長年トヨタのレースシーンを支えてきた名機、3S-GTEは未だに多くのユーザーがいるという言う。しかし、いくら名機と言えど登場からすでに三十余年が過ぎている。そこで、TRDはこの名機に代わる新型のレーシングエンジン「TRD TG20」を開発し、東京オートサロン2018 に展示した。
2.0Lターボ級カスタマー向けエンジン
トヨタのカスタマー向け2.0Lターボエンジンは今もって3S-GTEを使用しているユーザーが多いという。3S-GTEはまさに名機と言えるエンジンだが、さすがに登場から30年以上が経過しているだけに後継エンジンの開発は必須。
特にTCR規定が世界的に盛り上がり、2018年のWTCC(世界ツーリングカー選手権)が同規定のWTCRとなったことも大きい。世界の自動車メーカー各社がTCR車両をリリースする一方で、トヨタにはそうした動きがなかったところ、まずはTRDがWTCRやSRCなどの2.0Lターボエンジンを搭載するハコレースのカスタマーを想定した新型のエンジンを開発した。
TRD開発呼称「TRD TG20」
東京オートサロン2018のTRDブースに展示されたこのエンジンは社内開発呼称で「TG20」とされている。ベースとなるエンジンは8AR-FTSで、レクサスのRX200tやNX300、トヨタ・クラウンに搭載されているモノだ。8AR-FTSからしてFFベースのSUVとFRセダンに搭載されていることから、TG20の搭載方法も縦置きと横置き両方に対応できるという。さまざまなボディに搭載されることになるであろうカスタマー向けエンジンにはありがたい仕様と言えそうだ。
8AR-FTS(ベースエンジン)
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
ボア×ストローク(mm):86×86
排気量(cc):1998
圧縮比:10.0
最大パワー:175kW(235PS)
最大トルク:350Nm(35.7kg・m)
燃料:プレミアム
燃料噴射装置:D-4ST
ターボ:ツインスクロール
搭載方法もそうだが、出力についても異なる仕様が用意されるという。
Spec_Aはノーマルタービンを使用するのに対し、Spec_Bはタービンや内部のパーツも特別仕立てとなり、より高い出力を得ている。当然その分高価になるのだが、コストも重要な要素となるカスタマー向けエンジンだけに、こうした仕様違いが用意されるようだ。カスタマー向けとはいえレーシングエンジンだけにドライサンプ化の可能性について尋ねてみたところ、想定されるレースカテゴリーはウェットサンプが主であり、さらにウェットサンプ化のコストを考えるとあまり現実的ではないとのことだった。
TG20(Spec_A/Spec_B)
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
ボア×ストローク(mm):86×86
排気量(cc):1998
圧縮比:10.0
最大パワー:215kW(293PS)/270kW(367PS)
最大トルク:480Nm(49.0kg・m)/500Nm(51.0kg・m)
燃料:プレミアム
燃料噴射装置:D-4ST
ターボ:ツインスクロール/プロトタイプ
縦置きと横置きが可能なだけに、どのような車両への搭載を想定しているのか?という問いに対しては「ヴィッツ以上」という答えだった。ヴィッツに2.0Lターボとは驚きだが、競技用のコンパクトなトランスミッションと組み合わせるなら十分可能だそうだ。そして、それをすでに実行せんとするカスタマーもいるとか……。
TG20は2018年からレースシーンに登場予定となっている。レギュレーションの関係で、どのカテゴリーでどのような車両に搭載されるかはまだわからないが、前述のヴィッツの話も含めてこのTG20の活躍を期待せずにはいられない。名機3S-GTEに続く新たな歴史を刻んていくことを願ってやまないのである。