2018年8月度の国内新車販売台数の値が発表された。1位はホンダのN-BOXで15509台、2位はスズキのスペーシアで10974台。この2台を詳細に比べてみよう。
PHOTO:平野 陽(Hirano Akio)/神村 聖(Kamimura Satoshi)
日本で売れているクルマが軽自動車で占められているのはよく知られるとおり。そのなかでも軽ハイトワゴンはとくに人気があり、N-BOXとスペーシアは両横綱とも言える存在だ。
当然ながら購入に際して両方を検討する方も多いと思われる。しかしホンダのディーラーにスペーシアは置いていないし、スズキの販売店にN-BOXが比較用に展示されてはいない。「N-BOXはどうだったっけ」「スペーシアのここが思い出せない!」なんていう悩みも少なくないと思われるので、同じ目線で2台を比較してみる。なお、掲載する2台はともに「カスタム」グレード。
コックピット
水平基調のスペーシアに対して、N-BOXは起伏が豊かな印象。いちばんの違いはメーター配置で、スペーシアがコンベンショナルなインパネなのに対してN-BOXはハイマウント構造としている。
ドライバーとしての視界は2車ともに充分に意を払っていて、Aピラー〜A'ピラー間のウインドウ、ドアマウントのサイドミラー、左Aピラー内側に備える死角確認凸面鏡など、前方〜側方視界を確保している。車体形状がともにスクエアなので見切りもよく、小さな躯体とも合わせて運転に不安は覚えないだろう。
スペーシアのチャームポイントでもある助手席側グローブボックスは、スーツケースを模したデザイン。リッドをガバリをあけると大空間が現れる。走行中にものが暴れないのがふた付きのいいところ。ビードを模したふたに対して、サイドフレームに相当するシルバーのフレームの部分の意匠は、外装サイドにもあしらわれている。
スペーシアのもうひとつのチャームポイントがセンターサーキュレータ。左右と中左側のルーバーはよく見かける桟形状のスクエア型なのに対し、中右側のドライバー前に備わるルーバーはサークル型とした。センターダイヤルを回すと風量をコントロールできる仕組みで、後部座席にも風を届けられるようなベーンの仕立てがポイントだ。
フロントシート
前席構造は2台ともにベンチ型。運転席側の右側が延長されていて、助手席側と一体化しているイメージだ。センターアームレストも装備する。
そして2台ともに、ベンチシートに加えてシフトレバーをハイコラムマウントにすることで前席左右のウォークスルー性を高めている。そのフロア部については、N-BOXのほうがよりフラットな印象。ただしスペーシアはセンターコンソールの幅が狭いので実際の乗り越え感は楽だろう。
シートの形状と意匠はカスタム仕様だけにゴージャスなイメージ。とくにN-BOXのサイドサポートの張り出しが印象的だ。対するスペーシアはフラットなシート形状であり、室内の広さ感を高めている。
リヤシート
続けてリヤシート。軽ハイトワゴンとなると後席は特等席とも言えるような空間の仕立てで、とくに強調されるのがフットスペースとヘッドクリアランス。後者についてはもはや小学生が室内で立てるというレベルである。4名乗車だからカップルディスタンスにも充分な余裕がある。
フットスペースは、大型セダンが尻尾を巻いて退散するくらい。足を伸ばして組んでもなお──というだけの空間を実現している。スペーシアの後席ニースペースは最大約300mm、N-BOXは約450mm。これだけの数字の違いが洗われるのは、N-BOXが助手席にスーパーロングスライド仕様の設定があるため。
後席の構造にも2車には違いがある。スペーシアのシートはフラット形状としていて、ユーティリティに優れる印象。対するN-BOXは少々のバケット形状としていて、さらに左右独立型のアームレストも備える。座面の設え方にも違いがあり、N-BOXはオーバハングしているので最後部までスライドしたときにも足入れ性に優れる。大きな左右ポケットも使いやすそう。
ラゲッジスペース
車体が小さく乗員空間が広いとなれば、ラゲッジスペースが乏しくなるのは仕方ないところ。2台ともに最大寸法はほぼ同じで、スペーシアの荷室高さが約1150mm、N-BOXが約1170mm、後席を最後部にセットしたときの奥行きはスペーシアが約310mm、N-BOXが約435mmである。ちなみに、スペーシアはシートを前にスライドさせると約520mmを確保する。
後席をたたむと、さすがの大空間が現れる。スペーシアは最小幅@ホイールハウスで約850mm、同じくN-BOXは約900mm。最大奥行きはスペーシアが約1380mm、N-BOXは1500mmを実現した。
寸法ではN-BOXが勝っているものの、スペーシアのリヤドア開口部の形状は注目に値し、側部がまっすぐ下まで続いているのが美点だ。開口部が直線的なのは使い勝手にも優れているのは明白で、それが下側ならなおのこと、重量物などを運び入れるときに重宝するのは間違いない。リヤシートの背面形状がスペーシアのほうが広く、倒したときのフロア形状により面積が稼げているのもポイントである。