伏見酒造組合と大阪ガスは、大阪ガス独自の画像認識技術を活用して、日本酒の大吟醸酒造りに用いられる高度精白米の新たな評価手法を開発した。両者は全国の酒造会社での新手法活用を推進することで、日本酒全体の品質向上に貢献していく。なお、2018年9月に開催される「第42回酒米懇談会」(主催:酒米研究会)で、技術の詳細を共同発表する予定。
伏見酒造組合傘下の酒造会社の技術者で構成する伏見醸友会と大阪ガスは、2016年に新たな評価手法の開発に向けた取り組みを開始した。大阪ガスが独自開発した、吸水による米の外観の変化を画像認識する技術を用いて、高度精白米の吸水性や形状の変化を定量的に観察すると共に、既定の酒米分析法による吸水性評価との比較、酒造現場のデータとの整合性を確認するなど評価手法として実用できるかどうかを検証した。2年間の検証を経て、独自手法と規定手法に互換性があること、独自手法では規定手法で得られる情報に加え、吸水状況の可視化、吸水初期の水分量変化の計測が可能なこと、現場の感覚とよく一致していることが確認できた。
近年、吟醸酒や大吟醸酒の需要が高まっており、全国の酒造会社が商品化に力を入れている。大吟醸酒造りでは、香りが高く淡麗な味わいに仕上げるため米の中心部だけを残した高度精白米を用いるが、洗米・浸漬工程において水を吸うスピードが速く、作業条件を判断する上で吸水特性が非常に重要な指標となる。この工程での水分量は、蒸米、麹づくりなど以降の工程での仕上がりに大きな影響を与え、ひいては酒の出来栄えを左右する。
今回開発した客観的な評価手法の活用により、特に精緻な判断や操作が求められる大吟醸酒の高品質化が期待できる。酒造り職人である杜氏や蔵人が減少傾向にある中で、科学技術による技能伝承の支援にもつながる成果となった。
今後、伏見酒造組合と大阪ガスは、新手法を酒造りに活用するとともに、酒米の育種や栽培への活用、さらには新たな評価手法の開発など、引き続き共同で取り組みを進め、高品質な日本酒造りへの支援に努めていく。