今夏、日本にもデリバリーが始まったモトグッツィの「V7 III ミラノ」に乗った。トラクションコントロールやABSといった現代的な装備を搭載しているものの、そのテイスティな乗り味はホンモノのクラシックバイクだと頷いてしまう。最新の排出ガス規制「EURO4」に適合しながら、こんなにも古めかしい。環境規制のため、昔ながらのバイクはもう作れない……。そう思って諦めてきたが、グッツィに限ってはそんなことなかった!
REPORT●青木タカオ(AOKI TAKAO) PHOTO●太宰吉崇(DAZAI YOSHITAKA)
モトグッツィ V7 III ミラノ……1,148,000円
ネオクラシックとかモダンレトロなバイクが注目を集めているが、昔からずっとスタンスを変えていないのが、現存するイタリア最古参のモーターサイクルブランド「MOTO GUZZI(モトグッツィ)」だ。オーソドックスな空冷OHV2バルブ90度Vツインを縦置きで車体に積み、ファイナルドライブをシャフト駆動にするという方式は、1967年の誕生した初代『V7』から変わらない。
昔も今も大きく変わらないシルエット
前置きが長くなってしまったが、モトグッツィはそんな技術を現代に受け継ぎ、半世紀以上が経った今も「V7シリーズ」をラインナップしている。
現行は2007年のミラノショーで発表され、現代の技術で蘇ったもの。鋼管ダブルクレードルフレームに、『ブレヴァV750』譲りの744ccOHV2バルブエンジンを搭載し、日本には2008年にセミアップハンドルの『V7 クラシック』がまず上陸。ただし排ガス規制との兼ね合いで輸入が一時中断され、規制対応モデルが発売されたのは2010年から。2015年にはトランスミッションを6速化した「V7 II」系へと進化し、2チャンネルABSやトラクションコントロールもこのとき新採用した。そして2017年に環境規制EURO4に適合しつつも10%の最高出力アップを果たした「V7 III」へとバージョンアップ。III となって初めて登場したのが『V7 III ミラノ』、日本のユーザーには今夏からデリバリーが始まったばかりのニューモデルだ。
シックなモノトーンだが光沢のあるタンクカラーで、マフラーやパッセンジャーグラブはクローム仕上げ。ブラックアウトされたエンジンによってコントラストが強調され、光沢がいっそう際立つ。前後フェンダーやサイドカバーはアルミ製で、隅々にまで高級感があり、落ち着いたムードのスタイル。バイク好きならモトグッツィだとすぐに分かるだろう、昔から変わらないシンプルな装いに好感が持てる。
エンジンを始動し、まず試してみたくなるのが、アクセルを吹かしてブルンっと一発。相変わらず車体が右へグラッと傾き、このクセがたまらない。シフトはスムーズに入り、乾式単板クラッチをスパンと繋ぐと、ゴロンゴロンと慣性マスの大きいクランクシャフトが回っているのが分かる気がして、マイルドなトルクと鼓動が心地良い。
街乗りの速度域では車体を振るわせているが、ハイスピードレンジに入ると振動がすっと消えて快適なクルージングが楽しめる。トップギヤ6速での100km/h巡航は3700rpmほどで、直進安定性の高さや90度Vツインの真価を充分に発揮するのは、もっとスピードを上げてからだ。
イタリア気質感じる身のこなしの軽さ
ディテール解説
■主要諸元■
全長×全幅×全高 2,185mm×800mm×1,110mm
シート高 770mm
車両重量 213kg
エンジン 4ストローク空冷90° V型2気筒OHV 2バルブ
総排気量 744cc
ボア × ストローク 80mm×74mm
最高出力 38kW (52HP) /6,200rpm
最大トルク 60Nm/4,900rpm
燃料供給方式 マレリ製電子制御燃料噴射システム
点火方式 電子制御イグニッションシステム
潤滑方式 ウェットサンプ
始動方式 セルフ式
トランスミッション 6速リターン
クラッチ 乾式単板
燃料タンク容量 21ℓ
フレーム 高張力鋼管モジュラーダブルクレードル
サスペンション(F) φ40mm油圧式テレスコピックフォーク ホイールトラベル130mm
サスペンション(R) 油圧式ツインショックアブソーバー スプリングプリロードアジャスタブル ホイールトラベル 93mm
ブレーキ(F) 320mmステンレスシングルディスク ブレンボ製異径対向 4ピストンキャリパー
ブレーキ(R) 260mmステンレスディスク フローティング2ピストンキャリパー
ホイール(F) 2.5 x 18 アルミ製
ホイール(R) 3.5 x 17 アルミ製
タイヤ(F) 100/90-18
タイヤ(R) 130/80-17
製造国 イタリア