2018年のニュルブルクリンク24時間レースが終わりました。
日本でも各種媒体の中継やパブリックビューイング等で応援された方も多いのではないでしょうか。GAZOO Racing、スバル/STIチームをはじめ、ドイツのRING RACINGとタッグを組んで出場したNOVELチーム、そしてファルケンタイヤ、ブリヂストンタイヤなどといった日本勢の奮闘を、皆さんそれぞれの視点で楽しんだのではないかと思います。
今年のレースも本当に多くの出来事がありました。感動的なゴールシーンに心を奪われましたが、少し時間が経過したところで、冷静に今年のレースを振り返ってみましょう。
トラブルの原因を即座に発見・判断して対処法を選択したエンジニアの頭脳。また、レース中、たえず作業を実行し続けたメカニックの執念と技術と体力は、賞賛に値する。
そして、ピットのメンバーと同様に、ドライバーの「センサー」にもスポットを与えるべきだろう。非常事態が発生しているクルマの傷が致命傷となる前に察知し、ピットにクルマを届けることに何度も成功したのは、決して「運」ではない。
チームの三者ががっちりとシンクロしたことで、満身創痍のLCはスタートから24時間後のゴールまでたどり着くことができたのだ。
GAZOO Racingカンパニーの友山茂樹プレジデントは
「やっぱりニュル。さすがニュル。新参のクルマにこれほど苦しい思いをさせてくれるというのを、久しぶりに思い知ったレースでした。途中心配になってピットに行ったら、血走った目で『絶対感想させますから』と3回ぐらい言ってくれました。本当に、最後まで完走させてくれてありがとう。みんな、いろいろ悔しい思いとか、情けない思いとか、不完全燃焼という思いもあるかと思います。でも、今回は久しぶりにGAZOOらしいレースができたと思っています。皆さんの頑張りに敬意を表したいと思います」と全員を前にして語った。
関谷チーフメカニックも
「2008年、2009年、2010年にも、なんでこんなことが起こるの?というようなことがニュルのレース中にあり、なんとか頑張ってきたことを思い出しました。同じような経験を、今回若いメンバーが経験できたことは良かったと思います。これがニュルなんです。でも、ぜったいにこのままでは終われませんよ」と、目を輝かせて語ってくれた。
完走・クラス優勝という栄誉を得た2018年のニュルブルクリンク24時間レースだったが、エンジニアリング的には「完敗」と言えるだろう。
この「完敗」の原因を検証・解決することでLCは「成長」する。そして、TOYOTA GAZOO Racingのメンバーが「完敗」を克服することで「人」も成長する。
それこそがニュルブルクリンク24時間レースに参戦する「理由」なのだ。
今回のレースに参加した全員が、そして彼らのレースを見た全員が、GAZOO Racing活動の「原点」を感じることができたはずである。
PHOTO:雪岡直樹(NAOKI YUKIOKA)、渡辺文緒(FUMIO WATANABE)
TEXT:渡辺文緒(FUMIO WATANABE)