SCR950は60年代に流行したスクランブラーのイメージが投影されたヤマハの個性派ネオクラシックモデルである。「毎日を冒険しよう」というキャッチフレーズのとおり、普段は都会を走り回りつつ、週末はツーリングがてらちょっとしたラフロードにも踏み込んでみる。そんな自由な走りが魅力だ。
REPORT●ケニー佐川(SAGAWA Kentaro) PHOTO●山家健一(YANBE Kenichi )
ヤマハ・SCR950 ABS ……1,060,560円
アメリカンベースの土系という変わり種
見た目的には、ゼッケンプレート風サイドカバーや小ぶりなタンクなどがアメリカで人気のダートトラッカーを思わせなくもない。ベースはいわゆる“アメリカン”(かつて日本ではクルーザーモデルをそう呼んだ)のBOLTなのだが、高めのワイドハンドルにスリムなのフラットシートを装備しているため、跨ったときのライポジはオフロードバイクに近い感じ。視界が広くて気持ちいいし、ついスタンディングで乗りたくなる。ボディは大柄で車重も252kgと重めなのでジャンプやスライド走行は流石に厳しいが、オン&オフ用のブロックタイヤなので、砂利道やちょっとした林道ツーリングぐらいなら十分楽しめそうだ。
ぐっとくる骨太な空冷Vツインサウンド
ワインディングでは意外な俊足ぶりも
フロント19インチのスポークホイールと正立フォークによるハンドリングは大らかで牧歌的である。ただ、ベースとなったBOLTは元々かなりスポーティなクルーザーだったのに加え、SCRではリヤタイヤが17インチに大径化(ボルトは16インチ)されたことで、さらに走りに磨きがかかった。リヤタイヤが細め(140サイズ)なので、重量級にしては倒し込みが軽快かつ接地感が分かりやすいのもメリット。こうした素の良さを持っていることもあり、その気になればワインディングでも他のスポーツモデルと同等のペースで走れてしまう俊足ぶりも披露する。前後シングルディスクの効きも穏やかで扱いやすく、ABSが装備されているのでウエット路面でも心強い。
どこか懐かしいスタイルに味わいのある鼓動感。流行りの電子制御も付いていないが、逆にその単純さがいい。難しいことを考えずにただひたすら走るのが気持ちいい、バイクらしいバイクだ。
ディテール解説
主要諸元
認定型式/原動機打刻型式 2BL-VN09J/N609E
全長/全幅/全高 2,255mm/895mm/1,170mm
シート高 830mm
軸間距離 1,575mm
最低地上高 145mm
車両重量 252kg
燃料消費率*1 国土交通省届出値
定地燃費値*2 31.0km/L(60km/h) 2名乗車時
WMTCモード値 *3 21.2km/L(クラス3, サブクラス3-2) 1名乗車時
原動機種類 空冷・4ストローク・SOHC・4バルブ
気筒数配列 V型, 2気筒
総排気量 941cm3
内径×行程 85.0mm×83.0mm
圧縮比 9.0:1
最高出力 40kW(54PS)/5,500r/min
最大トルク 80N・m(8.2kgf・m)/3,000r/min
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 4.30L
燃料タンク容量 13L(無鉛レギュラーガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式 12V,11.2Ah(10HR)/YTZ14S
1次減速比/2次減速比 1.674/2.333
クラッチ形式 湿式, 多板
変速装置/変速方式 常時噛合式5速/リターン式
変速比 1速:3.066 2速:2.062 3速:1.578 4速: 1.259 5速:1.041
フレーム形式 ダブルクレードル
キャスター/トレール 29°00′/130mm
タイヤサイズ(前/後) 100/90-19M/C 57H(チューブタイプ)/ 140/80R17M/C 69H(チューブタイプ)
制動装置形式(前/後) 油圧式シングルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック/スイングアーム
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ ハロゲンバルブ/12V, 60/55W×1
乗車定員 2名