ここまできて抜けているのはナビゲーションのお話。
ナビの値段も安くはなく、せっかく買うとなればいろいろと要望が出てくるものです。
ああであってほしい、こうであってほしい・・・使いやすさを求めているうちに、
妙なことを思いついてしまったのでありました。
手先が器用な人にとっては何でもないことなのでしょうが・・・
TEXT●山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi)
PHOTO●中野幸次(NAKANO Koji):ジムニーJB23W ランドベンチャー(2015年撮影)
山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi):ジムニーシエラJB43W
今回はシエラに取り付けたナビを話題にする。
併せて、本連載「第1回」文末で出したクイズの回答と、なぜAT車を選んだのかを述べていきたい。
納車時、5点ばかりの用品オプションをつけたことはすでに述べた。
ここにナビゲーションは含んでいない。
契約を決めたスズキ販社でも、もうひとつの契約候補だった業販店でも、シエラの用品カタログに載っていたスタンダードモデルのほうが、カー用品店で買うハイグレードモデルよりも値段が高かったからだ。
車種別の取付キットやETC、取付工賃、延長保証を加えても、カー用品店のハイグレードモデルのほうが安かったのだから、価格の世界はよくわからない。
■初めての汎用ナビに求める条件
スズキ車にはもともとMOPナビがないから、今回のシエラでは初めて汎用ナビに手をつけることになるが、「何でもいいや」と思ってはいても、いざ買うとなれば、いちおうはいま旬の主要ナビを眺めたくなる。
販社めぐりと同時にカー用品店もまわって品定め開始。
次期ナビ決定に向けての条件は次のとおりだ。
ディープだぞ~。
①地図画面のときに発せられた音声案内、ハンドフリー音声など、いま出ている音声の音量調整が、即座にボリュームボタンかダイヤルノブでできること。
②時計が画面右上にあること。
③複数の目的地設定をしているとき、「目的地到着時刻」アイコンをタッチすると、途中立寄り地への到着時刻表示にも切り替わること。
④地図画面から直接ショートカットメニューに飛ぶことができ、その中に自分がよく使う項目が入っていること。
入っていなくても、設定で変更できればよし。
⑤探索条件の中に「目的地への左側優先到着」の選択があること。
⑥3D画面のビュー角度調整ができること。
などである。
たまたま①~⑥と掲げたから優先順位に見えるが、①は1位、②は2位、③~⑥はすべて、重視度合いが均等な3位だと思ってほしい。
ナビをお使いのみなさんだったら、ひとつやふたつ「おれも」「わたしも」と思ったものがあるのではないだろうか。
次。
③。
いま父のクルマは2代目プリウスに代わっているが、このトヨタ系ナビ、すなわち元・富士通テン、現デンソーテン製ナビにこの機能があり、当然、市販品も同様となっている。
複数の目的地を設定している場合、多くのナビは設定画面の中で、「到着予想時刻」を「立寄地」か「最終目的地」かのどちらかしか表示できない。
これも取材などで複数の目的地を設定する場合があるのでぜひほしいところだ。
⑤。
これもナビを積極的に使っている人なら、潜在的に抱いている不満ではないだろうか。
いざナビどおりに到着したはいいものの、その入口は対向車線側。
それだけならまだ許せるが、右折進入しようにも、目の前には街路樹繁る、切れ目なき中央分離帯・・・街路樹をクルマで掻き分けて行けというのか?
そうでなくても道幅が広いために「右折進入」を禁止している入口もある。
いったん通過した先でUターンさせる場合もあるが、どうせなら多少距離が増してもいいから、「左側到着」を念頭に、かつ、ドライバーには悟られず、出発時点から、ごく自然な誘導で自車の左に入口が訪れるような、粋なガイドがほしい。
人には日ごろ並みの勉強しかしていないように見せておいて、いざ試験では100点満点を取るイメージだ(あまりうまい例えではないな。)。
目的地付近に来てからあわててのまわり道誘導というのも感心しない。
試験前日にあわてて一夜漬けの勉強をするようなものだ(これもあまりうまい例えではないが・・・)。
これは2000年ブルの頃に気づき、他の利用者からも声が挙がって10年後にはどのメーカーもあたり前のように解決していると思っていたのだが、2018年になってもそのロジックを見かけないところを見ると、ナビメーカーは、まだまだ机上の空論で製品を造っているのではあるまいか。
開発中のテストでは、普段クルマを使っていない人たちが毎度決まったルートでしか検証していないのだと思う。
普段からナビを使いこなしていれば、このようなシーンにはいくらでも出くわすはずで、開発関係者なら、すぐに「あっ」と気づかなければ嘘だ。
⑥は、3D表示が可能なナビなら、すべて当然のように付帯していると思っていたが、意外に調整機能がない製品があった。
ノーマークでいるとあぶないので、これも条件に入れることに。
■候補5製品はこれだ
というわけで、目をつけた製品は以下の5製品である。
液晶サイズはすべて7インチの幅180mmのモデルだ。
■5つの中から選んだものは
上記5機種に対する①~⑥の可・不可を整理したのが次の表だ。
ただしこれは本サイト用に、後追いで作ったものだ。
結論からいうと、平素のナビ使用性に求める項目があまりにもピンポイントなため、①~⑥のすべてを満たすものは1機種もなかった。
初めから予想していたことだ。
②の時計表示位置など全滅である。
いっけん、ケンウッドの彩速ナビがよさそうに見えるが、残念ながらそもそものメニュー構成のあり方が、「どんな人が考えたのだろう?」と思うくらいにしっくり来ず、「左側優先到着」を泣く泣く却下と相成った。
これさえなければ、ケンウッドに即決定していただろう。
あっちを立てればこっちが立たず。
帯に短したすきに長し。
というわけで、パナソニックに決定!
