ダイハツ工業株式会社が販売する衝突回避支援システム「スマートアシスト」搭載車両の累計販売台数が2017年11月末時点で150万台を達成した。スマートアシスト、スマートアシストⅡ、スマートアシストⅢの合計(OEM車両を除く。ダイハツ調べ)。
先進安全装備、花盛りですね。当初は「高いクルマにしかつかないんだろう」と思っていたのですがあれよあれよといううちに急速普及、本稿でご紹介するように軽自動車にももはや標準搭載といってもいいくらいに装着されているのが現況です。
これは一重に自動車メーカーおよびサプライヤーの英断によるもの。衝突回避/軽減システムは一台でも多くのクルマに載っていることが肝要です。「搭載しなければ」と判断された関係各社に心から感服する次第です。
(以下、ダイハツのプレスリリースから)
「スマートアシスト」は、2012年12月にマイナーチェンジして発売した「ムーヴ」で初搭載。軽自動車で初めて衝突回避支援ブレーキなどの先進デバイスをお求めやすい価格で採用した。2015年4月には、従来のレーザーレーダーに加え、単眼カメラを搭載した「スマートアシストⅡ」へ進化。さらに2016年11月には、世界最小(2017年11月30日時点。ダイハツ調べ)の小型ステレオカメラを搭載し、衝突回避支援ブレーキ機能が歩行者にも対応する「スマートアシストⅢ」へと進化した。
現在は、軽自動車9車種、小型乗用車2車種、計11車種(ブーン、トールはスマートアシストⅡ、それ以外はスマートアシストⅢを搭載)にスマートアシストを搭載し、今後も乗用車のみならず、商用車へも拡大させていく。現在のスマートアシスト搭載車両での搭載比率は約8~9割となっており、その機能とお求めやすい価格でお客様から好評を得ている。
また、ダイハツは全国各地でスマートアシストの体感試乗などを行う「みんなの安全・安心プロジェクト」を販売会社と一体となりながら実施しており、今後もより多くのお客様に安全・安心をお届けすべく、スマートアシストの積極的な普及促進に取り組んでいく。
(以上)
初代スマートアシスト
さて、ダイハツは先述のとおり先進安全装備を「スマートアシスト」と銘打ち、2012年のムーヴへの初搭載から5年で150万台を数えるに至りました。すばらしい。これからもジャンジャン載せていってください。
その初代「スマートアシスト」はレーザレーダを用いるシステムでした。パルス状の赤外線を前方に照射し、反射して返ってくるまでの時間で測距する構造です。デンソーのデバイスです。
レーザレーダは赤外線を用いることから、電波反射率の低い物体でも検出が可能なところがメリット。空間分解能が高い特長もありまして、障害物間のセーフゾーンを見つけるなんて芸当も可能です。何よりのメリットは低コストでコンパクトなこと。いっぽう、長距離検知が苦手という面もあります。
スマートアシストII
スマートアシストIIはカメラセンサを追加装備しました。単眼式カメラはレーザレーダに比べて、検出したものの細かい認識能力に長けているのが特徴です。
標識を認識 → ドライバーへ報知
歩行者を検知 → ドライバーへ警告
白線を認識 → 車線逸脱防止として、操舵制御も可
文字どおり「見ている」わけで、いろいろなものを判断できてその後の操作展開につなげやすい。いっぽうでこれまた「見ている」ことの裏返しで、悪天や夜間、逆光など「見えないところは見えない」という当たり前の状況にも陥ります。われわれの目と同じですね。
とはいえ、測距はレーザレーダ、前方物体認識はカメラセンサとお互いが補完しあうことで、さらに高機能の先進安全機能を実現しています。
スマートアシストIII
スマートアシストIIIは複眼式カメラを備えています。ふたつの眼ということは、測距が可能になったということ。これまた、われわれの目を考えれば理解できますね。
デバイスはまたもやデンソー製。この複眼式カメラセンサは世界最小でして、具体的には基線長が80mmしかないのです。基線長ってなんだと言えば、ふたつのカメラの中心間距離。容易に想像できるように、測距能力を高めたければ基線長を長くとればいいのは自明の理で、しかしそうすると躯体が大きくなってしまいます。寸法に制限のある軽自動車にはよろしくない。そこで、「高精度なレンズ歪み補正とステレオマッチング技術の組み合わせにより、求められる測定距離を保ちつつカメラ幅を半減するとともに、センサーを制御するECUを一体化することで、更なる搭載性の向上を実現(デンソーリリースから)」したのです。これによりレーザレーダは廃止、高機能化と低コスト化を両立させました。
高機能化の具体例が歩行者ブレーキ。スマートアシストIIでは歩行者検知→警報までだった機能を、歩行者検知→自動ブレーキの機能まで提供しています。また、測距能力が高まったことで、システム対応速度が広がっているのもうれしいですね。
これらの装備が近い将来に自律運転のキーデバイスになるのはご想像のとおり。もちろん、ここに挙げた装置のほかにもいろいろな種類があり、それぞれが長短所を備えています。課題になるのは法整備か、社会の容認か。安全な交通環境を提供できるなら、一日も早い実現を望みたいものです。