ZFは「コンシューマーエレクトリックショー(CES) 2018」において、自動運転に向けた次のステップを発表する。
ZFの展示車両にはレベル4の自動運転を実現する機能が搭載されている。特に環境データの検出と処理のために搭載された「ZF ProAI」はテスト車両で中央制御ユニットとして機能し、モジュラー・アプローチで自動運転機能の開発を可能にする。ZFのアプローチは、車の用途やハードウェアの構成、自動運転のレベルなど自動車メーカーのニーズに応じて対応可能で、あらゆるクルマに適用できるシステムアーキテクチャの実現を目標としている。
ニーズに基づく自動化を実現するシステム
ZFはこのテスト車両に、AIを組み込んだ機能アーキテクチャを含むモジュラー形式のシステムを開発した。ZFのアドバンスト・エンジニアリング部門の責任者であるトーステン・ゴレウスキーは次のように語る。
「たとえば当社は、完全に自動化されたレベル4の運転機能モジュールをテスト車両に搭載しました。このモジュールは、ZFの『見て、考えて、動かす(see, think, act)』というアプローチに従って個々の用途に合わせ、都市交通で必要となる視覚と思考の能力をクルマに持たせることができます。また柔軟性に富んでおり、様々なクルマで異なる自動化レベルを実現することもできます。同時に、各レベルで必要となる最小限のハードウェア構成に関する情報も得られます」
この数か月間、ZFでは車両がさまざまな運転機能を実行できるよう「トレーニング」してきた。特に主眼が置かれたのは、横断歩道上に歩行者がいる場合の挙動、衝突危険性の判断、信号やラウンドアバウト(環状交差点)における動作などの都市環境だ。「高速道路や地方とは異なり、都市部において交通状況をリアルタイムで確実に把握し、コンピュータ制御車両が適切に動作するための情報を提供することは、はるかに複雑です」とゴレウスキーは述べている。
ZF ProAIによるオンデマンド思考
オープンアーキテクチャを採用しているZF ProAIは拡張性があり、ハードウェアコンポーネント、コネクテッドセンサーセット、評価ソフトウェア、および機能モジュールは、自動車メーカーの目的や車の自動化レベルに合わせた最適化が可能だ。たとえば処理性能という点では、ほぼすべての仕様要件に合わせて構成することが可能。CESで展示するアプリケーションには、8コアCPUアーキテクチャで70億個のトランジスタを搭載したXavierチップが制御ユニットに使用されている。このチップは、30ワットの消費電力で最大毎秒30兆回の演算(TOPS)を実行できる優れた性能をもっている。ZF ProAIと同様、車載用としての最も厳しい基準に適合しており、AIやディープラーニングの条件にも対応する。
データのやり取り
ZFとパートナー企業が提供する包括的なセンサーセットは、環境を監視するうえで重要な役割を果たす。最新の車両には、カメラ、ライダー、およびレーダーセンサーが設置され、周囲360度にわたって完全に状況を把握し、情報は40ミリ秒ごとに更新される。膨大な量のデータ(カメラ1台で毎秒1ギガビットを生成)は、ProAIのコンピューティングユニットがリアルタイムで分析。「AIとディープラーニングアルゴリズムは主に、分析を加速させ、認識精度を高めるために使用されます。つまり膨大な量のデータから、道路を横断しようとしている歩行者など、交通状況において繰り返し発生するパターンを認識します」とゴレウスキーは語る。その後、車両が取りうる反応に関する情報が取得されると、加減速の計算や走行方向の決定に使用され、ソフトウェアに確実に保存される。
フリードリヒスハーフェンでの走行を仮想体験するラスベガスの展示車両
CESの展示ブースでは、仮想テストドライブの体験が可能。ドイツ、フリードリヒスハーフェンにある本社と研究開発センター間においてライブでテストドライブを実施し、収集したセンサーデータをラスベガス会場の展示車両に入力する。CES会場の車両は、あたかもドイツで実際に走行しているかのようにリアルタイムでデータを解析する。展示ブースで見られる、ステアリングやブレーキ、加速といったアクションは、CES会場であるラスベガスから9,200キロ離れたドイツでも正確に対応している。