2018年のニュルブルクリンク24時間レースが終わりました。スバル/STIチームは既報の通り、SP3Tクラスでクラス優勝という結果を勝ち得ました。昨年の突然の出火からのリタイアという衝撃的な出来事から、今年は見事クラス優勝へと返り咲いたことで、スバル/STIチームとともに、スバルファンの笑顔も取り戻すことができました。本当に良かったと思います。
ただ、その戦い方と結果に対し、果たして現状の「歓喜の優勝」のままで良いのでしょうか。来年以降のスバル/STIチームのニュルブルクリンク24時間レースへのチャレンジで、もっと強い戦いを期待するひとりのスバルファンとしても、いまいちど冷静に分析してみたいと思います。
2018年のニュルブルクリンク24時間レースは、総合62位SP3Tクラス1位と言う結果でした。目標としていたクラス優勝を果たしています。
しかし総合順位はリタイアを除けば過去最低の順位となりました。本格的にスバル/STIとして参加した2008年からのデータを振り返ってみます。
2008年 総合57位 SP6 クラス5位
2009年 総合33位 SP3Tクラス5位
2010年 総合24位 SP3Tクラス4位
2011年 総合21位 SP3Tクラス1位
2012年 総合28位 SP3Tクラス1位
2013年 総合26位 SP3Tクラス2位
2014年 総合32位 SP3Tクラス4位
2015年 総合18位 SP3Tクラス1位
2016年 総合20位 SP3Tクラス1位
2017年 リタイア リタイア
2018年 総合62位 SP3Tクラス1位
2014年のニュル24時間レースから、現行のVAB型WRX STIをベースとしたモデルが投入されました。エンジンは戦うスバルの象徴とも言えるEJ20型のエンジンです。EJ20という型式の通り、排気量は2000ccのままです。WRCで幾度の勝利をもたらし、今なお進化し、国内ではSUPER GTでBRZに搭載され、最小排気量ながら大排気量エンジンと同等に戦うスバル唯一無二の戦うパワーユニットを搭載しています。
ボディは当初よりワイドフェンダーや大型リアスポイラーなどを装着し、VAB型WRX STIの面影はあるものの、それ以前のGRB型やGVB型のWRX STIに比べ、だいぶレースカー然としたスタイルになっています。2015年モデルからは左ハンドル仕様へと変わりました。ボディは大型化していますが、カーボンを多用し徹底した軽量化が施されています。それにより安定した順位を得てきたことは結果が証明しています。
しかしライバルのマシンに対して速すぎたのか不明ですが、2016年にはレギュレーション変更で吸気リストラクターの径を小さくされ、パワーダウンしています。それでも軽量化やAWDの特性を活かした結果、SP3Tクラス2連覇を達成しました。多少のハンデも技術と性能、チームの力で連覇を達成したのです。
2017年は3連覇を目指してさらなるパワーアップや軽量化、各部の最適化を徹底したことで上位を安定して走っていましたが、他車に衝突されボディにダメージを受けるも、必死の修復によりガムテープまみれになりながらも復活しましたが、突然のエンジンからの出火で初のリタイアを喫してしまいました。
さらに6時間後には排気音量規制を指摘されてピットイン。マフラーを交換してこの時はほとんどロスなくコースに復帰しています。しかしこの排気音量規制は4月に行われたQFレースの時にも指摘されていた部分です。もちろん決勝レースに向けての車検時にはちゃんと対策が施され、無事に車検を通過していただけに、レース途中で排気音量規制を指摘されるのはチームのみんな誰もが不思議に感じていた模様でした。EJ20が奏でる排気音は他車に比べてそんなに大きいとはコースサイドにいても感じられ無い、むしろ他車の方が音は大きいだろうと思える車種もあったように感じられました。
約2時間弱の中断を経て、再度全車がグリッドに整列して再スタートが切られました。WRX STIも順調に走り始めますが、残り1時間を切ったところで突然のエンジントラブルが発生しました。およそ1周25kmにもおよぶコースの最初の部分、グランプリコースをショートカットしてピットに帰ってこられる部分でストップしてしまったのです。
最悪な状況でもこのストップした場所が幸いし、WRX STIはピットロードに姿を表しました。もしノルドシュライフェに出て、ピットまで10km地点といったエリアで止まってしまっていたら……これまでの苦労が全て無になっていたことでしょう。
運はまだ味方していました。
スバルユーザーに夢と希望、そして心を揺さぶる感動を与えてえくれるニュルブルクリンク24時間レース。過酷な状況に挑むWRX STIを見ると、その姿はスバルファンならずとも純粋に応援したくなります。現地に行く応援ツアーのファンの皆様や中継を見ているファンが、24時間のなかで多少冷や冷やするシーンがあっても良いかもしれませんが、10回以上参戦し続けているスバル/STIチームらしく、ライバルが消えようとも、強い、盤石のレースを見ていたいと思えた今年のニュルブルクリンク24時間レースでした。