三菱ケミカルは、バイオエタノール製造プロセス向けのゼオライト膜(以下「ZEBREX)を用いた脱水システムのマーケティングについて、北米ではICM,Inc(本社:米国カンザス州)と、アジア大洋州、欧州地域は三井物産とそれぞれ戦略的に提携し、世界規模での事業展開をさらに加速させると2月22日に発表した。
近年、米国やブラジルを中心に世界各国で、カーボンニュートラル、かつCO2排出抑制につながる燃料として、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ等のバイオマスを原料とするバイオエタノールの利用が普及しつつある。さらに今後は、非可食原料から作られる第二世代のバイオエタノールも米国、インド等で本格的な生産が見込まれている。
バイオエタノールは、燃料として用いるために一定以上の濃度になるまで脱水する必要がある。ZEBREXは最先端のゼオライト膜脱水システムで、再生工程が不要で連続的な脱水が可能であるため、従来のPSAプロセス(バイオエタノールの精製・無水化のプロセスでは蒸留工程を経た後、一般的にA型ゼオライトに代表されるペレット状の汎用ゼオライトを利用したPSAプロセスが用いられる。PSAプロセスはエタノール濃度50%程度の再生液が蒸留塔に戻り、再度蒸留されることを繰り返すため、エネルギー多消費型プロセスとなっている)に比べてエネルギー消費量を20~30%程度削減できることが特長だ。ZEBREXは、新設はもとよりPSAプロセスからの置き換えまたは増設により、CO2排出量の削減、オペレーションコストの削減、生産効率向上による増産、安定運転が可能となる。
今回、三菱ケミカルが提携するICM社は、世界最大のバイオエタノール生産量を誇る米国において、既存バイオエタノール製造プラントの約半数を手掛けた実績を持つエンジニアリングメーカー。三菱ケミカルは米国では、ICM社と共同でZEBREX 脱水システムを提案していく。
一方、三井物産は、アジア大洋州・欧州において、バイオエタノール生産者とのネットワークを持ち、さらにアジア大洋州では製糖・食品分野においても幅広いチャネルを有している。三菱ケミカルはアジア大洋州・欧州においては、三井物産と戦略的に協力してマーケティングを行なう。すでにこの協業の成果として、欧州最大のバイオエタノール製造プロセスを有するPannonia Ethanol Zrt(本社:ハンガリー)に世界最大規模のZEBREXの導入が決定しているが、同社はICM社の技術を採用しており、ZEBREX を通じた世界規模での提携を具現化する案件となった。