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ポルシェで2000kmのグランドツーリング! 第1回「混沌のバンコクからいざ出発!」


ポルシェでバンコクからシンガポールまでの2000kmを走り抜ける。そんな魅力的な旅の誘いに、断る理由なんてあるわけが無い。猛暑の日本を抜け出して、けれどもっと暑いバンコクに降り立ったのは、7月中旬の話である。

タイからポルシェの旅が始まったのだが……

 まずはスタート地点となるバンコクでの週末を、ポルシェのイベント三昧で過ごした。今年、創立70周年を迎えたポルシェは、それを記念して世界中でイベントを行なっている。そのうちポルシェ アジアパシフィックは、タイの首都バンコクにてレジェンドドライバーのジャッキー・イクスを招き「スポーツカー・トゥギャザー・デイ」を開催。ヒストリックモデル、ミュージアムカーの展示、ステージイベントなどを行ない、来場者にスポーツカーの歴史と文化を改めてアピールした。




 また、その会場の隣のスペースでは東南アジア最大規模のポルシェ ユーザーイベントである“Das Treffen”が開催されていた。「こんなにあったんだ?」と驚くほどの空冷モデルをはじめ、多数のユーザーカーが集まった眺めは壮観そのもの。東南アジア各国のポルシェクラブがツアーを行ない、凄まじい数の車両が域内から集結していたから、この日のバンコクはまさにポルシェ一色という雰囲気だったのだ。




 ポルシェ アジアパシフィックの設立は2001年。ブルネイ、カンボジア、フランス領ポリネシア、インドネシア、マレーシア、モンゴル、ニューカレドニア、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、ベトナムの12か国をカバーし、2017年には合計5390台を販売したという。日本の場合と同様に、それ以前からポルシェの販売は行なわれており、たとえば今回の舞台となったタイには60年代の356の時代から輸入が行なわれていたそうである。

 続く日曜日はバンセン ストリートサーキットまでドライブして行き、ポルシェ カレラカップ アジア(PCCA)を観戦した。6月の富士スピードウェイに続く第4戦、第5戦。海沿いのリゾート地に作られた特設コースは、まるでマカオGPのコースのように狭く曲がりくねっていて、観客席との距離が近いこともあり大いに盛り上がっていた。暑く、しかもビーチ沿いということで砂が舞い、湿気が物凄いのには閉口してしまったけれど……。919ハイブリッドと2015年のル・マン ウィナーであり、また2013年、14年のPCCAチャンピオンであるアール・バンバーも招かれ、リゾート地でのレースに華を沿えていた。

■DAY1 バンコク〜チュムポーン 490.5km

 そして月曜日、いよいよツアーへ出発である。最新の911カレラTと、パナメーラ4 スポーツツーリズモを乗り換えながらゴールを目指す。スケジュールは結構過酷で、バンコクからシンガポールまでの2000km弱を、水曜日までの3日間で走り抜けなければならない。私は水曜日夜にチャンギ空港を発つ羽田行きのフライトに乗らなければならなかったから、気持ち的にも余裕はないなと感じていた。




 たとえばそれが西ヨーロッパだったら、ある程度は走り慣れているし、交通事情も察しがつくが、この地域の道路事情、交通マナーは個人的にはまったくの未知数。いや、正直に言えば前日のバンセン行きで、すでに「これは大変かも……」と感じていたから、楽しみな反面、ややナーバスになりつつのスタートとなった。




 タイの交通事情は、決して良いとは言えない。想像の通り、バンコク市内など街中は交通量が多く、慢性的に渋滞しているし、そのクルマとクルマの間のわずかな隙間を縫って、二輪車が駆け抜けていくから、常に気が抜けないのだ。しかも、道路の構造が解りにくく標識も不親切で、同乗していたポルシェ アジアパシフィックのインストラクターすらも高速道路に乗るのに数度、道を間違えたほどだった。

 高速道路に入っても安心はできない。特にバンコク周辺は渋滞しがちで流れが悪いし、右側車線を遅いクルマが走っていたかと思えば、左の路肩から抜いていくクルマも多数居るという具合で、一定速度を保つのが難しく、ストレスも溜まる。




 タイ南部のチュムポーンまでの、この日の走行距離は490.5km。予定を見た時には「もっと先まで進んでおけばいいのに」とも思ったけれど、この交通事情を体感したら、スケジュールの組み方に大いに納得させられた。結局、ホテルに到着したのは太陽がほとんど落ちかけた頃。街に出るような元気は残っておらず、ビールで喉を潤したら早々にベッドに潜り込んだ。


 


 (つづく)

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