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独仏ミッドシップスポーツカーの対決! アルピーヌA110×ポルシェ718ケイマンどちらが買い?


即完売した限定車に代わり、ついにラインナップモデルが導入されたアルピーヌA110。徹底した軽量化と最新のエアロダイナミクスがもたらす走りは既にエンスーの間で話題だ。迎え撃つはライトサイジングターボに換装され生まれ変わったポルシェ718ケイマン。それぞれの走りの個性を探った。


REPORT◉吉田拓生(Takuo Yoshida)


PHOTO◉市 健治(Kenji Ichi)

アルピーヌA110は往年のスタイルを真似たパイクカーではない

 復活なったアルピーヌA110と兵刃を交えるのはポルシェ718ケイマンである。共に2シーターで、2.0ℓターボをミッドシップマウントし、長い歴史を背負ったリアルスポーツカー。そんな共通項とは裏腹に、鉄を主とする骨格を持つケイマンと96%アルミニウム製のA110という違いや、水平対向4気筒縦置きに対し直4横置き等々、根幹となる部分が大きく異なっている点が興味深い。


 


 新型のアルピーヌA110はご存知の通り1960年代から70年代にかけてラリーシーンで活躍したフランスが誇るスポーツカーの代表である。オリジナルモデルはリヤエンジンレイアウトだったが新型はミッドシップになっている。


 

 対するポルシェ718ケイマンは911の派生モデルと捉えることができるが、考えようによってはリヤエンジンからミッドシップへと進化した911と言えなくもない。偉大なる血統を受け継ぎつつ、最新のテクノロジーが込められたフランスとドイツ代表である両者がぶつかり合うのは、半ば必然なのである。


 


 特徴的なスタイリングやダイヤモンドステッチが入ったシートなど、新型A110は原初のA110を上手に模している。だが実際にA110をドライブしてみれば、このクルマがただ往年のスタイルを真似たパイクカーでないことはすぐにわかる。最新のモデルらしく足が良く動き、ロールやピッチの速度は完全に抑制され、ターボエンジンのパワーは7速DCTのマナーに助けられドライバビリティと見事に溶け合っている。

 先にデビューしていたプルミエール・エディションに続いて今回導入されたアルピーヌはA110ピュアとA110リネージの2モデル。ドライブできたのはより簡潔なピュアの方だったのだが、まさに言い得て妙な純粋さを秘めた1台だった。


 


 何しろ新型A110はパワーユニットこそ他のルノー車と共通だが、それ以外の部分はことごとく専用開発となっている。転用とモジュラーのオンパレードの感が強い現代のクルマ造りにおいて、これは首を傾げたくなるような暴挙であり、しかし純粋なスポーツカーを造り出す唯一無二な方法論でもあるはずだ。


 

カーボンを多用したスポーティで洒落たインパネデザイン。「ノーマル」「ス ポーツ」「トラック」の3つのドライブモードが設定されている。ホールド性に優れるサベルト製のスポーツシートは1脚13.1㎏と超軽量。

 アルミニウムシャシー、リクライニング機構を取り去ったバケットシート、スピーカーやサイドブレーキ一体型のリヤブレーキキャリパーにまで専用品を用い、徹底的に無駄を排したことで、A110の車重は1110㎏に留まっている。


 


 新型A110は拳一個分のステアによってひらりと反応し、以前のほとんどのミッドシップ車のように「テールを出さないように!アンダーステア一辺倒!」といった頑なな様子もない。絶えずドライバーに語りかけ自信を与え、スロットルを踏ませてくれるクルマである。


 

砲丸のような冷たさを感じるケイマン

 A110をドライブした後、同じワインディングで718ケイマンをドライブする。硬質なデルリン樹脂から削り出したようなA110の滑らかさに触れた後では、718ケイマンの質感は若干重く、砲金のような冷たさを感じさせる。よく言われるドイツ的な質の高さ、凝縮感と言い換えてもいいだろう。


 


 この感触の違いは良し悪しの問題ではなく、2〜3年ほどタイミングが異なる開発時期の違いでもないだろう。これは60年代のA110とナロー911に試乗してもまったく同じように伝わってくるアルピーヌとポルシェ、フランスとドイツのスポーツカー造りの違いなのである。


