現在絶賛上映中の劇場版「フリクリ オルタナ」「フリクリ プログレ」。劇中に登場するハルハラ・ハル子のキイロいベスパについてのお話です。じつはこのベスパは、180SSという60年代のスポーツモデルで、ベスパフリークには一目置かれているバイクだったりする。その辺りをちょっとだけ解説していこう。
TEXT●大家伝(OYA Den)
劇場版「フリクリ オルタナ/プログレ」とは!?
全世界待望「フリクリ」の完全新作! 伝説のアニメが再び世界を揺るがす!
2000年、全6巻のOVAとして発表され、たちまち世界中のアニメファンを熱狂させた名作「フリクリ」。鋭いデザインワーク、予測のつかない演出、そして「the pillows」のオルタナティヴ・ロックのメロディーを乗せたダイナミックなアクションシーンの数々は、日本国内だけではなく、全世界に大きなインパクトを与えた。
その「フリクリ」が2018年、新たに劇場版「フリクリ オルタナ」、劇場版「フリクリ プログレ」 として公開される。
新作の制作にあたっては、スーパーバイザーを「フリクリ」の生みの親・鶴巻和哉、キャラクター原案を貞本義行が務め、the pillowsが主題歌・挿入歌を提供する。
劇場版「フリクリ オルタナ」の監督には、「幼女戦記」で重厚な戦闘描写を描き、「パンチライン」ではポップな演出を見せた上村泰が務める。そしてOVAシリーズに引き続きハルハラ・ハル子を新谷真弓がパワフルにクレイジ ーに演じる。
劇場版「フリクリ プログレ」 の監督には、荒井和人・海谷敏久・小川優樹・井端義秀・末澤慧・博史池畠ら6名 のフリクリ愛溢れる個性豊かなクリエイターが集結。劇場版「フリクリ プログレ」 ではなんとハル子が二人に分裂する。そのうちの1人、ハルハ・ラハルを林原めぐみが、もう一人のジンユを沢城みゆきが演じる。
狂信的なフリクリ愛を持つクリエイターたちによる劇場版「フリクリ オルタナ」、劇場版「フリクリ プログレ」。ダイナミックでソリッドでポップにスクラップしつつビルディングする本作で、再び世界を驚愕させる……はず!
最大の特徴はエッジの効いた巨大なヒップライン。どのベスパも丸くて大きいヒップまわりだという印象だが、180SSは「一番デカイ」と言って差し支えないだろう。また設定色は青、白、赤の3色のみ。残念ながらハル子のキイロは、日本国内への正規入荷モデルに純正設定なし。●1964年−1968年生産
ピストンバルブ最終型のスポーツモデル「180SS」
1946年に市販第1号モデルがデビューして以来、70年超という長い歴史を持つベスパ。しかも一貫して「かわいい」といったイメージで語られることが多いのもベスパの特徴と言えるだろう。
そんなベスパにもモデル名にスポーツを冠したモデルが存在し、ベスパマニアからは熱い注目を集めているのをご存知だろうか?
150GS、160GS、そしてハルハラ・ハル子の愛車でもある180SSがそう。GSはグランスポルト(スポルト=スポーツ)を意味していて、150の後継として160が登場。どちらも排気量を表す数字であり、その最終形態として1964年から1968年まで生産されたのが180SS(スーパースポルト)だ。
2ストエンジンを搭載していて、吸気方式にはスポーツフィーリングが味わえるピストンバルブを採用。ピストンバルブ方式ではツキの良さとダイレクトなパワー感が得られることから、スポーツ志向のベスパファンから好まれる傾向にある。180SSの次のモデルからはロータリーバルブ方式に変わっているので、ベスパのスポーツモデルにしてピストンバルブ最終モデルという見方もできる。
さらに採用モデルが圧倒的に少ないスクエアヘッドライトモデルであるところが極めつけだと言えるだろう。
要するに長いベスパの歴史において、硬派かつ異色のスポーツモデル、それが180SSなのである。ハルハラ・ハル子に敢えて"かわいい系"のベスパを充てがわず、対極の位置づけとも言える180SSを起用する妙。そんなところにも制作サイドの拘りをヒシヒシと感じてしまうのであった。