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「これは新しい遊びだ!!」新感覚トライク・カンナムライカー試乗レポ


ヤマハが「NIKEN(ナイケン)」を出し、にわかに活気づく(!?)スリーホイーラーの世界だが、2007年からスポーツトライク「Can-Am Spyder(カンナム スパイダー)」を発売してきたカナダのBRP社がさらなるニューモデルを発表した。今度はなんとオフロードも楽しめる「Rally Edition(ラリーエディション)」も設定する「Can-Am Ryker(カンナム ライカー)」だ。2019年春に日本上陸予定だが、アメリカ・ロサンゼルスで開かれたメディア向け試乗会で、いち早く乗ることができた!!




REPORT●青木タカオ(AOKI Takao) PHOTO●BRP

BRP・Can-Am Ryker(カンナム ライカー)……価格未定

一歩先をいくSFスタイル、カスタムもアレンジ自由!!

 フロント2輪、リヤ1輪のトライクでオフロードを走る……!? いったい、どんな世界が待っているのだろうと、期待と不安でいっぱいになりつつ渡米すると、まるで近未来を舞台にしたSF映画からそのまま抜け出してきたかのようなスタイルの3輪ビークルが目の前に用意された。


 日本で乗れば目立ちすぎるかもしれないが、デザインは洗練されていてかなりスタイリッシュ。人とは違う、個性的な乗り物が欲しいという人にはうってつけだろう。


 興味深いのは多彩な純正アクセサリーが用意され、簡単に外装パーツなどを自分好みにアレンジすることができるという点。カスタマイズする楽しさもあり、さまざまなスタイルに愛車を仕上げられるのだ。


「RYKER(ライカー)」という車名はライダーとバイカーを合わせた造語。ストリートで自分らしさを演出する相棒として、この3輪ビークルを選ぶ。そんな一歩先をいく若者が、日本の都会にも出現することを期待したい。発売は来春だ。

 さぁ、乗ってみよう。ライディングポジションは自在に調整可能。というのも、ハンドルとステップ位置を前後に動かすことができるUFitシステムによって、好きなところにグリップとフットペグをセットできるのだ。


 乗り手の体格を問わず、誰でもマシンにフィット。工具不要で即座にポジション変更できるので、ノンビリ流すときはゆったりとしたクルージング姿勢に、スポーティに走りたいときは前傾気味にしてステップもライダー寄りにするという具合に、気分や用途によってチェンジするのもいいだろう。

クルマのAT免許で乗れ、操作も取り回しも簡単

 旋回時はハンドルを切って曲がり、ナイケンのように車体は寝かし込まない。停止時も自立し、足を地面について支える必要はないから、足着き性を気にする必要はないし、リバース(後退)ギヤもあるから押し引きで体力を使うこともない。


 そもそもクルマのAT限定普通免許で乗れるから、身近で手軽。操作もスクーター感覚で、右手のアクセルグリップを捻れば前に進むというイージーさ。レバー類はなく、右足のフットペダルを踏めばブレーキが前後連動で効く。

ワインディングを得意とするコーナリングマシンだ!

 カリフォルニアの陽光降り注ぐ海岸ルート「パシフィック・コースト・ハイウェイ」を北上する。爽やかな潮風が心地良く、クルマとはやっぱり違う。感じる風はモーターサイクルと同じだ。


 このまま海を眺めながら州道1号線を進めばサンタバーバラを抜け、やがてはサンフランシスコへ辿り着くが、山側に右折し「マルホランド・ハイウェイ」に入っていく。ロサンゼルスの走り屋たちが集まることで有名なワインディングルートで、手強いコーナーが50マイルも連続する。


 しかしライカーは、水を得た魚のようにカーブを駆け抜けていくから驚いた。ノーズからグイっと向きを変えて、エンジンパワーで押し進めていくダイナミックなコーナリングが楽しめるのだ。




 旋回時の操作は基本的にオートバイに近く、進行方向の先へ視線をしっかりと向け、下半身でのマシンホールドも欠かせない。ただし2輪車のようなセルフステアはなく、コーナリング時はハンドルバーのイン寄りのグリップを引くか、アウト側を押し出す力が必要となる。


 アクセルを開けるタイミングとハンドルの切れ角、シートへの荷重をバランスさせるマシンコントロールは奥が深く、そのスポーティなライディングにどんどんのめり込んでいってしまう。慣れるまでは腕に過剰な力が入るが、すべてをバランスさせていくと腕力は少なく済み、快適に操れるから面白い。気がつけば、夢中になって迫り来るコーナーを次々とクリアしている。もう、病みつきなのである。

オフロード性能も高い次元にある!!

