今年の1月、警察庁から各都道府県警に送付された「あおり運転等の悪質・危険な運転に対する厳正な対処について」という通達を受けて、この6月初旬、全国で「あおり運転」の一斉取り締まりが実施された。各マスコミやWEBサイトでも一斉に「あおり運転」の危険性を唱え、今や世間の目は一斉に「あおり運転」に向けられているといっても過言ではない。が、取り締まりにおいて適用される違反項目は、例えば「車間距離保持義務違反」にしても、普段、ドライバーが悪意がなくてもつい犯してしまいがちな違反であり、それが警察官の判断により、無理矢理「あおり運転」に結びつけられる恐れもあるのだ。
軽微な違反を無理矢理あおり運転につなげられちゃったらどうする?
言うまでもなく、道路交通法に「あおり運転」に関する規定はない(一応、「危険運転」の範疇とされているが)。つまり、「あおり運転」という違反名で切符を切られることはあり得ないのだ。
そこで、警察は「あおり運転」行為に関して、死傷事故につながる事例以外では、主に次の違反を適用している。
1.車間距離保持義務違反
2.進路変更禁止違反
3.急ブレーキ禁止違反
4.追い越しの方法違反
5.減光等義務違反
6.警音器使用制限違反
7.安全運転義務違反
8.初心運転者等保護義務違反
いずれも「軽微な違反」とされる反則行為であり、どちらかというと「あおり運転」行為そのものを取り締まったというより、「あおり運転」につながる可能性を未然に防いだと言ったほうが正しいだろう。可能性の大小は別としても、「危険な事故や違反を未然に防ぐ」という交通取り締まりの大前提を守った正しい取り締まりなのかも知れないが、本当にそうなのだろうか?
というのは、逆の見方をすれば、従来は過剰取り締まりという批判を受けそうなさほど危険とは言えない軽微な反則行為を「あおり運転は危険」という大義名分の元に堂々と取り締まれるようになった、とも言えるからだ。
例えば5の「減光等義務違反」、6の「警音器使用制限違反」。前のクルマが追い越し車線をのろのろ走っているので、後ろから軽くクラクションを鳴らす、あるいはパッシングしたとする。もしこれが警察のヘリコプタに視認されたり、前車のドライバーに通報されたりすると、立派な「あおり運転」になってしまうのだ。もちろん厳密に言えば、危険性がない以上、これらの行為は交通違反なのだが、こんな、さほど危険性もない日常茶飯事の出来事で「あおり運転」と決めつけられるなんてたまったもんじゃない、と思う人もいるはずだ。