部品との一体化、ニアネットシェイプでの提供が可能になることから、半導体製造装置や化学プラント用部材の信頼性向上や長寿命化、低コスト化が期待できる。