・・・だったのですがねえ。
■ボリューム調整はまわしてやりたい
私は走行中にラジオなどを聴いているとき、外から何らかのサイレン音が聞こえ「たような気がした」ら即座に音を消す。
そのとき周囲やルームミラーを見やれば、たいていは救急車などが接近中で、ときにはドアの横に「警視庁」とお書きになった、牛かパンダみたいな2トーン塗装のお車や、ヘルメットとナス型サングラスの方がお乗りの、白いバイクがお近づきのこともある。
それはともかく、即座に音を小さくしたいとき、チョンチョン押しはもどかしい。
丸いつまみのくるくるまわしで一気にいきたいところである。
待てよ。
オーデイオもナビも、正面の操作部が180mmであろうと200mmであろうと、計器盤内部に隠れるユニット筐体の幅はみな180mmである。
シエラの開口部幅を左右10mmずつ広げれば、本当に文字どおり、表向きは何とかなりそうだ。
もともとクルマのオーディオには興味がないのだが、手段も思いつかないのに、今回だけはなぜか「何とかなるような気がする」という直感に動かされていた。
インパネの開口部拡大の手段を頭の中で構想する。
そんなこんなを考えあぐねて迎えた納車の日、シエラの車両から外した金具を、スズキ販社に展示していたパイオニアのワイド200mm製品に重ねて見せてもらい、
「ま、パイオニアの製品につくならパナソニックもつくだろ」
と、結論。
納車前からいちばん気が重かったのはこの作業で、納車を「それほど待ちに待たなかった(第3回)」のは、納車直後のこの作業が待っていたからだ。
自分で決めたこととはいえ、納車した翌日に新車の部品をはずして加工するのは、不器用を自認する者にはつらい、じつにつらい。
失敗したら新しい部品を発注すればよいとわかってはいるものの、自分のやりそこないで発注するのもみっともないし、余計な出費はしたくない。
養生テープとホットナイフ、プラスチック用カッター、100mmばかりの金属製の定規などを総動員して開口部の拡大作業に入る。
両脇のタテ辺を、少しずつ、少しずつ、少しずつ、少しずつ、ていねいに、ていねいに、ていねいに、ていねいに、切って削っていくわけだ。
後には引けない、ナビの買い替えは効かない、失敗したらパネルの買いなおし・・・自発的に勝手に行っている作業なのに、勝手にプレッシャーを感じ、そのプレッシャーに追い込まれながら続けているうち・・・
おいおい、できちゃったよ。
ではでは、その仕上がりをお見せしよう。
通常の軽ジムニー計器盤と比較してみる。左がシエラで、右が軽ジムニー。大変な作業だった割に、シエラのナビ部をぱっと見たときの印象は意外に変わらない。なお、軽ジムニーの写真は「歴代ジムニー」制作時の2015年撮影版で画角が異なるため、ナビ部の高さを揃える加工をしてある。あくまでも参考までに。
ラジオの音量操作ができれば、ナビ案内の音量調整もそのままできる。
「LAUNCHER」ボタンをタッチすると・・・各メニューのショートカットボタンが。
というわけで、遅ればせながら、本連載・第1回のクイズの正解は、
「180mm幅のオーディオスペースに、200mmワイドのナビが入っている。」
でした。
世のジムニーオーナーのみなさん、少なくともPanasonicのワイド200mmモデル・CN-RX04WDは(最後の正面4つ穴への締め付けに多少無理が出てきますが)、つけることができます。
さて最後に、なぜMTではなく、ATになったかの回答。
ここまでもったいぶった割に、これといった理由はないのです。
これらの方法を考えることで頭がいっぱいになっているうちに新車の契約時機が迫り、あまり深く考えることもなく、これまでどおりATになってしまっただけなのであります。
ごきげんよう。
(第6回に逃げる)