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パナソニック:連続安定駆動を可能とする絶縁ゲート型GaNパワートランジスタを開発


パナソニック・オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は、しきい値電圧が変動せず、連続安定駆動が可能な絶縁ゲート型(MIS型) GaNパワートランジスタを開発した。本トランジスタによりGaNパワートランジスタのさらなる高速動作が可能となり、さまざまな電力機器の小型化が実現できる。

次世代パワーデバイスとしてGaNが実用化されつつある。一方で将来技術として、さらなる高速動作を目指してMIS型ゲートが検討されてきた。しかし、これまでのMIS型GaNパワートランジスタではヒステリシスが生じてしまい、大電流・高電圧での高速スイッチング動作が確認できていなかった。




今回、将来の超高速GaNパワーデバイスに必要とされるMIS型トランジスタの連続安定駆動を20Aという大電流動作で初めて確認した。機器の高周波化・小型化のさらなる加速に伴い、GaNパワートランジスタの市場拡大が期待される。スイッチング周波数の大幅な高周波化により、周辺受動部品の小型化が可能となり、サーバ・基地局用電源といった各種電力変換回路の高効率動作と小型化を実現できる。




本開発品は、以下の特長を有している。




1. 連続安定駆動


MIS型ゲートではゲート絶縁膜に関連する電子トラップ準位により、ゲート電圧の変化に対して、ドレイン電流特性にヒステリシスが発生することが課題だった。本開発ではデバイス構造およびプロセスを改善し、ヒステリシスを抑制。その結果、ゲート電圧として最大+10Vまでの連続安定駆動が可能となった。


2. 大電流・高耐圧動作


GaNパワーデバイスにおいてはノーマリオフ動作と大電流動作の両立が課題だった。本開発ではゲート電極直下に掘り込みを形成するゲートリセス構造の導入によりノーマリオフ動作を維持しつつ、最大20Aの大電流動作を実現した。加えて電極間距離の伸長により730Vという高耐圧を実現している。


3. 高速スイッチング


GaNパワーデバイスは横型構造を有しており、寄生容量が小さいために高速スイッチングが可能。さらに高速動作させるためにはより高いゲート電圧を印加してスイッチング動作時の電荷のやりとりを短時間で行う必要がある。本開発ではゲートに+10Vまで印加できるため、より高速なスイッチングが可能となった。




本開発品は以下の技術によって実現した。




1. AlON ゲート絶縁膜の採用


本開発ではAlONの採用と成膜プロセスの改善により、膜中の電子トラップを大幅に低減した。これによりドレイン電流が流れ始めるゲート電圧であるしきい値電圧が変動することなく連続スイッチングすることが可能となった。ゲート電圧+10Vまでヒステリシスを抑制し、MIS型GaNパワートランジスタを採用した電力変換機器の安定動作が可能になると期待される。


2. プロセスダメージのないゲートリセス構造の導入


大電流動作に必要不可欠なゲートリセス構造導入にあたっては掘り込み形成時のプロセスダメージの低減が課題だった。本開発では掘り込み形成後の最表層を高温での結晶成長で形成することでプロセスダメージを抑制した。この結果、ノーマリオフ動作とヒステリシスの抑制を実現した。


3. Si基板上GaNパワーデバイス作製プロセス技術


パナソニックは、p型ゲートを有するGITと呼ばれる独自構造のGaNパワートランジスタを既に量産化している。本開発のMIS型トランジスタは、GITからさらに高速動作を可能とする将来技術として開発した。ここでは量産で培ったSi基板上のGaNパワーデバイス・プロセス技術を適用することで大電流かつ高耐圧動作を実現した。






[1] しきい値


トランジスタのソース・ドレイン間を導通させるために必要なゲート電圧の値。この値より大きい電圧をゲートに印加するとトランジスタが導通(オン)し、この値以下の電圧をゲートに印加することでトランジスタを遮断(オフ)できる。


[2] MIS型: Metal Insulator Semiconductor


金属-絶縁体-半導体を接合した構造。本構造をトランジスタのゲート電極に用いることで、正側に高いゲート電圧を印加することが可能となる。


[3] AlON:アルミニウム酸窒化物


AlONとはアルミニウム(Al)、酸素(O)、窒素(N)から構成される絶縁性の材料。その絶縁膜中には電子がトラップ(捕獲)されにくい特長が確認されている。


[4] ヒステリシス


ゲート電圧を変化させることで、トランジスタのゲート電圧とドレイン電流の関係が変化してしまう現象。ヒステリシスがある場合、そのゲート電圧とドレイン電流の関係は、電圧を増加させる場合と減少させる場合で異なり、安定でない状態と言える。


[5] ゲートリセス構造


ゲート電極の下部に凹部を形成したゲート構造。本構造によりゲート下の半導体の厚さとゲート脇の厚さを変えることで、正のしきい値電圧と大電流の両立が可能となる。


[6] ノーマリオフ


ゲートに電圧を印加していない時に、ソース・ドレイン間に電流が流れない半導体デバイスの特性。制御回路の故障時にもソース・ドレイン間を短絡させることがなく、機器の安全性を確保するために必要な特性。

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