ついに発売となったルノー「トゥインゴ GT」。ルノー・スポールが手を入れたという走行性能を体感してきました。(PHOTO&REPOET:石川順一)
横Gを感じても車体はべったり
エンジンのスタート方法は今となっては珍しいキーシリンダータイプ。キーを差し込んでひねると車体の後ろから勇ましい音が聞こえてくる。
主に首都高での高速走行を試したが、車体の安定性がとにかく高い。直線でもコーナーでもぴったりと地面に吸い付くような走りが楽しめる。やや横Gを感じるような高速カーブでも思い描いた通りのラインを描いて曲がってくれる。安定性に寄与している横滑り防止装置(ESC)の設定を通常モデルよりも若干リヤを滑らせる設定にしているというが、日常域ではあまり感じられず、むしろ安心感を抱いてしまうほどだ。
もっとも、車体の性能に装備が追いついていない部分もある印象を受けた。例えば、MTにはフットレストがないので左足で踏ん張れない。加えて、シートのホールド性も高速コーナーでは十分とはいえず、かなり体を振られてしまう場面もあった。スポーツ走行を本格的に楽しもうと思うと、あと一歩というところだろうか。
ダイレクトなMTと気軽なEDC
MTの変速は滑らかなつながり方となっており、亜鉛合金の重めのシフトノブのおかげもあり、かなり切り替えやすい。ただ、タコメーターが装備されていないので、メーターのシフトタイミング表示か、エンジンの音を頼りにシフトチェンジすることになる。裏を返せば、車と対話しながら運転を楽しめるともいえるので、走りを楽しむ人にとっては魅力の一つといえるかもしれない。
もっとも純正のラジオにはスマホアプリと連携してスマホに回転計を表示する機能があるので、これを利用するのも手。ただし、新たに用意された専用ナビを選んでしまうとスマホとの連動機能はなくなってしまうというので注意が必要となる。
MT車らしいアクセルレスポンスのダイレクト感はもちろん健在。丁寧に踏んでいくと、車体の底から勇ましいエギゾーストが唸りを上げ、アクセルに応じてリニアに加速していく。もっとも安全性を考慮しているため
AT限定免許でも気軽に乗れるEDCも思いの外走りを楽しめる仕様だった。一度マニュアルモードに切り替えれば、MT以上に思い通りのシフトチェンジができるし、シフトダウンは減速とともに自動で行ってくれる。変速のショックを感じることもなければ、余計な操作の手間を省くこともできるので、幾分運転に自身がない人でも気軽にトゥインゴGTを操る楽しさを味わえる。
ハンドリングの良さはベースモデルと比べてもさらにアップしている。ハンドルの舵角が大きくなるほど機敏に反応するバリアブルギアレシオ(VGR)ステアリングを採用しているので、ハンドルの操作以上にタイヤの切れ角が増え、狭い場所でのUターンもお手の物だ。実際、お台場海浜公園駅近くの道幅が少し広い二車線道路では切り返すことなく悠々とUターンできた。最小回転半径4.3mは伊達ではない。
RRらしい操縦性や加速性に加えて走行性能も磨き上げられたトゥインゴGT。家族も乗るし、運転ベタなパートナーが乗ることも考えると…と妥協しがちな車選びに、新たな選択肢を与えてくれそうだ。
■Specifications■
・全長×全幅×全高(mm):3,630×1,660×1,545
・エンジンタイプ:ターボチャージャー付直列3気筒DOHC12バルブ
・総排気量:0.897L
・最高出力(EEC):80kW(109ps*2)/5,750rpm
・最大トルク(EEC):170N・m(17.3kgm*2)/2,000rpm
・トランスミッション:5速MT/6速EDC(エフィシエント デュアル クラッチ)
・使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
・燃料供給装置:電子制御式マルチポイントインジェクション
・エンジン型式:H4B
・タイヤ:前 185/45R17、後 205/40R17
・ブレーキ:前 ベンチレーテッドディスク、後 ドラム
・車両重量:1,010 kg(MT)/1,040kg(EDC)
・乗車定員:4人
・価格:MT 229万円 EDC 239万円