帝人は、高機能繊維で補強した集成材*1 であるAFRW(Advanced Fiber Reinforced Wood)*2 を使用した世界初の建築物を、同社の東京研究センター(東京都日野市)敷地内に建設することとした。
*1 集成材: 木材の大きな節や割れなどの欠点を取り除き、その繊維方向を平行に揃えて、厚さ、幅、および長さの方向に接着した木質材料で、住宅から大型建築物まで幅広く利用されている。
*2 AFRW: 帝人が2015年に開発した、高機能繊維を用いた複合材料を集成材に貼り合わせた集成材。その剛性は木材の2倍以上で、建築材の梁などに使用すると、建築物の曲げ性能や意匠性が向上することから、幅広く活用されることが期待されている。
1.背景
近年、建築物の安全性に対する要求の高まりを受け、地震による建築物の揺れを低減するため、木質構造による軽量化への期待が高まっている。また、木質材料は、質感(ぬくもり)や意匠性などの外観性、快適性に加え、CO2を吸収保持することによる温暖化対策への効果も期待できるため、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の観点からも将来性が注目されている。こうした中で、今年創立100周年を迎えた帝人は、AFRWを使用し、保有する技術やノウハウを駆使することにより、このたび世界初となる建築物を建設することとした。
2.当該建築物について
このたび建設する建築物は、AFRWを使用することにより、木材のぬくもりでストレスの低減を図るとともに、室内に柱を設置せず、自然光を効果的に採り込むことで、開放的で快適性の高い空間の実現を目指す。建築のエキスパートである前田建設工業、ならびに高知大学 構造工学研究室の助言・協力を得て建設を進め、完成後は7年間にわたり、前田建設工業と共同でAFRWの接着安定性や振動時の耐久性などについて実証実験を行う。この建築物は、AFRWの実用1号物件として、国土交通省の「平成29年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に採択されている。また2018年5月に第三者評価機関による建築物の性能評価、7月に国土交通大臣による認定取得を経て、本年10月に着工予定。
3.今後の展開
帝人は、このたびの建設および完成後の実証実験を経て、木造建築物へのAFRWの普及に向けてノウハウを蓄積し、2020年頃までに一般建築物への実用化を目指す。また、自社の有する化学の力を駆使することにより、未来の人の幸せな暮らしへの貢献を図り、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」を目指す。