 

水平基調のデザインがポルシェの流儀。インパネには7インチのマルチタッチディスプレイを備える。試乗車は4つの走行モードを備える「スポーツクロノパッケ ージ」を装備していた。シートのホールド性も優れている。

 徹底的に硬いボディを造り、パンチの効いたエンジンを低く搭載し、完全に前輪をつぶし切ることができるブレーキシステムを奢る。こうして完成されたポルシェは、各部分のキャラクターが際立つ。


 


 718ケイマンのシートポジションを1ノッチだけ前にしてペースを上げていく。すると加減速による縦方向とコーナリングによる横方向の動きを分けて考えるようになり、ドライビングにメリハリが生まれる。その走りはサーキット的で、またミッドシップでありながら若干リヤエンジン寄りでもある。言わずもがな、718ケイマンの背後には911の影が透けて見えるのである。


 


 一方A110はポルシェとは対照的に各々のコンポーネントが主張しない。いかなる状態でもクルマに一体感が漲っているので、少しリヤが孕んでノーズが切れ込んでも想定内としてコントロールできる。

 しばらくワインディングを駆けまわった後、脳裏に浮かんだA110の性能領域は、縦横に偏っていた718ケイマンのそれとは違い斜め方向にも広がっており、つまり全方位的に苦手領域がない。これはラリー的なキャラクターといえる。


 


 ライバルに対し200㎏以上も軽いという事実は無視できないが、重量を1110㎏に抑えるだけで、これほど魅力的なドライバビリティが宿るとも到底思えない。新型A110は天衣無縫な1台なのである。

ルノー・日産アライアンスが開発した1.8ℓ直4ターボをミッドに搭載する。ブレンボと共同開発したバイマテリアルブレーキディスクを採用したことで計8㎏の軽量化を実現した。

 718ケイマンは6気筒から4気筒への変更に際し、リヤアクスルの位置を変更せず、ドライバーとエンジンの間に隙間が空いている。つまり酷く純粋なアルピーヌと比べた場合には後から辻褄を合わせた感がある。ポルシェがアルピーヌに挑むのであれば、ひと回り小さな専用シャシーを用意しなければならない。


 


 アルピーヌA110のデビューに触発され、ガソリンスポーツカーの最終戦争(?)がはじまる。復活となったフレンチブルーのインパクトは、それくらい大きいのである。




※本記事は『GENROQ』2018年12月号の記事を再編集・再構成したものです。

アルピーヌA110 ピュア


■ボディスペック


全長(㎜):4205


全幅(㎜):1800


全高(㎜):1250


ホイールベース(㎜):2420


車両重量(㎏):1110


■パワートレイン


エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ


総排気量(㏄):1798


最高出力:185kW(252㎰)/6000rpm


最大トルク:320Nm(32.6㎏m)/2000rpm


■トランスミッション


タイプ:7速DCT


■シャシー


駆動方式:RWD


サスペンション フロント:ダブルウイッシュボーン


サスペンション リヤ:ダブルウイッシュボーン


■ブレーキ


フロント&リヤ:ベンチレーテッドディスク


■タイヤ&ホイール


フロント:205/40R18


リヤ:235/40R18


■環境性能


燃料消費率:14.1㎞/ℓ(JC08モード)


■車両本体価格(万円):790~811
ポルシェ718ケイマン


■ボディスペック


全長(㎜):4385


全幅(㎜):1800


全高(㎜):1295


ホイールベース(㎜):2475


車両重量(㎏):1440


■パワートレイン


エンジンタイプ:水平対向直列4気筒DOHCターボ


総排気量(㏄):1988


最高出力:220kW(300㎰)/6500rpm


最大トルク:380Nm(38.7㎏m)/1950~4500rpm


■トランスミッション


タイプ:7速DCT


■シャシー


駆動方式:RWD


サスペンション フロント:マクファーソンストラット


サスペンション リヤ:マクファーソンストラット


■ブレーキ


フロント&リヤ:ベンチレーテッドディスク


■タイヤ&ホイール


フロント:235/45ZR18


リヤ:265/45ZR18


■環境性能


燃料消費率:6.9ℓ/100㎞(EU複合モード)


■車両本体価格(万円):720.2
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