セブン-イレブン・ジャパンは2019年春頃より、トヨタ自動車のFC(燃料電池)小型トラックを、羽田空港周辺とお台場・有明周辺のエリアで各1台を試験導入し、エリア内各店舗への商品配送に使用。そして同年秋より、トヨタグループのFC発電機、リユース蓄電池、給電機能付き充電器、BEMS(店舗エネルギーマネジメントシステム)を導入した次世代型店舗の展開を開始する。果たしてこれらの中身は、既存の技術を徹底的に有効活用した、極めて現実的なものだった。
セブン‐イレブン・ジャパンとトヨタ:CO2大幅排出削減を目指した次世代型コンビニ店舗の共同プロジェクトを2019年秋より開始まず、クルマ好きなら最も気になるであろうFC小型トラックのメカニズムだが、ベースとなった車両はトヨタ・ダイナカーゴ「2.0tonシリーズ シングルキャブ ワイドキャブ 2WD・ロングデッキ・ディーゼルハイブリッド」の中温冷凍車で、最大積載量は3トン。全長×全幅×全高は6185×2180×2970mmとなっている。
これに、FCV(燃料電池車)トヨタ・ミライのFCスタックやパワーコントロールユニットをキャブの下に、高圧水素タンク3本(ミライは2本)とニッケル水素式駆動用バッテリーを荷台の両サイドに搭載。モーターはフレームの前部中央に縦置きされ、プロペラシャフトを介して後輪を駆動する。
水素の充填可能容量は7kgで、使用可能量は6kg。セブンイレブンが1日の配送業務で走行する約200kmを、真夏に冷凍庫をフル稼働しドライバーがエアコンを使用しても途中で水素を補充せずに問題なく走れる性能を確保した。
トヨタの友山茂樹副社長が6月6日に東京・有明のメガウェブで行われた発表会の席で、「子どもたちに『将来乗ってみたい』と思ってもらえることを目標にこだわった」と強調していたデザインも、このFC小型トラックの大きな見所だろう。
キャブのフロントバンパーとドア下部、専用設計された荷台のサイドカバーとリヤバンパーは、セブンイレブンのコーポレートカラーである緑と環境に優しいイメージの青を合わせた色を採用。キャブ上部とコンテナはメタリック調とし、FC小型トラックが持つ先進性を表現している。なお、これらのカラーや各部のロゴマークは全てラッピングによって車体に施されている。
発表会ではメガウェブ内のテストコース「ライドワン」で、このFC小型トラックのデモ走行が行われたが、モーターの出力はミライとほぼ同じ114kW(155ps)で、車重は1トン以上増えているはずにも関わらず、その加速はトラックとは思えないほどスムーズかつ強力。当然ながら走行音は極めて小さく、CO2を含む環境負荷物質の排出もゼロだ。
これならば、夜間の住宅地を走行しても住民が不快な思いをせず、しかもFCVはEVよりも航続距離が長く充填(充電)時間も短いため、セブンイレブンのドライバーはどこでも気兼ねなく商品を配送できることだろう。