今から15年ほど前に日本初の車載用パソコンとして鳴り物入りで登場したのが、クラリオンの「アゼスト オートPC カディアス」。ネットワーク機能を搭載し、自宅のパソコンとデータ共有ができるなど先進性にあふれるモデルだった。
REPORT●浜先秀彰(HAMASAKI Hideaki)
時代の最先端を目指した車載専用システム
今の時代はパソコンと同等の能力を備えたスマートフォンやタブレットを手軽に車内に持ち込めるが……今から15年前の2003年に車内で使えるパソコンとして開発されたのが、「オートPC カディアス」だ。
一見したところインダッシュ型モニターを搭載したカーナビのようだが、これは1999年にアメリカで世界初の車載用パソコンとしてリリースされた「オートPC」を改良した第2世代モデルとなる。OSにはWindows CE for Automotiveを採用し、ソフトのインストールやバージョンアップによりさまざまな機能を追加可能。さらに外部からの情報取得ができるよう携帯電話接続ポート、USB、PCカードスロットなどを備え、システム拡張を考えた仕様となっていた。
メールの送受信やハンズフリー通話などの利用も
目玉となっていたのはパソコンとのデータ共有で、アウトルックからのデータ読み込みによってスケジュール管理やアドレスブックを利用してのハンズフリー通話、メールの送受信などが行えた。さらに専用ブラウザでホームページの閲覧なども可能だった。もちろん、このような機能は当時のカーナビには搭載されていないものだ。また、コンパクトフラッシュやメモリースティックなどメモリーカードに収録したMP3/WMAファイルの音楽再生ができたのも当時は珍しかった。ナビ機能も利用できたが携帯電話や通信カード経由で地図や検索データの取得を行ったり、あらかじめ切り出した地図データをメモリーカードに収録して使用する独特のスタイル。
このほか、カディアスエディターという専用PCソフトを使ってカディアスで利用するための音楽ファイルや画像ファイルなどの編集・作成も行えた。
未来を見据えたシステムではあったが、車内で活用できる機能がそれほど多くなかったことや通信速度が遅いこと、通信費用がかかること、そして33万8000円(当時)という製品自体の高価格などから販売は苦戦。残念ながらフェードアウトするように数年で姿を消してしまった。