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大幅改良を実施した新型アテンザは、フルモデルチェンジに近いほど中身の進化に変更をあてている。輸入車にセダン・ステーションワゴン系の国内シェアを奪われつつあるが、勢いのあるマツダが国産車代表として巻き返しを図ることができるのか。モータージャーナリスト・遠藤正賢こと通称「DO(ドゥ)」が、その進化をチェックした。
(TEXT&PHOTO@遠藤正賢(Masakatsu ENDO)/MOVIE:U・N・A)
マツダが謳う「大幅改良」とは、一般的な言い方に置き換えれば「マイナーチェンジ」なわけだが、それが他社では単に新鮮さを取り戻すためだけの「フェイスリフト」、つまりデザイン変更に留まることが多い。しかし、同じく5月に大幅改良されたCX-3と同様、改良の内容は「中身の進化」だ。新型アテンザは、マツダが現在持ちうる最新、最良の技術を反映させた、集大成のような一台となった。モーターファン・イラストレーテッド誌vol.141号で各機能のディテールは紹介しているので、今回はインプレッションを中心にお伝えしたい。
まず車内に入りドアを閉めると、フルモデルチェンジしたかのようなインテリアの変更に驚く。従来までは、中央の吹出口とエアコン&オーディオ操作パネルがインパネの左右を分断していたが、新型ではクロームメッキモールとセンターパッドをステアリングコラム両端からドアトリムまで連続させた伸びやかな水平基調の造形に。センターコンソールも各部品の分割線を削減するなど、次世代商品群が出てきても「旗艦車種」と言い張れるほど、視覚のみならず触覚で感じる質感も高めている。
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それは、シートからも同様に伝わってくる。こだわったウレタン材の採用と身体全体を優しく支えるよう全面的に設計変更されたことで主張しすぎずしっくりと身体に馴染む。走り出しても吸遮音材の使用範囲を拡大しつつボディや内装材の穴を削減して徹底的に向上させたキャビンの静粛性とあいまって、乗員を心地良くもてなしてくれた。
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従来モデルとの比較試乗をさせてもらったが、走りも明確な違いがわかる。各骨格の環状構造の連続性を高めつつフロアパネルやリヤホイールハウスの板厚をアップしたボディ、よりスムーズに動くよう全面的に設計変更されたサスペンション、サイドウォールの剛性を下げトレッドの剛性を向上させたタイヤなどが、あらゆる路面と速度域において不快なNVHを遮断する。リニアかつ安定感に満ちたハンドリングはとても気持ちいい。
今回試乗したのはワゴンの2.5ℓガソリンFF車、セダンの2.2ℓディーゼル4WD車で、いずれも最上級グレード「Lパッケージ」の6速AT車だったが、両車ともアクセルのツキと伸びが顕著に進化しており、ガソリン車でも充分以上、ディーゼルでは有り余るほどの動力性能を堪能できる。
しかもボディ・シャシーのポテンシャルが上がりタイヤの接地性が向上したことで、ディーゼル車(フロントローターを1インチ拡大)以外は変更されていないはずのブレーキの初期制動力がアップし、コントロール性も高くなっていた。大幅改良されたアテンザはすべてにおいて、まるで車格が2ランク上がったかのような上質感を与えてくれた。
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ただし、より好バランスだったのはワゴンの2.5ℓガソリンFF車。各部のセッティングはもっとも売れ筋かつ車重が全仕様の中間に位置するディーゼルFF車を基準として、エンジンと駆動方式、重量ごとに変えているというが、理論的にはハンドリング、乗り心地、静粛性いずれにおいても不利なはずのワゴン2.5ℓガソリンFF車が、とくに突き上げとロードノイズの少なさで勝っていた。
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