 搭載するエンジンはロータックス製の900cc直列3気筒と600cc2気筒の設定で、今回乗ったのは900ccモデル。低回転域から太いトルクを発揮し、6300rpmで76Nm、7100rpmで77HPの最大トルク/最高出力を発揮する強力なパワーユニットだ。


 オフロード走行も想定したラリーエディションは900ccモデルにのみラインナップされ、スタンダードよりクッションストロークの長い前後サスペンション(フロント137→162mm、リヤ150→175mm)や強化ホイール(前後16→リヤ15インチ)、ハンドガード、スキッドプレートなどを標準装備する。


 エンジンモードは「エコ」と「スポーツ」がスタンダードで選べるが、ラリーエディションではトラクションコントロールの介入が少ない「ラリーモード」もさらに選べ、これがオフロードで威力を発揮した。




 ダートに入ると、その走破性の高さが徐々にわかってくる。コーナーではいとも簡単にリヤが流れ、カウンターステアを当ててカーブを曲がっていけるのだ。


 2輪車のようにフロントが滑って転倒するリスクがないから、ハンドルを強引に切ってもお構いなく旋回していく。まさに新感覚の操作感で、これは四輪バギーに少し似た感覚。そもそもカンナムのATVは北米や欧州、豪州でも高いシェアを誇り、コンペティションの世界でも実績があり、この高いオフロード性能はそこからフィードバックされたもの。


 CVT(無段変速機)の滑らかさ、荒れた路面での衝撃吸収性、いずれも高い次元にあり、ラリーエディションはダートを本気で遊べる実力の持ち主だ。

アウトドアを満喫する次世代アクティビティ

 オンでもオフロードでも、ステージを問わずにスポーティなライディングが楽しめるライカーは、これまでなかった新しいアクティビティ(遊び・体験)を提案している。普段の街乗りもいいが、休日は郊外に出掛け、未知なるトレールへ入っていくアドベンチャーツーリングが楽しめそうだ。


 ダートもガンガン走るならラリーエディションを、そうでないならスタンダード。いずれも2019年春に国内導入予定で、価格は未定だが、よりリーズナブルで手軽な600ccモデルを選ぶのもいいだろう。そして、2輪が体力的に厳しくなったというベテランライダーにもオススメしたい。ライカーなら仲間との林道ツーリングにも出掛けられる。

ディテール解説

55Wのハロゲン式ヘッドライトをデュアル装備した眼光鋭いフロントマスク。モーターサイクル同様、常時点灯式とし、被視認性を高めている。

4.5インチディスプレイを採用した機能的なデジタルメーター。速度、エンジン回転数、オド、トリップ、ギヤポジション、燃料計、時計などを表示する。

エンジンモードは「ECO」や「SPORTS MODE」のON/OFFをスタンダードに、ラリーエディションでは「RALLY MODE」も選べる。

緩やかなアールが付いたバーハンドルはブラック仕上げ。ラリーエディションではハンドガードを追加装備する。レバー類はなく、操作はイージーだ。

ハンドルを前後にスライドさせ、マウント位置を調整できるUFitシステム。ハンドルクランプのレバーを持ち上げればフリーになり、工具なしでアジャストが可能だ。

搭載されるエンジンは、バルブ機構をDLCコーティングし、摺動抵抗を極限まで低減したロータックス製の900cc水冷直列3気筒。水上バイク Ski-Dooなどでも実績のあるパワーユニットだ。

スタンダードモデルのフロントサスペンションは、137mmのストローク量を持つザックス製。上下一対のアームで車輪を支持するダブルウィシュボーン式だ。

ラリーエディションでは、ストローク量を162mmに伸ばしたKYB HPG 36mmショックにフロントサスペンションがグレードアップされる。ブレーキは270mmディスクとニッシン製2ピストンフローティングキャリパーの組み合わせ。

シートもラリーエディションでは専用のスポーツタイプ。シート高は615mmで、スタンダードより18mm高い。オプションでパッセンジャーシートやバックレストも追加可能となっている。

ファイナルドライブはシャフト式で、スイングアームは片持ち式。スタンダードではストローク量150mmのザックス製ショックと16インチホイールの組み合わせ。

15インチの強化ホイールをラリーエディションでは採用。サスペンションもグレードアップされ、175mmのストローク量を持つKYB HPG 40mmを備える。

フットペグもUFitシステムによって、工具を使うことなくマウント位置を調整できる。ブレーキはフットペダルで操作し、3輪が連動し制動される。

ボンネットにはグルーブボックスがあり、USB端子を2つ装備。ハンドルまわりにスマートフォンなどをマウントし、充電することを想定している。

テールエンドもスッキリとしていてスポーティ。レンズ内にブレーキ、テール、ウインカーをLED式で縦列配置する。BRPのエンブレムも誇らしげだ。

■主要諸元■


全長/全幅/全高 2,352mm/1,509mm/1,062mm


シート高 597(615)mm


軸間距離 1,709mm


最低地上高 102(112)mm


車両重量(乾燥) 280(285)kg


原動機種類 水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ


気筒数配列 直列,3気筒


総排気量 900cc


内径×行程 74.0mm×69.7mm


圧縮比 未発表


最高出力 57.5kW(77HP)/7,100rpm


最大トルク 76Nm(7.75kgf・m)/6,300rpm


始動方式 セルフ式


潤滑方式 ウェットサンプ


燃料タンク容量 20L


吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション


クラッチ形式 湿式, 多板


変速方式 CVTオートマチック


タイヤサイズ(前/後) 145/60R16/205/45R16(205/55R15)


制動装置形式(前/後) 油圧式ディスクブレーキ/油圧式ディスクブレーキ


懸架方式(前/後) ダブルウィッシュボーン/スイングアーム


※( )はRally Edition


テストライダー:青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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